キーエンス(6861)の株価はどこまで上がる?|営業利益率50%、自己資本比率90%オーバーの謎に包まれた会社

キーエンス(6861)といえば超高給ということで有名です。株価もうなぎのぼりで時価総額も2019年現在、ついに日本企業のTOP5入りを果たしています。一方で企業CMなどもほとんどなく、一体何をしている会社なんだろうと思われている方も多いのではないでしょうか。今日はそんなキーエンスの株価や業績など、投資対象としてみていきたいと思います。

「30代で家が建ち、40代で墓が立つ」というフレーズを耳にしたことがないでしょうか。

キーエンスに勤める人を昔誰かがこう表現したものです。

このフレーズから、超高給で超激務、というイメージがある人も多いでしょう。

一方でほとんどCMもなければメディアへの露出も極端に少ない会社で、どこか謎めいた企業という印象を僕は持っていました。

そんなキーエンスですが、株価は一単元100株あたり約700万と、日本で一番高い株としても有名です。

同社はTOPIX CORE30を構成する銘柄であり、日々の出来高も多いのですが、なぜか株価の掲示板などでもあまり話題に上がることが少ない印象があるのは僕たち個人投資家が扱うにはあまりに高額だからかもしれません。

僕も到底同社の株を買うことはできませんが、興味が湧いたので投資対象としていろいろ調べてみた内容を今日はお伝えします。

事業内容

同社HPより引用

本社は大阪高槻にあります。上の写真のとおり特徴的な形の本社ビルが象徴となっています。

キーエンスは、「ファクトリーオートメーション(FA)の総合メーカ」です(同社HPより)。

FAは工場の自動化などを推進する機械類で、ロボットアームのようなものを想像されるかもしれませんが、僕が同社のHPを見た感じだと主力は製造業の最終工程に使われる品質確認用のセンサなど、計測器類です。

同社HPより

この他にもバーコードリーダなど、センサ技術を核とした製品展開となっています。

これらセンサ製品の開発と販売を行うのがキーエンスの事業の根幹です。

これだけだと普通のFAメーカにしか見えませんが、同社がすごいのはあらゆる製造業25万社を顧客に持っているという点と、海外45カ国に200拠点を展開するグローバルな企業であることです。

有名なフォーブス誌の「世界でもっとも革新的な企業TOP100」に8年連続でランクインしています。

同社HPより

キーエンスの業績のポイント

キーエンスの決算などは後ろにまとめますが、これだけ株価が上がっているポイントを先にお伝えします。

過去25年の平均成長率が10%以上

同社HPより引用

キーエンスは1974年創業と日本の会社としては若い方ですが、それでも年率平均10%以上の成長を続けているメーカーを僕は知りません。

もしかするとソフトバンクやヤフーなどがそれ以上の成長をしているかもしれませんが、業態が全く違います。

物を作って売るというメーカーがこれだけの成長を維持しているのはとんでもないことです。

1.1の25乗で計算すると、この25年で10倍以上の規模になった会社、ということです。

営業利益率50%以上

同社HPより引用

営業利益率も50%を超えており、これまたメーカーでは考えられない数字です。

製造業はどうしても原価比率が高くなりますので、優良企業でも利益率は低くなりがちです。

これだけ業績を拡大し続けているということは新規顧客をどんどん開拓しているはずですが、このご時世にありながら、安値取引きによる拡大ではないということです。

それだけ付加価値の高いサービスを提供しているということが分かります。

さらに同社は徹底した合理主義であり、無駄を極限まで削ぎ落とすことを重視しています。

株価推移

過去10年の株価推移をマネックスより引用します。

株価はこの10年上がり続け、2019年現在、時価総額はとうとう日本のTOP5に入りました。

グラフのとおり、10年前に同社の株を買っていたら、100万円が700百万円に化けていたということです。

売上高などはもっと上の会社がありますが、上のとおり業績がずっと好調なため、株価も上がり続けています。

この理由を同社の決算資料等から分析していきたいと思います。

決算、ファンダメタルズの確認

昨年度の決算資料をもとにファンダメンタルズをまとめてみました。

2018/3期 単位
 売上高 526,847 百万円
 営業利益 292,890 百万円
 ROE 16.4
 1株利益 1736
 配当利回り 0.15
 PER 37.0
 自己資本比率 92.9

IR資料はとてもシンプルで、ここにも同社の合理化主義を感じました。

とんでもない利益率と自己資本比率

まず上の表で目に付くのは営業利益と自己資本比率です。

こんな数字僕が今まで調べた会社で見たことありません。

メーカーの営業利益率は一般的には10%もあれば優秀と言われる中、驚異の50%超えです。

また、自己資本比率は40%が安定した企業の目安ですが、ここも90%とすさまじいですね。

圧倒的な営業利益によって積み上がった純資産、もう倒産なんかあり得ないって感じですね。

割安さはない

株価の割安性を示すPERは30倍を超えています

僕は割安株好きなので、このPERを割と重視しています。

株価を一株あたり利益(EPS)で割って算出されるこの数字は、一般的な日本企業であれば15倍前後と言われています。

まぁこれだけ株価が上がっていたら割安でないのは当たり前ですし、その成長性が市場に認められていると見ることもできます。

配当は超少ない

配当金は100円です。

700万投資して、1年間に1万円の配当金しかでません。

しっかり利益が出ている会社の配当利回りは2〜3%が多い中、同社の配当利回りは0.15%と、これまた見たことない数字です。

近年は企業は株主のものという意識が高まりつつあり、株主還元のために配当を増やす企業が多いですが、同社はそんなの関係ねぇって感じですね。

同社の自己資本のほとんどは利益剰余金、すなわち今まで自分で稼いだお金ですので、極端に言えば株価が暴落したとしても、同社は痛くも痒くもないのです

こういうところからも会社の強気な姿勢や合理主義なところが見えるように思います。

キーエンスはなぜ強いのか


この記事を書くにあたり、同社のIR資料などを読み漁ったり、転職者の書いたブログなどを見ました。

これらを参考に、分野は違いますが同じくメーカーで働く僕なりに分析してみたことをお伝えします。

ただし、以下はあくまで僕の主観、予想であることを最初に断っておきます。

圧倒的な営業力

同社の社員のほとんどは営業マンです。

取引先25万社に対し営業マンの方が圧倒的に少ないので、一人で複数の案件を担当するのが当たり前ということですね。

メーカーですので、営業マンといえど自社の商品の技術的なセールスポイントや他社製品との違いなどを理解する必要があります。

僕の勤める会社の営業マンはあまり技術に興味がないのか、人柄や気遣い、時には接待など、ウェットな感じで仕事を取ってくるタイプができる営業マンの仕事のやり方だったりします。

技術的な説明はエンジニアにお任せという感じで、正直客前での製品仕様の調整などの場では役に立ちません。

話がそれましたがメーカーにはこういう側面もあります。技術を語れる営業は希少です。

これに対しキーエンスは接待も禁止ですし、営業マン自身が技術も理解し、客先と渡り合う力が求められます。

客先も工場など、エンジニアが大半でしょうから、半端な知識では信頼を得ることはできません。

このように高い能力を有した精鋭部隊が同社の成長を支えています。

徹底した業務管理

スケジュールを分刻みで報告する義務があるそうです。結構いろんなところに書かれてたので本当なのでしょう。

ただ、おそらくこの業務管理は、管理という意味合い以上に、業務効率の向上のためのPDCAサイクルを回す目的と理解すべきでしょう。

成功事例をマニュアル化し、他の社員にフィードバックする目的もあるとのことです。

徹底的な合理主義をモットーとする同社では、日々業務の改善を求められるということで、相当意識が高い人でなければとてもついていけないと思います。

また、業務時間中の喫煙も不可、職場の飲み会も禁止などといった情報もありました。

どこまでが本当かは分かりませんが、僕にはとても耐えられそうにありません。

付加価値の追求


僕もエンジニアの端くれですので、技術のコモディティ化が進む現代において、センサの性能そのもので同社が圧倒的な技術力を保有しているのではないことは予想がつきます。

同社のHPには「「超」付加価値を、世界に」というキャッチフレーズが使われるなど、「付加価値」を前面に出していました。

同社の商品は常に世界初、業界初にこだわっています。

メーカーというと世界最高スペックとかを想像されるかもしれませんが、上のとおり、これの意味は高性能なセンサをばんばん開発するということではないと予想します。

付加価値とは、課題解決のためのプラスアルファのアイデア、ということでしょう。

これは想像力が求められるということであり、課題解決型の提案ができる人材であることが必要ということです。

ただ商品を売って歩く営業ではなく、日々客先とともに考え続ける、それを苦と思わないような人にしか勤まりませんね。

優秀な人材しかいない


ここは表現を悩みました。

圧倒的な高給取りであるキーエンス社員は、それ以上の価値が求められます。

話が一瞬横道にそれますが、企業の人員構成は、2.6.2の法則が成り立つと言われているそうです。

大企業だろうと中小企業だろうと、2割の優秀な社員、6割の並の社員、2割の使えない社員という構成になるという説です。

これにはそこそこ大企業に勤める僕も、なんとなくそんな感じかな、と思うところです。

ただ、そんな比率で平均年収2,000万なんて出せるはずがありません

徹底した管理やマニュアル化等で、並の6割を上の2割に引き上げることもしているでしょうが、それで誰もが一流になれるなんて甘いものではありません。

仕事は本当に向き不向きがありますし、生まれ持った絶対的な能力、センスといったものもあります。

がんばっていようとも、伸びない社員、使えない社員に居場所を与えるような会社ではないだろうと思います。

元社員のつぶやきなども見たりしましたが、売れない営業マンは入社数年でクビ、ということもありえるようです。

労働組合に守ってもらおうなんて考えは通用しないでしょう。

逆にぴったりハマれば無敵のサラリーマンですね。

キーエンスはブラック企業なのか

最後にこれも度々話題になりますが、キーエンスはブラック企業なのかということについて少し触れたいと思います。

僕はとてもホワイトな企業だと思います。

激務のためブラック企業というとイメージがあるかもしれませんが、働き方改革により残業規制も厳しくなっています。

ただ、今日この記事のためいろいろ調べた印象として、キーエンスに関してはホワイトとかブラックを論じる会社ではないように感じています。

一般的な大企業のように、なんとなく決められた定時内がんばれば仮に成果が出なくてもOKなんて生易しい職場はなさそうですので、残業が少ないからホワイトとか激務だからブラックという観点は当てはまりません。

逆に決められた時間内に、高額年収に見合うアウトプットを出さなければクビになるかもしれない、このプレッシャーは半端ないだろうなとも思います。

まとめ

今日は株価が絶好調のキーエンス(6861)について、決算資料の確認や業績などを調べたことをお伝えしました。

過去に2015年〜2018年における日米企業の時価総額ランキングの変化から見えたことで調べたとおり、この30年間の日本で最も成長した企業だと思います。

また、同社の超合理主義は外国人投資家などに好まれそうですね。

700万円近い株なんか買えるわけもありませんが、僕が億り人なら持ってみたい銘柄と思いました。

また、後半だいぶ話がそれて僕の興味本意の会社分析となりましたが、同社に就職を目指されている方は、相当な覚悟を持った方が良さそうです。

ただ単に給料が高いからエントリーするとかはやめた方がよいというのが社会人の先輩としてのアドバイスです。