今日はタバコ関連銘柄として代表的な4社(MO/PM/BTI/JT)の株価や業績を投資対象として比較してみた内容をお伝えします。ここ数年各社軒並み株価が急落しており、いくらなんでも売られ過ぎだと感じたからです。もしかして買い時かと思い分析してみた結果、結論として僕はBTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)に投資しました。
僕は今までタバコ関連銘柄には将来性が感じられないため興味がありませんでした。
先進国を中心とした健康志向の高まりや若者のタバコ離れ、誰の目にも市場が縮小するのが明らかだからです。
投資は成長産業にするべきと言われています。
この考えは今も変わっていないのですが、株価の下落をうけタバコ関連銘柄各社の配当利回りがかなり高い水準になっていて、今のタイミングなら投資してもいいんじゃないかと考えました。
今日は世界のタバコ大手4社の株価や業績を比較分析した結果をお伝えします。
結論は冒頭のとおり、僕は2019年の夏頃からBTI(ブリティッシュアメリカンタバコ)に投資をはじめました。
タバコ大手4社を概観
まずはタバコ大手4社にある程度共通した特徴をすごくざっくりまとめると次のようになります。
・売上高は横ばいか微減傾向
・株価は下落傾向
・加熱式タバコ、電子タバコの拡大が今後の鍵
それぞれ個別に後述しますが、この特徴からも分かるとおり、タバコ関連株は株価の上昇によるキャピタルゲインを狙うのではなく、安定した配当を目的とするディフェンシブな銘柄群といえるでしょう。
ちなみに各社の主力製品はこちら。
PM | MO | BTI | JT | |
紙巻たばこ | マルボロ ラーク など |
ラッキーストライク ケント など |
セブンスター マイルドセブン など |
|
加熱式タバコ | アイコス | グロー | プルームテック |
アルトリア(MO)とフィリップモリス(PM)は元は同じ会社なので扱う製品はほぼ同じです。
アルトリアが米国内、フィリップモリスが米国外の販売を担当しています。
この4社を比較するにあたり、まずはそれぞれの会社の概要をお伝えしますが、個別銘柄の分析はすでに多くの方がされていますので、ここはざっくりいきます。
フィリップモリス【ティッカー:PM】
フィリップモリスは世界最大規模のタバコ製造・販売会社です。全世界でのシェアの約3割を占めると言われています。
上で触れたとおり、2008年にアルトリアグループの海外(米国以外)の販売部門が分社化されました。
世界売上1位のマルボロを有し、さらに全世界で先駆けて加熱式タバコのiQOSを販売し、シェアを拡大しています。
日本での加熱式タバコのシェアは iQOS > glo > ploom tech の順で、iQOSが圧倒的です。
アルトリアグループ【ティッカー:MO】
アルトリアグループはフィリップモリスの米国内の販売を行っています。
言わずもがな米国での販売は1位です。
また、後述しますがMOは50年連続増配という配当王企業でまさに優良米国株のお手本という感じの銘柄です。
ただ、アメリカ国内のみが市場というリスクが近年顕在化しているようです。
ご存知のとおりアメリカは世界一の 健康大国 & 訴訟大国 です。
たとえばiQOSの販売が認められたのもつい最近ですし、同社が出資している電子タバコのJUULが米食品医薬品局(FDA)により販売禁止措置を受けるニュースを目にされた方も多いと思います。
細部は後述しますが、これらの影響もあってか、2017年に70ドルを超えていた株価が2019年には一時40ドルまで下落しました。
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ【ティッカー:BTI】
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)は、英国の会社です。
略称はBATとされることが多いですが、ここではティッカーのBTIで統一します。
ラッキーストライクやケントなどを取り扱っていますが、日本ではgloの方が有名ですね。
2017年にアメリカ2位のレイノルズアメリカンを買収し子会社化しています。キャメルとか作ってる会社です。
これにより売上高はアルトリアを抜きました。
また、BTIも20年近い連続増配を記録しており、配当銘柄として人気です。
イギリスの会社ですが、ネット証券などで米国株と同じように購入できます。さらにイギリスADRは現地課税10%がないため、配当に対する税金は日本で課税される20%のみと、二重課税が無いことが特徴です。
そんなBTIも2018年に株価が大暴落しています。
ちなみに英国の会社なので米国会社四季報に載っておらず、PMやMOより若干マイナーな銘柄です。
日本たばこ産業(JT)【銘柄コード:2914】
JTはみなさんご存知ですよね。
「人の時を思う、JT」のキャッチフレーズでおなじみのタバコ会社です。
積極的なM&Aで規模を拡大しているJTは、現在業界では世界4位となりました。
10年前はほとんどなかった海外売上を伸ばし、現在は国内の2倍を海外で売り上げているグローバル企業に成長しています。
そんなJTもやはり高配当銘柄で、直近の利回りは6%を超えています。
日本の大企業でこれほどの利回りはあまり見たことがありません。
ちなみにJTの株の1/3は財務大臣が保有しているというのも普通の企業にはない特徴です。
各社の配当利回り、配当月の比較
さてここから各社を比較していくのですが、まずはじめに配当利回りを見ていきます。
僕が投資を決めたのも配当利回りが高かったためですが、やはり各社とも配当利回りはとても魅力的な水準です。
なお、数値は2020年1月の株価で計算しています。合わせて配当月と連続増配記録をみてみます。
PM | MO | BTI | JT | |
株価 | 87$ | 50$ | 45$ | 2,416円 |
利回り | 5.3% | 6.7% | 5.7% | 6.2% |
配当月 | 3,6,9,12 | 3,6,9,12 | 3,6,10,12 | 6,12 |
連続増配記録 | 9年 | 50年 | 19年 | 16年 |
利回りは各社5%オーバー(2020年1月現在)
ここ数年の株価下落もあり、各社なんと5%以上の配当利回りとなっています。
極端に言えば、減配されなければ、配当だけで、20年で投資元本を回収できる、ということです。
日本企業は3%もあれば高配当と呼ばれるなか、JTは6%です。
タバコ銘柄は連続増配
連続増配記録もすごいですね。
アルトリアの50年というのは全米国株中でも15位に位置します。
JTは減配なしも含めると、30年以上連続です。日本企業ではめずらしいですね。
ただ詳しくは書きませんが各社とも配当性向がかなり高い水準になっていますので、たばこ業界に逆風が多い中、このまま連続増配が続けられるかは微妙なところと見ています。
配当は年複数回
米国株の配当は年4回のところが多いです。
このため、配当権利落ち日の株価急落ということも少ないのがいいですね。
権利日などの正確な情報はこの記事のソースとして使っているmorningstarなどを参考にされるのが良いでしょう。
日本企業の配当は年1回が多いんですが、JTは年6月期と12月期の年2回です。
株価推移の比較
続いて各社の株価推移です。5年スパンのものと最長のものを載せています。
やはりここ近年特にですが、たばこ業界には逆風な事業環境であり、各社ここ数年で株価が軒並み下落しています。
フィリップモリス(PM)
フィリップモリスの株価は長期スパンでは横ばいに見えますが、5年スパンで見るとかなり下がっています。
今は上に行くのかまた下がるのか、微妙な状況ですね。
・5年スパン株価
・最長スパン株価
フィリップモリスは冒頭のとおり2008年にアルトリアから分社化していますので、その当時からの推移となります。
10年スパンでもヨコヨコという感じです。
アルトリア(MO)
アルトリアも同じくここ5年で見るとだいぶ下がっています。5年前に逆戻りという感じです。
一方で長期でみるとかなり上がっていて、調整の範囲内のようにも見えます。
・5年スパン株価
・最長スパン株価
ブリティッシュアメリカンタバコ(BTI)
BTIは2018年の1年間で株価が半額以下まで急落しました。
2019年は回復傾向で、僕も幸い含み益が出ています。
この4社の株価推移でもっとも僕好みの形だったというのもBTIに投資を決めた理由の1つです。
・5年スパン株価
・最長スパン株価
JT(2914)
JTの近年の株価推移は悲惨、というしかないですね。
投資家の怒りの声が聞こえてきそうです。
とはいえ、2016年から半値ですので、BTIの急転直下に比べれば緩やかな推移です。
・5年スパン株価
・最長スパン株価
う〜ん。どうでしょう。一見すると買い時のようにも見えます。
JTには興味がありますが、僕は様子見とします。
これから株価が上がれば縁がなかったということです。下がれば、真剣に考えます。
—2021年3月追記—
2020年度決算発表でJTが初の減配しました。
逆に買い時と思い、僕は投資することにしました。関連記事です。
売上高・利益の比較
各社の売上高と営業利益をまとめてみました。ソースはモーニングスターで2018年度決算の内容です。
厳密な数値が知りたい訳ではないので、1ドル100円として日本円に換算しています。
PMが一番大きく、JTも検討している、ように見えます。各社2兆円に近い売上規模です。
表にすると以下のようになります。利益率を%表示にしています。
PM | MO | BTI | JT | |
売上高(億円) | 29,630 | 19,630 | 24,490 | 22,160 |
売上総利益率 | 64% | 62% | 81% | 57% |
営業利益率 | 38% | 48% | 38% | 25% |
PER | 18.2倍 | 53.7倍 | 12.9倍 | 11.6倍 |
売上総利益率(Gross margin)は売上から製造原価を引いた利益率のことです。
かなり高い数値だったので書き加えました。
やはりタバコはほとんど原価はかからないようで、これは安定した利益やキャッシュフローに繋がります。
営業利益率はどこも高い
上の売上総利益から人件費などを差し引いたのが営業利益となる訳ですが、どこも優秀ですね。
JTは株価がボロボロだから業績もイマイチと思ったのですが、利益率はけっこう高いのですね。
やはりタバコ銘柄という将来の不透明感が株価に大きく影響を与えているようです。
株価は今の業績よりも将来の見通し、言い換えれば期待、を反映するということは、この数年で学びました。
BTIとJTは割安
業績の表の一番下にPERをのせています。これは割安性の指標とされるもので、BTIとJTが割安だとわかります。
PERは純利益から計算されるため、一過性の利益や損失が含まれるので、これだけを判断材料とするのは危険ですが、こういう水準にあるということは頭の片隅に置いておいた方がよいと思います。
僕がBTIを買った理由
冒頭のとおり、僕はBTIに投資をしています。
株価の未来なんて誰にも分かりませんが、それでも購入するにいたった理由をお伝えします。
配当利回りが高い
当たり前ですが、これが決め手です。
基本的に成長産業でないことが明白な業種に投資する理由はこれしかありません。
特にここ数年は株価の下落により利回りがとんでもない値になっていて、今後多少株価が下がっても長期保有を決め込みたいと思います。
将来性はないが利益はしっかり出している
これはBTIに限りませんが、各社とも業績は悪くない、というか、利益率とかすごくいいです。
PERで見ても割安ですし、今の水準は売られ過ぎとみました。
チャートの形がすごく好み
上で書いたことはどの企業にも当てはまることですが、僕がBTIを買った理由の1つはこの株価推移の形がもっとも好みであることです。
BTIは過去の推移も比較的なだらかな上昇傾向で、こういう株がドンッと下がった時に僕は買いたくなります。
まとめ
今日はタバコ大手4社の株価推移や業績を比較分析してみた内容をお伝えしました。
業界の将来性というところで直近の株価が下がっているのでしょうが、業績に対してここ数年の株価半額とかは売られ過ぎだと感じました。
僕はBTIを買ったのですが、しばらく持ち続けて良さそうだと判断します。
本来キャピタルゲインを狙う銘柄ではないと思いますが、ここは期待してもいいのではないでしょうか。
しかしネット証券のクリック1つで米国株や英国株まで買えてしまうなんてすごい時代ですね。