日本人の投資に対する意識の低さはNISA活用状況が示している|金融庁の報道発表資料を紐解いてみた

日本人は諸外国に比較して投資に消極的だというのはよく聞く話ですが、先日これに対して一番納得の行くデータに出会いました。金融庁が発表したNISA活用状況のデータです。今日はこのデータを使って日本人の投資意識を分析してみたいと思います。

日本人の投資嫌いを示す統計や意識調査、諸外国との比較などをよく目にしますが、自分の中で納得行く説明に出会ったことがありません。

そんな中、僕が一番腑に落ちたのは金融庁が平成30年4月27日に公表したNISA口座利用状況に関するデータです。

なお、本記事の挿入図は全て下記資料を引用したものです。
・金融庁公表資料
NISA・ジュニアNISA口座の利用状況に関する調査結果(確報値)の公表について

NISA口座を開設している人は日本人10人に1人

NISA口座はどこの証券会社でも開設できますが、普通の特定口座と違って複数の証券会社に複数のNISA口座を持つことはできません。

ですので、NISA口座の数というのは厳密にその利用者数を重複なく示しています

ご覧のとおり約1千万強の口座数であり、日本人約10人に1人が開設しているということになります。

また、60歳以上の方で全口座の半数以上を占めています。

ご存知のとおりNISA口座とは期間限定ではありますが、非課税で株式や投資信託等を保有することができる口座です。

NISA口座を開設せずとも株や投資信託を購入することは可能ですが、資産運用を中長期で考えるのであればNISA口座を持たないという選択肢はないはずです。

これは極論すれば10人に1人くらいしか資産運用を真剣に考えていないといえるでしょう。

NISA枠は年間120万であり、1世帯に1口座あれば十分ということも考えられますので、この数字が示す意識の実態はもう少し違うかもしれませんが、本記事では概況をとらえるためこの辺は大雑把に進めます。

一方で株式投資をしている人はNISA口座数以上にいると思います。これは僕と同じように売り買いをして利益を得ようという、株式市場を対象としたギャンブルをしている人です。

これも資産運用と定義すれば母数はもっと増えるでしょう。NISA口座は使い切りの枠ですので、細かく売買することを前提としている人にはほとんど意味がなく、開設しない人も多いと思います。

話がそれますが、株の短期売買や集中投資も、投資信託の長期保有も、投資という言葉で一括りに語られているところも投資が敬遠されている一因だと思います。

NISA口座保有者の半分以上が活用していない

以下のデータに一番衝撃を受けました。

図の下の補足にあるとおり、実に700万口座が1年間全く使われておらず、実質稼働しているのは400万口座です。

日本人30人に1人しか使っていないということです。

無使用の次に多いのが100万〜120万の、フルでNISA枠を使っている層です。

1年で120万円も投資に回せるのは富裕層とまでは言いませんが限られた人達だと思いますが、こういう人が200万口座(=200万人)います。

おそらくこれらの人は継続的にNISAを活用しますので、金融庁は口座を使っていない700万人の人達が安心して投資ができる環境を構築することに力を入れており、数千種類ある投資信託から積み立てNISA対象商品を選別しています。

金融庁が投資信託の良し悪しを判断するという、賛否両論ある大胆な試みですが、僕は良いと思います。
・つみたてNISA対象商品届出一覧(金融庁HPへのリンク)

使用用途はほとんど株式と投資信託

次に平成29年度のNISA口座の使用用途です。

国内株式と投資信託で9割以上を占めます。年代が上がるにつれて投資信託の割合が増えていて、若いうちはリターン重視で年をとるほど保守的な運用になるというこの傾向自体は健全かなと思います。

どんな投資信託が買われているのか内訳は分かりませんが、NISAで長期保有前提であればリスク分散のために、海外のアセットへの配分を重くする方が良いように思います。

・僕が投資信託を買うならこうするという関連記事です。

ちなみに僕はNISA枠を高配当な米国株とETFを中心にあてています。

この場合ETFの欄にカウントされているのでしょうか。自分が米国株投資に触れるようになり、かなり一般的になってきていると感じていましたが、まだやはり少数派ということを改めて感じました。

・米国株やETFを購入する手順についての関連記事です。

NISAの利用は全然進んでいない

次のデータはNISA制度が開始された平成26年度から平成29年度の4年間における買付額の総計です。

このデータは単体で見るのではなく、前に示した平成29年度単体の買付額と比較してみます。

するとほぼぴったり4倍であることに気付きます。

これが意味するところは、テレビで個人投資家(桐谷さんとか)が取り上げられたり、近年投資がかなり身近になってきているように感じられるようになってきているにも関わらず、実態として日本人の投資活動は全く拡大していない、ということです。

もしくは不動産等ほかの投資に流れているかですが、全体としては少ないでしょう。

日本人の貯金額に対してNISA口座の額は1%以下

最後に平成29年度末のNISA口座の総額です。買付の総額が前のとおり12兆強で、現在の総額が8兆円弱なので、1/3は売られていることになります。

このデータから分ることは、日本人の預金残高の合計が1000兆円と言われるのに対して、NISA口座の金融資産の比率は1%以下ということです。

もちろんNISA外の株式や投資信託もありますし、他の投資もあるので、投資市場全体として1%以下ということではありません。

ただ、普通に考えて、長期の資産運用で株や投資信託という選択肢を取るのであれば非課税という恩恵のあるNISAから使うべきだと思いますし、そのために国が優遇制度を作った訳ですから、この比率の低さはそのまま日本人の資産運用、投資というものへの抵抗感というか意識の低さを示しているように思いました。

まとめ

今日は金融庁のNISA活用に関するデータを読んで僕なりに感じたことを書きました。

僕はNISA枠は米国株とETFの購入を中心にあてており、こちらは中長期での保有を前提にしています。

特定口座の方では個別株の売買等もやっていますが、これは投資とギャンブルの中間のような考え方で運用しており、NISAは僕に残された理性のような意味合いもあります。