ALSOK(2331)は業界No.2の民間警備会社です。オリンピック選手などのアスリートを起用したCMでお馴染みですね。東京オリンピックを間近に控え、警備関連銘柄に注目が集まっています。今日はALSOKの株価や過去の業績を確認しつつ、今から株を買うべき銘柄か分析してみた内容をお伝えします。
ALSOK(綜合警備保障)は1965年、ちょうど東京オリンピックの1年後に設立された民間警備会社です。
まめ知識ですが、ALSOKとは「ALWAYS-SECURITY-OK」の略だそうです。
柔道の井上選手やレスリングの吉田選手など、オリンピック選手を起用したCMで皆さんお馴染みです。
業界No.1はセコム(9735)で、売上規模としては倍くらいの差がありますが、ALSOKは金融機関の警備に強みを持っています。たしかにATMの警備員は「綜合警備保障」バッジをされているような記憶があります。
警備業界は安全・安心ニーズを背景に成長を続けており、さらには東京オリンピックを控え、これからも事業拡大が期待される分野です。
そんな警備関連銘柄の筆頭の1つであるALSOKの株価は上昇が期待できるのか、買い時なのかどうかを分析してみた内容をお伝えします。
目次
ALSOKの過去10年の株価推移
ALSOKの過去10年の株価推移を示します。
10年で約5倍
株価は過去10年でみると約5倍になっています。
2013年当時は1,000円弱、2015年末には6,000円と、この間は倍々ゲームという急騰ぶりです。
2013年の9月に東京オリンピックが決まり、その影響もあったと思われますので、オリンピック期待という意味ではすでに先取りされているかもしれないと見ることもできます。
株式市場全体が上昇したアベノミクス相場にあっても他の銘柄よりかなり強い動きをしています。
近年は停滞しているように見えますが、2018年以降に半導体銘柄などが大きく崩れる中、株価は堅調だと言えます。
ALSOKの業績
同社のIR資料より過去の業績推移をまとめました。
売上は緩やかながらもきれいな右肩上がりですね。
売上の規模としては約5,000億円と、業界トップのセコムの約半分であるということが分かります。
思ったより差があるのですね。
利益は上昇傾向、利益率は良い
利益も堅調に増加しているのがみて取れます。
一般的には5%が目標とされる営業利益率も8%程度ありますので、優良です。
ただ、業界の比較としてセコムの営業利益率は10%を超えていますので、まだ改善シロがあるかもしれません。
売上構成比率
同社の売上構成比率をまとめました。
セキュリティ事業が全体の約8割を占めています。
セキュリティ事業は堅調
安全・安心ニーズは強く、同社の主力である機械警備はICT/IoTなどの最新技術の導入も功を奏し、法人・個人とも契約件数が伸びているそうです。
また、常駐警備はオフィスビルニーズや企業の警備外注化により大きな需要が生まれています。
同社のIR資料によると、警護輸送で扱う現金は年間350兆円を超えるそうです。こういった信頼・実績は強みですね。
介護事業など、新たな事業分野の拡大
売上全体としての割合はまだ小さいですが、新事業を開拓しています。
警備システムと連携した介護システムやインバウンド需要による民泊ソリューションなどを手がけています。
少子高齢化ニーズにインバウンドニーズといった成長分野の取り込みを狙っています。
ファンダメンタルズ分析
続いて株価指標の観点から分析してみます。
株価は2019年10月時点の5,570円で計算しています。
1株当たり純利益(EPS) | 219.98円 |
株価収益率(PER) | 22.09倍 |
株価純資産倍率(PBR) | 1.91倍 |
自己資本利益率(ROE) | 9.90% |
割安さはない
割安性を示すPERは22倍と、日本企業の平均からすると高いですね。
ただ業種として見れば高すぎるという水準ではありません。
PERの高さは企業の成長性への期待という見方もありますし、低ければ低いほど良いというものでもないですしね。
配当、株主優待
ALSOKの配当をまとめます。なお、株主優待は設定されていません。
せっかくオリンピック選手を社員にしているんだからサイン入りカレンダーでも作ればいいのに、と思います。
配当額合計 | 69円 |
配当利回り | 1.24% |
配当性向 | 30.37% |
配当利回りは1%台前半と低い部類ですね。配当狙いの銘柄ではないことが分かります。
ALSOKの財務分析
続いてALSOKの財務状況です。
総資産(百万円) | 418,388 |
自己資本比率 | 55.90% |
利益剰余金(百万円) | 187,252 |
有利子負債(百万円) | 33,960 |
自己資本比率が高く財務は健全
自己資本比率は企業の安定性を示し、優良の基準とされる40%を大きく超えています。
有利子負債も少ないので、倒産の心配もありません。
この意味では株を長期で持っても安心できる銘柄といえるでしょう。
コスト構造分析
同社の今年度の損益計算書からコスト構造を整理してみました。
高い原価比率
セコムを分析した時にも気付いたのですが、原価比率が高いのが気になります。
働き方改革や少子高齢化による人件費の高騰の影響が大きいでしょう。
売上は伸びる一方で利益の成長が小さいのはそのためだと思われます。
業界分析
ALSOKの今後の成長を占う意味もこめて警備業界の動向について調べてみたことをお伝えします。
ICT/IoT連携が鍵
各社ICT/IoTとの連携による新たなサービスの構築を急いでいます。
従来の警備員を派遣したり常駐したりするビジネスモデルには限界があることを各社理解しているからです。
ALSOKは同社が培ってきた警備ノウハウに、AIを組み合わせ、高品質な警備とコストの最適化に取り組んだり、NTTドコモの5G(第5世代移動通信方式)通信インフラを活用した高精細カメラによる警備などを構想しています。
僕らが映画で見たような警備システムが登場するのもそう遠い将来ではなく、こういった付加価値をもったシステムを他社に先駆けて実現できるかが今後の鍵となりそうです。
業界再編の動き
警備業界は再編が進んでいます。
業界No.1のセコムは火災報知機の能美防災(6744)、航空測量のパスコ(9232)と資本提携しています。
一方のALSOKは消火器大手の日本ドライケミカル(1909)や火災報知機のホーチキ(6745)との業務提携を進めています。
これらのシナジー効果が発揮できるかも重要なポイントとなりますので、業界動向にも注目していく必要があります。
ALSOKの今後の株価を予想
ここまでいろいろ調べてみましたが、最後にもともとの目的の、ALSOKの株は買い時なのかということについて僕の見解をお伝えします。
安全・安心ニーズを背景に業績を伸びており、2020年には東京オリンピックも控えていますので、今後数年も売上高は伸びていくことが想像されます。
ただ、原価費(人件費)が高いコスト構造であること、東京オリンピック後の需要が不透明であること、この2点から今買うべき銘柄ではないと判断します。
国内中心の産業なのも今後成長性が少ないと感じる要因です。
まとめ
今日は警備業界No.2のALSOK(2331)の株価、業績を確認し、投資対象として分析してみた内容をお伝えしました。
警備業界は間違いなく追い風で、今後数年の成長が期待できますので、もしかするとまだまだ株価は上がるかもしれませんし、安定した業績により株価急落のリスクも低い銘柄と思います。
ただ、冒頭の株価推移のとおり、ここ数年でかなり上がっており割安とも言えない水準となっていることには注意が必要です。
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業界No.1のセコムについて分析しました。状況はALSOKにそっくりですね。