富士フイルムホールディングス(4901)の株価、業績を分析|チェキだけじゃない!経営戦略がすばらしい会社

富士フイルムと言えば、写ルンですやチェキが馴染み深いですね。最近特にチェキが若者中心に売れているとのニュースを目にしました。デジカメ全盛時代にフィルムカメラがなぜ売れる?と同社に興味を持ったので、今日は富士フイルムホールディングスの株価や業績について分析してみた内容をお伝えします。

富士フイルムホールディングス(4901)は富士フイルムと富士ゼロックスを傘下に持つ持ち株会社です。

僕は株をたまに買ったりするのですが、同社の存在はもちろん知っていたものの、最初から投資対象から外していました。

理由はシンプルで、デジカメやスマホが一般化するなかでフィルム市場が縮小するのは明らかですし、デジタル化によるペーパーレス化の流れの中でコピー機の売上げが伸びる訳がないと考えたからです。

そんな中フイルムカメラのチェキがバカ売れしているというニュースを目にしました。

出典:同社HP

チェキは1998年に発売され、2002年をピークに売上げは激減していました。

ところが2010年くらいから回復し、2018年にはなんと1,000万台を販売しています。

韓国の恋愛ドラマに使用されたことでアジアでも人気に火がつき、最近はアメリカの人気歌手、テイラースイフトさんをプロモーションに起用するなど、国内外の10代から20代の若者を中心に人気が再燃したようです。

出典:同社HP

このニュースをきっかけに同社に興味を持ち、同社の決算資料やIR情報などを確認してみたので、投資対象として分析してみた結果をお伝えします。

富士フイルムホールディングスの業績

まずは同社の決算資料から売上げ、利益などを抜粋します。左は昨年度の実績、右は今年度の予想です。

(百万円) 2018年 2019年(予想)
売上高 2,431,489 2,480,000
経常利益 212,762 245,000
純利益 138,106 155,000
ROE 6.70%
PER 18.76倍 12.1倍
PBR 1.15倍 0.95倍

売上げは大きいが利益率はそれほどよくない

売上高2兆5千億円くらいというのは、日本企業のだいたいTOP50前後に位置します。言わずもがなの一流企業です。

一方で利益率は10%を切っていますし、ROE(自己資本利益率)もそれほど高いとは言えません。

売上高もここ10年ほぼ横ばいで右肩上がりという訳ではないので、これだけだと株を買うには躊躇してしまいますね。

割安性はそこそこ

割安性の指標として用いられるPERは18倍台と、それほど割安感はありませんが、割高だと警戒するレベルではありません。

今年度の業績が予想通りであれば12倍台まで下がる見込みです。

もう一方企業の健全性を示す指標の1つであるPBRは1.1倍とかなり低いですので、PER、PBR合わせてみると、今の株価水準はそこそこ割安だと見ることができます。

財務、配当状況

続いて同社の財務状況、配当金、株主優待などについてです。

財務は健全

財務状況について同社の決算資料から抜粋しました。

総資産(百万円) 3,414,692
自己資本比率 59.70%
利益剰余金(百万円) 2,507,719
有利子負債 524,112

自己資本比率は優良の目安の40%を大きく超えて60%近くあります。

特に目を引いたのが、利益剰余金です。利益剰余金とはその名のとおり、過去の利益を積み上げていったものですが、これがとんでもなく大きいですね。

利益剰余金の大きさは純資産の大きさに繋がりますので、経営がとても安定している会社だと見ることができます。

配当金

配当金、配当利回りは、普通、の部類です。

2018年 2019年(予想)
配当金 80円 95円
配当利回り 1.74% 2.07%

2019年現在の株価だと、100株で約50万しますので、投資金額に対しては少し物足りない感じがしますね。

ただ、同社は配当金を少しづつですが毎年上げ続けていますので、株主還元の姿勢は強いように感じます。

株主優待

富士フイルムホールディングスの株主優待は以下のとおり、同社のヘルスケア商品などがもらえます。

優待内容 必要株数
自社グループ会社ヘルスケア商品優待割引販売 100株以上
(3月のみ)
2〜3千円相当の自社グループ会社ヘルスケア商品
100株以上
(3月のみ)
自社グループ会社ヘルスケア商品
4〜5千円相当 300株以上
9千〜1万円相当 500株以上
(9月のみ)
千円相当の自社グループ会社フォトブック等プリントサービス利用券
100株以上

アスタリフトなどの化粧品を使われている方には良いかもしれませんね。

ただちょっとこちらも投資額に対してはリターンが低い気がします。

富士フイルムホールディングスの株価推移

次に同社の株価推移を調べてみました。

過去5年スパンで見てみると、4千円から5千円の間を行ったり来たりといった感じで方向感がありません。

2019年の7月に急落しています。このグラフだけ見ると今が買い時のようにも見えますね。

今後の株価はどうなる?

今後の株価の行方を予想するために、富士フイルムホールディングスという会社を少し分析してみました。

冒頭のとおり、安直にフイルムやコピー機に未来はないと思っていましたが、調べてみて自分がいかに浅はかだったかを思い知りました。

経営学などを学ばれている方には有名なことですが、実にすばらしい経営戦略の会社ですね。

事業内容

まずは富士フイルムホールディングスの事業内容を分析してみます。

同社のIR資料から事業ポートフォリオを引用させて頂きます。

まずざっくり概観すると、売上高に占める割合は、富士フイルムの事業が約6割、富士ゼロックスの事業が約4割であるということが分かります。

イメージングソリューション事業


ここがチェキやデジカメの部分です。全体の16%程度だったのですね。

富士フイルムはカメラ関係の会社ではないということを今更ながらに知りました。

カメラ関係の事業は他よりも利益率は高めのようです。本体よりも、数が出るフイルムで稼いでいます。

チェキは上のとおり1,000万台の大ヒットとなっています。若い世代に訴求力のあるモデルやタレントを使ったプロモーションが功を奏しています。

ほっといてこれだけヒットする訳もなく、マーケティングがとても上手い会社だと思います。

出典:同社HP

デジカメはXシリーズが有名ですね。高級路線で差別化を図っています。

実は世界初のデジカメを作ったのは富士フイルムだそうです。

これってすごいことですよね。フイルムを生業としていた会社が自身の市場を侵食するデジカメに舵を切る、分かっていてもなかなかできることではありません。

写ルンですなども売れていた時代なのにです。

当時フイルムメーカーとして富士フイルムと競っていたKODAKは倒産しました。

経営戦略の重要性を語る際にこの対照的な両社がよく引き合いにだされます。

ヘルスケア・マテリアル関連事業


同社はフイルム開発で培った技術を活用し、機能性化粧品や高機能ディスプレイなどを開発しており、今では一番の稼ぎ頭となっています。

特にヘルスケア関連は市場も拡大しており、同社はこの分野に積極投資をしています。

企業買収やM&Aにも積極的で、富山化学工業など医療分野で強い会社を相次いで子会社化しています。

最近では米国のバイオ医薬品大手バイオジェン社の製造子会社を買収しており、その勢いは日本に留まりません。

これだけの大企業がこれほどスピーディに事業を展開するなんて、日本の会社とは思えないですね。

ドキュメントソリューション事業


ここは富士ゼロックスのコピー機関連事業となります。

最近は米xeroxとの統合話のごたごたが話題となっていますね。

富士ゼロックスの株式は富士フイルムホールディングスが75%、米xeroxが25%を保有するという合弁会社です。

簡単に言うと、富士ゼロックスと米xeroxを統合して、富士フイルムホールディング傘下にしましょう、という話なんですが、米xeroxは株主が反対していて頓挫しているという状況です。

主要株主のアイカーン氏が米xeroxの価格を釣り上げようとしているしているのに対し、富士フイルム側が応じないという姿勢を見せています。

コピー機市場は縮小しており、特に米xeroxはジリ貧の状態なので、狙いは統合後のリストラによる収益改善なのは素人の僕にも分かります。

この話の顛末次第で株価が動意付くかもしれませんね。

もちろん悪い方に行くかもしれないので、株価への影響という意味ではここが重要なポイントであるのは間違いありません。

まとめ

今日は富士フイルムホールディングスの株価や業績などについて分析した内容をお伝えしました。

調べてみて感じたのは、株を買うかどうかは置いておいて、すばらしい経営戦略の会社だということでした。

フイルムという市場が消滅する中で、技術の強みを生かして見事に事業を転換し、今現在は本格的に医療分野にも進出する姿勢を見せています。

環境の変化に対して大胆に決断し、積極的に適応していく、日本の大企業とは思えないとてもアグレッシブな会社ですね。

株価もだいぶ割安な水準になってきていますし、僕はこういう会社が好きなので株購入検討リストに追加します。

米xeroxとの統合の顛末を見守りつつ、タイミングを見て買えたらなと思います。