東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンは日本株型の投資信託です。組み入れ銘柄は中小型株が主となっており、販売元は東京海上アセットマネジメントです。このファンドが2018年のファンドオブザイヤー最優秀賞を受賞したということで、今日はそのパフォーマンスなどについて、こちらも評判の良いひふみ投信と比べてみたいと思います。
ファンドオブザイヤーとは、投資信託の評価機関のモーニングスターが優れた運用実績を持つファンドを選定したものです。
投資対象別に6部門で最優秀ファンドと優秀ファンドが選ばれるのですが、日本株部門の最優秀ファンド賞を受賞したのが、この投資信託です。
ようは、2018年通じて最もリターンが良かった、ということです。
日本の中小型株を対象とした投資信託といえば、ひふみ投信、が有名ですので、パフォーマンスや手数料などを比較してみた内容をお伝えします。
目次
ファンドの特徴
まず最初に東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン(以下、オーナーズ)の特徴を同ファンドの目論見書などから簡単に整理します。
投資対象はオーナー企業であること
オーナーズの投資対象は大前提としてオーナー企業であることです。
オーナー企業とは、経営者が実質的な主要株主である企業を指し、有名なオーナー企業でいえば故・松下幸之助が創業したパナソニックやトヨタなどがあげられます。
オーナー企業は意思決定が経営に反映されるスピードが早く、海外においても成功事例が多いとのことです。
創業者一族のゴタゴタに翻弄された大塚家具とかの例もあるので、一概に当てはまるわけではありませんが、多くの実績を集計した結果がそのようになっています。
僕のこの投資信託に対する理解は、オーナー企業というテーマ株の集合体、ですね。
中小型株が投資対象
オーナー企業にもいろいろありますが、同ファンドは中小型株を中心としています。
大型株は個別の業績に関係なく、経済情勢や社会情勢などの影響を強く受けますが、中小型株は比較的素直に業績が株価に反映されるためです。
経営者との直接面談による銘柄選定
同ファンドはファンドマネージャーによる投資対象の選定のため、実際に経営者と面談をした上で企業を評価しています。
年間の訪問件数は約5,000件とのことで、やはりこの辺が我々個人投資家と違うところです。
アクティブファンドならではの企業選定、目利きをしてくれているということで、この辺りが手数料の価値になります。
インデックス系のファンドはTOPIX等の株価指数をベンチマークとしており、それを構成する銘柄を買い、たまにバランスを見直すという運用が基本で、手間がかからない分手数料が安いです。
徹底したリスク管理
同ファンドはリスク管理も徹底しています。
例えば株価が急騰したり割高となったものはしっかり売って利益を確定し、優良な銘柄の株価が下がって割安になれば買い増すなど、その時々の判断で株を売買しています。
これは多くのアクティブファンドがやっていますが、実際には上手くいってなかったりするのが大半なのが実情です。
多くのアクティブファンドがインデックスファンドに劣後するといわれる中、オーナーズの実績は素直にすごいと思います。
パフォーマンスの比較
それではここからはオーナーズとひふみ投信のリターンを比較していきます。
年間収益率
下図はそれぞれの実績報告書からの引用となります。
・オーナーズ![]() ![]() ![]() |
・ひふみ投信![]() ![]() ![]() |
この図から、ここ数年のパフォーマンスはオーナーズがひふみ投信を上回っていることがわかります。
2018年は日経平均もかなり下げた中、プラスをキープできていることがすごいと思います。
僕は今年は投資(株)で大損しましたにも書いたとおり相当なマイナスとなりました。
基準価格の推移
上のパフォーマンスと同じことですが、過去3年の基準価格の推移をマネックスより引用します。両者とも分配金再投資の場合のものです。
・オーナーズ
・ひふみ投信
両者とも2017年までは好調をキープしていましたが、2018年は明暗がはっきりと分かれています。
純資産の比較
続いて純資産を比較してみます。
これは運用する金額の大きさの差を示しています。
オーナーズ | ひふみ投信 | |
純資産 | 31,353百万 | 601,689百万 |
オーナーズが300億くらいなのに対し、ひふみ投信は6,000億と20倍くらいも違うのですね。
これは後の考察にも繋がりますが、ひふみ投信はその人気から規模が大きくなりすぎているのかもしれません。
規模が大きいと分散が効く反面、どこかに集中投資するわけにいかなくなります。
この額が小型株に向かえばもはや株価操作となってしまうからです。
組み入れ銘柄の比率
両者の上位10銘柄を整理しました。
・オーナーズ
銘柄 | 業種 | 比率 | |
1 | ライドオンエクスプレスホールディングス | サービス | 8.57% |
2 | アダストリア | 小売 | 8.20% |
3 | HEROZ | 情報・通信 | 8.05% |
4 | シノケングループ | 不動産 | 7.65% |
5 | 楽天 | サービス | 7.36% |
6 | デザインワン・ジャパン | サービス | 7.24% |
7 | ソースネクスト | 情報・通信 | 7.23% |
8 | MCJ | 電気機器 | 7.13% |
9 | ウェルビー | サービス | 7.11% |
10 | ファイバーゲート | 情報・通信 | 7.11% |
・ひふみ投信
銘柄 | 業種 | 比率 | |
1 | 協和エクシオ | 建設業 | 2.30% |
2 | 光通信 | 情報・通信業 | 2.10% |
3 | 東京センチュリー | その他金融業 | 1.90% |
4 | ネットワンシステムズ | 情報・通信業 | 1.90% |
5 | リクルートホールディングス | サービス業 | 1.90% |
6 | OLLIE’S BARGAIN OUTLET HOLDINGS | その他海外株 | 1.80% |
7 | アンリツ | 電気機器 | 1.80% |
8 | ガンホー・オンライン・エンターテイメント | 情報・通信業 | 1.70% |
9 | 共立メンテナンス | サービス業 | 1.70% |
10 | ショーボンドホールディングス | 建設業 | 1.70% |
たしかに両者とも上位は大型株をほとんど組み込んでいません。
オーナーズは1銘柄あたりの割合が大きく、上位に組み入れられた10銘柄で全体の75%を占めています。
楽天以外はあまり聞いたことがないですね。中小型株で構成されているのが分かります。
一方のひふみは上位10銘柄は全体の18%で、投資先は200企業近くあります。
実績報告書に記載されていたリストをひととおり眺めてみたところ、確かに中小型株が多いのですが、これだけ分散してしまうともはや中小型株のインデックスファンドじゃないか、という印象を受けました。
上のとおり運用額が大きくなりすぎたこともあるのでしょう。
さらにソースは省略しますが、VISAやAMAZONなどの米国株も組み入れていて、バランスファンド化しつつあるように思います。
僕の印象ですが、今のオーナーズが昔のひふみ投信のイメージに近いです。
手数料
続いて手数料の比較です。両者ともSBI証券や楽天証券をはじめほとんどの証券会社で購入可能です。
オーナーズ | ひふみプラス | |
申し込み手数料 | 2.16% | なし |
信託手数料 | 1.5552% | 1.0584% |
解約料 | なし | なし |
やはりアクティブファンドは手数料が高いですね。特に購入手数料が目立ちます。
100万投資したら、成果が良かろうが悪かろうが、3万は持って行かれます。
インデックス型のeMAXISシリーズなどはノーロードで、信託報酬も0.2%くらいですので、結果を出し続けなければ評価は一気に下がります。
考察
ここからはいろいろ調べてみた僕の感想や考察です。
実績は確かに素晴らしい
アクティブファンドを敬遠する投資家は多く、実は僕もそっち派なのですが、同ファンドの実績はそれらの意見を黙らせるに十分なパフォーマンスを上げているのは事実です。
過去5年にわたりプラスですし、2016年度もファンドオブザイヤーの優秀賞を受賞しており、ファンドマネージャーの手腕が優れているのは疑いようもありません。
組み入れ銘柄がたまたま当たっただけという見方
この表現は悪意があるように思われるかもしれませんが、そういうことではありません。
例えば組み入れ1位のライドオンの株価をマネックスより引用します。
結果論ですが、こういう波をしっかり捉えた売買に成功したのでしょう。
逆にこの銘柄の値動きが逆だったらどうなっていたか、そういうリスクもあるファンドだということです。
もちろんリスク回避をしていますが、上で書いたとおり上位10銘柄の比率が高いですので、これらの値動きが全体のパフォーマンスに大きく影響を与えます。
ひふみは運用額が大きすぎる
ひふみ投信はいつの間にか運用額がとんでもない額になっていました。
これだけの額となると、中小型株だけ買うわけにもいかず、良くも悪くも、分散されてしまい、結果TOPIXやマザーズといった市場全体との連動性が高くなります。
2018年の実績が示しています。
多くの新規のアクティブファンドがいろんなテーマで絞った投資をする中、その年の当たりのファンド、にはパフォーマンスで勝つことは難しいですね。
僕もひふみプラスを少額もっていて売るつもりはまだありませんが、今から買う気にはなれなくなりました。
実は僕にとってこれが今日いろいろ調べて一番の気付きです。
モーニングスターのファンド検索ではおすすめに上がってこない
ファンドオブザイヤーを選定するモーニングスターですが、公式サイトのおすすめのファンド検索ではこれらアクティブ投信が出てくることはありません。
年間のパフォーマンスは認めているものの、長期の資産運用という観点では手数料が安いものが優位と見ているということです。
関連記事の投資信託選びはモーニングスターのかんたんファンド検索がおすすめも興味があれば合わせて読んでみてください。
まとめ
今日は2018年のファンドオブザイヤー最優秀賞を受賞したことで注目が集まっている東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンという投資信託について僕なりに調べてみたことをお伝えしました。
評判が良く人気が急上昇しているのも頷けます。実績が伴っているからです。
特に日本株式市場全体として沈没した2018年をプラスで終えたというのは大きいです。
特徴としては、オーナー企業かつ中小企業中心というテーマ株、を対象とした投資信託であるということです。このテーマに賛同されるなら、購入されるのも良いでしょう。
ただ、やっぱり手数料が気になります。
情勢に応じて積極的な売買を行うアクティブファンドはそれ相応の手間をかけているため、総じて手数料が高くなってしまうのは仕方がないのですが、やっぱりノーロードかつ信託報酬1%以下が望ましいです。