高配当ETFへの投資が人気を集めています。その中でも近年特に人気なのが「SPYD」です。このほか高配当米国株ETFといえばVYMとHDVが代表的ですが、これらの株価がコロナショックで急落しています。これは買い時なのかもと思い比較してみました。結論からいうと大差なし、個人的にはSPYDよりVYMかHDVの方がおすすめです。
SPYDをはじめ高配当ETFは米国株投資家を中心に人気の高い商品です。特にその安定して高い配当利回りから長期投資家に好まれています。
そんなSPYDの直近の株価(基準価格)推移です。
ざっくりですが、コロナショックで40ドルから20ドルへ急落、2020年6月現在30ドルまで回復しています。
これはもしかして買い時かと思い、今日はSPYDを中心に、同じく高配当米国株ETFとして人気の高いVYM、HDVを比較してみた結果をお伝えします。
結論は冒頭のとおり、正直どれ買っても大差ないけど、個人的にはVYMの方がおすすめかな、という感じです。
目次
SPYDの特徴
SPYDはステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが運用するETFブランド「SPDR(スパイダー)」シリーズの1つです。
このETFの特徴はすでに多くのブログなどで書かれていますので、さらっといきます。
・組入れ銘柄は高利回りの不動産、株式
・配当は年4回(3,6,9,12月)
S&P500に分散投資
S&P 500はアメリカの大企業500選というイメージで、日本でいうところの日経平均を構成する225社みたいな感じです。
個別株への投資は業績の悪化にともなう倒産や株価急落のようなリスクを伴いますが、ちょっとやそっとでは倒産しないであろう大企業に分散投資することで、リスクを回避しています。
そういう意味では「安定」が魅力の1つです。
組入れ銘柄は高利回りの不動産、株式
SPYDの組入れ銘柄はS&P 500の中でも特に配当利回りの高い企業を抽出して構成されています。
ちょっと極端な表現ですが、米国の大企業の中から高配当な銘柄の株を上から順に買った集合体、SPYDとはそういったものだと理解すれば投資初心者の方でもイメージがつくんじゃないかと思います。
VYM、HDVもコンセプトはほぼ同じですが、より利回りを重視したものがSPYDです。
配当は年4回
米国株は年4回の配当の会社が多く、SPYDも同じく年4回の配当が設定されています。
ちょうど現在の利回りが4%くらいですので、100万円投資していれば1年で4万円、3ヶ月に1度1万円の不労所得が得られるということです。
米国株といえど4%もの利回りがある会社は非常に少ないですので、キャピタルゲインよりもインカムゲインを重視する投資家が好むのも納得です。
SPYDとVYM、HDVの比較
それでは本題のSPYD、VYM、HDVを比較していきたいと思います。
まずは基本情報です。
SPYD | VYM | HDV | |
運用会社 | ステート・ストリート | バンガード | iシェアーズ |
組入れ銘柄数 | 64 | 393 | 75 |
設定年 | 2015年 | 2006年 | 2011年 |
経費率 | 0.07% | 0.06% | 0.08% |
筆頭セクター | 不動産 | ヘルスケア | エネルギー |
利回り※ | 3.91% | 2.54% | 3.19% |
※2020年6月現在 |
歴史はバンガード社のVYMが一番古く、構成銘柄もより分散がきいています。
年間経費はどこも0.1%未満とすばらしく、ここは差異はないといって良いでしょう。
利回りはSPYDがもっとも高い
直近の配当利回りはVYMが2.5%なのに対しSPYDがもっとも高く、4%近くもあります。
とても魅力的な水準ですね。
ただし、だからSPYDが良いという話ではなく、これはそういう銘柄を選んで構成しているのだから当たり前とみるべきです。
後述しますが今回のコロナショックでもっとも下落したのもSPYDということには注意が必要です。
パフォーマンスの比較
続いてパフォーマンスの比較です。
これはシンプルに過去5年の株価(基準額)の推移を見てみましょう。
以下のとおりどれもよく似た値動きです。VYMとHDVに至ってはコピーじゃないかという感じですね。
SPYDがコロナショックによる下落率が一番大きく、その後の回復もVYM、HDVに劣っています。
5年でみるとキャピタルはVYM≒HDV>SPYDという感じで、利回り混みなら互角というところでしょうか。
まぁ大差がない、ということに変わりはありません。
SPYD
VYM
HDV
組入れ銘柄の比較
続いてそれぞれの組入れ銘柄を見ていきたいと思います。
VYMとHDVの構成は似ている
VYMとHDVの現在の構成銘柄上位10社を並べてみました。
下の表のとおり10社中7社がかぶっています。そりゃ株価推移も似るよね、という感じです。
組入れ順位 | VYM | HDV |
1 | ジョンソン&ジョンソン | エクソンモービル |
2 | JPモルガン | AT&T |
3 | P&G | シェブロン |
4 | インテル | ジョンソン&ジョンソン |
5 | ベライゾン | ベライゾン |
6 | AT&T | ファイザー |
7 | ファイザー | シスコシステムズ |
8 | メルク | メルク |
9 | エクソンモービル | コカ・コーラ |
10 | ペプシコ | ペプシコ |
どこも聞いたことのある超有名企業で、分かりやすくていいですね。
セクター比率は下図のとおりかなり違うように見えるのですが、過去の株価推移をみる限り、この2つはどっち買っても優位な差はないでしょう。
・VYMセクター比率(バンガード公式HPより引用)
・HDVセクター比率(iシェアーズ公式HPより引用)
SPYDの構成は少し特殊
SPYDについても同じく上位10銘柄を整理してみました。
組入れ順位 | SPYD | セクター |
1 | ギリアド・サイエンシズ | 医薬 |
2 | ゼネラル・ミルズ | 食品・飲料 |
3 | クラウンキャッスル | 不動産 |
4 | アッヴィ | 医薬 |
5 | デジタル・リアルティ | 不動産 |
6 | カーディナルヘルス | ヘルスケア機器 |
7 | クラフト・ハインツ | 食品・飲料 |
8 | ドミニオン・エナジー | 公共事業 |
9 | アムコール | 食品・飲料 |
10 | ブロードコム | 半導体 |
SPYDは1銘柄多くても2%ちょっとの比率で、年2回見直しされるので、次見たらコロッと顔ぶれが変わっていると思いますが、正直日本人にはあまり馴染みがない会社が多いですね。
ひとおり米国株四季報で確認してみましたが、ギリアド・サイエンシズはタミフル、ゼネラル・ミルズはハーゲンダッツなどを手がけているなど、業界で強みを持つ会社が選ばれている印象です。
当然ながらどこも配当利回りが高い企業です。
SPYDの現在のポートフォリオは下図のとおりです。
・SPYDポートフォリオ
VYMやHDVが取り入れていない不動産(REIT)が占める割合が1番大きいのが特徴ですね。
個人的にはVYMかHDVの方がおすすめ
ここまでSPYDとVYM、HDVを比較してみましたが、パフォーマンスはほぼ同じと僕は理解しました。
値動き的はVYM、HDVが優位、配当利回りはSPYDが優位、でトータルでみたら大差ない、という結論です。
いずれも安定した米国の大企業の中から配当利回りの高い企業を抽出するという考え方で、安定した配当収入を目的とするディフェンシブな投資によいETFだと思います。
ただ、個人的には正直どれ買っても大差がないと思いつつも、SPYDは馴染みのない会社が多いのと、僕があまり好きではない不動産・金融がポートフォリオの主軸であるという理由から、僕はVYMもしくはHDVをおすすめします。
ETFはそれ自体が安定した商品のように扱われたり、数字だけで比較されることが多いですが、株を買うということに変わりはないので、構成銘柄にも興味を持つことは大切だと思います。
VOOやVTI持ってるなら分散投資にはならないので注意
最後になりますが、注意点というか、分散投資の考え方について少し思うところがあるので補足します。
米国株ETFは高配当以外にも人気どころとしてVOOやVTIをご存知の方も多いと思います。
これらを持っている方が、資産の分散を目的に、高配当ETFを買おうか迷っているという意見を耳にすることがあります。
これ、意味ないですからね。
上のとおり、構成銘柄は違えど米国株を買うということに変わりはないため、今回のコロナショックのように下がる時は一緒に下がります。
もし資産の分散が目的ならたとえば債券系のBNDや、インフレリスクに強いGLDなど、資産クラスが異なるものを購入されることをおすすめします。
VOOもVTIもVYMもHDVもSPYDも全部、大きな意味ではアメリカ経済が発展することにベットしている、ということは理解しておいた方がよいでしょう。
まとめ
今日は高配当米国株ETFとして人気が高いSPYDを中心に、同じく高配当ETFのVYM、HDVを比較してみた内容をお伝えしました。
調べる前はVYM、HDVの真似かなと思っていたのですが、組入れ銘柄はだいぶ違いましたね。
最近とくに界隈で評判が良いらしいのでちょっと調べてみましたが、正直、そんなにもてはやすようなものかな?VYMでいいんじゃね?というのが僕の素直な感想です。
配当利回りが高いということは、財務に不安がある会社などが多いケースが多く、十分に分散されているとはいえ、今回のコロナショックのようにどこの株価も総崩れという状況になると、ETFといえど急落は避けられません。
高配当ETFは資産形成に有用な商品だと思いますが、購入する場合は時間分散して少しづつ買い足すのがおすすめです。