ダイヘンの株価が2018年8月2日の決算発表を受け前日比-16.6%安の591円と急落し、年初来安値を更新しました。同社は日本の重電8社にも数えられる日本のメーカーで、自動車部品などの生産に使われるアーク溶接ロボットは世界シェアも高く、ロボット関連メーカーとして注目されていました。
僕はロボット関連銘柄として同社の株を保有していましたが、今後も継続保有すべきかどうか考えるため、株価急落の背景を決算資料から確認していきたいと思います。
ダイヘンとは
ダイヘンの創立は1919年と老舗のメーカーです。
変圧器などの電力機器を手がけ、近年は産業用のFAロボットでも存在感を示しています。
同社の事業には3つの柱があり、それぞれ「電力機器」、「溶接メカトロ」、「半導体関連機器」です。
2017年度の売上げは約1,500億円、同業大手との比較としてFANUC(約7,000億円)や安川電機(約5,000億円)となります。
ダイヘンの事業状況
下図は昨年度の同社IR資料の抜粋ですが、企業の設備投資増強を背景に売上げ、利益ともに拡大を続け、2017年度は過去最大の売上高、利益となっています。
また、海外売上比率が高く、特に溶接メカトロ事業に含まれるFAロボットについては売上げのほとんどが海外です。全世界的に製造業の自動化、FAへの設備投資が旺盛であり、特に新興国の成長を取り込んでいくことが期待されます。
そんなダイヘンの株価が2018年の第一四半期を受けて急落しました。
株価急落の原因は|材料費、管理費の高騰による経常利益の縮小
四半期決算を確認していきます。財務は特に問題がなかったため省略します。純資産で固定資産をまかなえている、優良な経営状態です。
財務に問題がないとなれば経営の成績に問題があったということになります。
決算発表資料の損益計算書から、特に重要と思われる部分を抜粋したのが下の表です。単位は百万円です。
第一四半期 | 前年度 | 2018年度 |
売上高 | 31,517 | 33,962 |
売上原価 | 21,148 | 23,570 |
管理費等 | 8,610 | 8,871 |
営業利益 | 1,757 | 1,521 |
経常利益 | 1,949 | 1,728 |
売上げ拡大も経常利益は減
上の表のとおり、売上高は拡大していますが、経常利益は昨年度を下回っています。これが株価急落の直接的な原因と思われます。
単純な例でいうと、1,000円の売上で900円の原価・管理費ならば100円の利益がでます。
これがともに10%アップであれば1,100円の売上に990円の原価で利益が110円となります。
これが望ましい成長の形ですが、同社の状況は原価や管理費の上昇が売上げの拡大幅を上回ってしまっているということです。
通期業績見通しへの懸念
一方で同社は通期見通しは据え置きとしています。昨年度の実績と今年度通期見込みを整理した表を示します。
2017年実績 | 2018年予想 | |
売上高(百万) | 149,448 | 157,000 |
(同 前期比) | 10.81% | 5.05% |
経常利益(百万) | 10,244 | 10,500 |
(同 前期比) | 15.37% | 2.50% |
1株当たり純利益 | 54.41 | 278.81 |
PER | 16.21倍 | 12.72倍 |
ROE | 9.30% | |
自己資本比率 | 45.30% |
売上高、経常利益ともに拡大を見込んでいますが、特に経常利益の見込み達成に疑問符がついた、と市場が判断したのでしょう。
計画がもともと下振れの計画であればこれほど株価は反応しなかったと思います。
その他の要因の可能性|将来への懸念
同社の決算資料を見て気になる部分がありました。以下引用です。
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・半導体関連機器事業
3次元メモリーやDRAM向けの設備投資が堅調に推移いたしました結果、売上高は111億7千4百万円(前年同期 比33.1%増)となり、営業利益は17億5千2百万円(前年同期比4億9千6百万円増)となりました。なお、半導体 関連投資は調整局面にあり、受注高は75億3千7百万円(前年同期比27.6%減)となりました。
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稼ぎ頭の受注高減少
上で示した「電力機器」、「溶接メカトロ」、「半導体関連機器」の3つの柱の中で、実は一番利益率が良いのは「半導体関連機器」です。下図はマネックスから引用した同社の事業割合と利益率です。
右の図を見て分かるとおり、半導体関連事業の利益の伸び(緑の線)が顕著です。
この部分の受注高が減少したということは、同社の将来の経営成績に大きな影を落としているとみることができます。受注高は将来の売上高となるからです。
個人的にはこれも株価下落の大きな要因の一つだと考えています。
ロボット関連銘柄の株価状況
ダイヘンの株価推移を示します。僕は年初の急落後の800円くらいで割安となったと判断し、同社の株を購入しましたが、今回の下落で約20万くらいの含み損となりました。この半年で株価が半値くらいになっています。
ロボット関連銘柄と呼ばれる銘柄はほぼ全て共通で2018年に入ってこの半年間ズルズルと株価を下げています。
代表的な銘柄の過去1年間の株価推移を示します。
この他にもロボット関連株と呼ばれる銘柄のほとんどが年初来安値圏で推移しています。
今後の予想
今回の株価下落の直接的な要因は、材料費等の原価費の増加、人件費をはじめとした管理費の増加、とみることができます。
製造業全般にいえることですが、今年の四半期決算は去年に続き過去最大の売上高を更新する企業が多くある一方で、同社と同じく原価費、管理費により利益が思うように出せていない企業も多いです。
依然として設備投資は好調とされていますが、材料費や人件費の高騰は季節的な問題ではないため、以降の決算でも同様に利益縮小する企業が増える可能性があります。
2018年8月現在、多くのロボット関連銘柄が割安とされる株価となっていますが、将来の見通しが明るくなければ株価は割安のまま放置されることが多いですので(極端な例が銀行株)、積極的に拾いに行く状況ではないように考えます。
まとめ
今日はロボット関連株として僕が保有していたダイヘンについて、四半期決算の内容を確認し、株価急落の原因を分析するとともに、ロボット関連の市場の状況を見ていきました。
我ながら株は本当に損ばかりしていて、いい加減個別株は足を洗おうかと考えています。まぁタバコとギャンブルと同じできっと止められないのですが。。
・ロボット関連銘柄についての関連記事です。この時にはもう遅かったのです。
・同じくロボット関連銘柄の不二越でやらかしてます。