国内販売低迷が続くバイク業界の株価はどうなる?|4強(ホンダ,ヤマハ,スズキ,カワサキ)の株価や業績を比較

ご存知のとおり国内のバイク販売は低迷しており、業界は衰退の一途と言われることが多いです。今日はバイクメーカー不動の4強(ホンダ,ヤマハ,スズキ,カワサキ)の株価推移や各社の決算資料などをもとに投資家目線で比較、分析してみました。

二輪車の国内販売台数は、バイクブームがピークだった1980年初頭には300万台以上だったのに対し、2019年現在市場は10分の1くらいまで落ち込んでいます。

これは実感としても感じます。僕自身学生時代からずっとバイクに乗っていたのですが、本当にすれ違わなくなりました。

バイク乗りとしては寂しい限りですが、時代の流れですね。

バイク市場の動向

まずはバイク市場の動向を確認したいと思います。

いかに企業が優れていても、市場自体が縮小していれば利益を上げるのは困難です。株を買うならやはり市場が広がっている分野に投資したいですからね。

国内市場は衰退の一途

これは冒頭のとおりです。ピークの実に10分の1近くまで販売量が落ち込んでいます。

国内市場としては現在35万台強程度だと言われています。

少子高齢化が進む中さらに若者の車離れ、バイク離れに歯止めがかからず、50代くらいのリターンバイカーが多少増えると言われますが、全体的に見れば今後も市場の拡大は望めないでしょう。

世界規模では需要は拡大


ヤマハの資料によると、2017年度の世界の2輪車販売台数は、なんと5,400万台近いそうです。

国内35万台 vs 世界5,400万台、こんなにも市場規模が違うのですね。

よくニュースやネットでは国内の新車販売がどうこう、5万台でトップだなんだと言われますが、ビジネスとしてみればもはやグローバル中心です。

国内市場は新技術やデザインを試す試金石とするとともにブランド力の強化に注力、その技術を汎用化し、コスト削減した量産設計により海外で儲けを得る、僕が経営者ならばそう考えます。

国内市場は新しい方向性のお披露目の場、ファッション業界でいうところのパリコレみたいな感じですね。

新興国市場が牽引


世界の市場を牽引しているのは新興国です。

中でもインドの伸びが堅調で、2,000万台の大台に届きそうな勢いです。特にスクーター需要が凄まじい伸びです。

インドが世界全体の35%、次いで中国が15%、その他新興国をあわせると、アジアが世界全体の70〜80%を占めています。

このような中、後ほど詳しく述べますが、実は日本の二輪車は世界を席巻しています。

特にホンダ(7267)ヤマハ(7272)が強いです。

少し古い資料ですが、日本自動車工業会が発行したシェアを引用します。

日本ではそこまでの差は感じませんが、ホンダは二輪車業界で圧倒的な地位にいます。

戦略として狙わないという判断かもしれませんが、海外展開ではスズキとカワサキは上位2社に出遅れ感が否めない状況です。

バイクメーカー4強の業績を比較

それでは各社の業績を比較していきたいと思います。

5月に2018年度の決算が出揃いましたので、各社のIR資料をもとに整理しました。

売上高、利益

まず売上高と純利益をみていきます。

売上高(百万) 純利益(百万) ROE
ホンダ 15,888,617 610,316 7.50%
ヤマハ 1,673,137 93,366 14.60%
スズキ 3,871,496 178,759 13.30%
カワサキ 1,594,743 27,453 5.80%

当たり前ですが、売上高は自動車も強いホンダが桁違いです。スズキも軽自動車でがんばっていますので会社としての売上は2番手となります。

利益を見てみると、各社とも黒字ですね。

とくにSUZUKIは完成検査不正による特別損失を約800億円計上していますが、それでも2,000億近い利益を出しているのは驚きです。

利益を効率的に出せているかの指標であるROEを併記していますが、10%以上が優良とされる中、カワサキはちょっと苦しい状況がわかります。

ファンダメンタルズ、財務、株主優待

続いてファンダメンタルズ指標です。

6/1終値 株価 PER(倍) PBR(倍)
ホンダ 2,651円 8.9 0.6
ヤマハ 1,863円 8.1 1.1
スズキ 5,158円 13.5 1.4
カワサキ 2,433円 16.6 0.9

PER、PBRは割安性の指標とされ、PERは15倍以下、PBRは2倍以下を目安に割安とされています。

割安だから株価が上がるなんて単純なもんじゃありませんが、各社割安な部類だと言えます。

ただ、ここでもカワサキの数値はあまりよろしくありませんね。

自己資本比率 BPS
ホンダ 40.5% 4,698円
ヤマハ 45.9% 1,882円
スズキ 40.9% 3,018円
カワサキ 25.0% 2,851円

自己資本比率は40%以上が健全とされるなか、各社そこそこの値です。

各社さすがの大企業で、倒産の心配はないでしょう。

BPSは一株当り純資産といって、株価に近いか株価以上あれば下値が堅いと言われます。詳しい説明は割愛しますが、上のPBRと同じ意味です。

配当利回りは以下のとおりで、ホンダ、ヤマハは悪くないですね。この2社は自社カレンダーを株主優待にしているので、ファンにはいいですね。

配当利回り 配当金 配当性向
ホンダ 3.6% 111円 32%
ヤマハ 4.1% 90円 33%
スズキ 1.4% 74円 19%
カワサキ 2.5% 70円 43%

バイクに絞った比較

ホンダやスズキはバイクメーカーであると同時に自動車メーカーでもあり、そちらの売り上げが大きいので、バイク関連に絞った業績を確認してみます。

売上、利益、販売台数

各社の決算資料にセグメント毎の売上げ及び利益率がありました。販売台数は東洋経済新聞社さんの調べを引用させて頂きます。

(バイク関連) 売上高(百万) 利益率 売上げ比率 販売台数
ホンダ 2,100,155 13.9% 13.0% 1,955万台
ヤマハ 1,022,174 5.30% 60.0% 539万台
スズキ 255,071 1.40% 6.6% 158万台
カワサキ 357,566 4.00% 21.0% 56万台

ホンダが断トツトップ、ヤマハと2社で世界を席巻

バイクだけに切り取ってみてもホンダが圧倒的ですね。売上高は実に2兆円です。

ヤマハは売上全体の60%が二輪車なので、もっともバイク関連銘柄と呼ぶに相応しいです。

カワサキこと川崎重工業はセグメントの分け方でスズキより売上は大きいですが、バイクそのものの販売台数としては4社の中では最も少ないです。

そのスズキも二輪車の比率は6.6%と依存率は低いですね。

ホンダとヤマハの販売台数を足すと約2,500万台となり、全世界のバイクのおよそ半数を日本企業で席巻しているということです。

利益率はホンダ以外は苦しい状況

上の表のとおり、ホンダは利益率10%オーバーですが、その他は苦戦しています。

新興国で日本と同じ値段でバイクが売れるわけもなく、各社とも海外生産などでコスト削減していますが、それでも利益を出すのが難しい状況です。

主戦場となるインドでは現地最大のヒーロー・モトコープがいますので、MADE in ジャパンのブランド力は強いですが、技術はコモディティ化していきますので、これからも価格競争は激化していくでしょう。

日本の株式市場は理屈の通じないハチャメチャ相場ですが、真面目に考えれば、利益が伸びない限り株価が上がる妥当性がないとも言えますので、手を出しづらい銘柄群だと思います。

各社の株価推移

続いて各社の株価推移を見ていきます。

10年スパンのものをマネックスより引用します。

・ホンダ(7267)
・ヤマハ(7272)
・スズキ(7269)
・カワサキ(7012)

ホンダは二輪に限らず自動車も好調なはずですが、株価で見ると方向性がありません

この中ではスズキが一番右肩上がりに見えます。上のとおりバイクは利益に貢献していないので、これは軽自動車がヒットしたからでしょう。

ヤマハは急騰したり急落したりを繰り返していますが、上がっていると見ていいのかな。どうかな。という感じです。

川崎重工は会社全体としては重電系のメーカーで、業界全体が利益を出せず苦戦しているため、株価もなかなか上がらないです。

各社の特徴

各社の製品と特徴を簡単にまとめます。

ただし、これは僕自身がバイク乗りなので、多分に主観を含むことを最初に断っておきます

僕の思い出話みたいになってしまったので、興味ない人は読み飛ばしてください。

でも、投資対象として考えるならその会社の製品に興味を持つことは大切です。

ホンダは優等生

ホンダのバイクは「優等生」と表現するのがぴったりです。

僕が免許をとった時の教習車が有名なCB400SFだったのですが、先生の後ろに乗せられた時に、

「おいおい、コケるってコケるって」

と思うくらいのワインディングでも安定してました。凄さを感じると同時に若干イラっとした思い出です。

僕が学生のころに最初に買ったのが、HONDA DIOです。

出典:HONDA公式HP

50ccのスクーターですが、それまで移動手段を持たなかった僕の行動範囲が一気に広がるとともに世界が広がった感じを受けたことを覚えています。

今はDIOは生産中止になっています。ホンダは機種をある程度集約する方向ですね。

ホンダのスーパーカブは全世界で累計1億台以上のベストセラーですし、様々なレースで優勝するなど、あらゆるカテゴリーのトップメーカーです。

ヤマハはデザイン

ヤマハのバイクの一番のウリは「デザイン」だと僕は思ってます。

もちろん性能もいいですが。

僕はバイクをデザインで選ぶ人間なので(本当のバイク好きには怒られそう)、僕の2台目、3台目のバイクはともにYAMAHAです。

あっという間にスクーターでは物足りなくなった僕が最初に(親に借金して)買ったのが、Drag Star Classicです。下の写真は僕が実際に乗っていたものです。

当時はアメリカンが一番流行ってました。友人も皆アメリカンに乗っていてよく一緒にツーリングに行きました。

右腕骨折したのも思い出深いです。父親はアキレス腱やってますし、従兄弟は前歯を無くしました。それでもバイクに乗りたいのは遺伝なんですかね。

社会人になって自分のお金で買ったのがこのVMAXです。

逆輸入車で「V-boost」っていう、加速装置みたいな機能が付いているんですが、一度使ってこれはマジで危ないと思い二度と使いませんでした。

燃費も車と変わらないくらい悪く、夏はエンジンの熱気で乗り心地も最悪、しょっちゅうエンストしてました。

僕にとって機能・性能じゃないんですよね。バイクって。

スズキはコアファン向け

スズキは「隼」「カタナ」といったコアなファンが付いているイメージです。

「マニア」向けのバイクですね(また怒られそう)。

個人的にはバンディットというバイクが好きで最後まで悩みました。

カワサキは男のバイク

カワサキはゼファーやZ-Ⅱなど、男らしいバイクが多いです。

簡単に言うと、ヤンキーが好きなバイクですね。

Z-Ⅱは「ゼッツー」、W650は「ダブロク」など、あだ名の付け方がそれっぽいのばっかでした。

大学のバイト時代に先輩と後輩がよく熱く語ってました。懐かしいですね。

バイク業界の今後

話がそれましたが、最後に僕なりにこの業界の今後について考えてみました。

国内はもうしんどい

冒頭のとおり、国内市場は今後回復する目処はありません。多少のブームが来ても海外市場と比べるべくもないので、やはり新製品のお披露目、ブランド力アップのための市場にしかならないと見ています。

自動二輪は専用駐車場も少なく、高速料金も自動車と変わらないなどの不遇っぷりですが、国としても環境整備に投資をするほどの価値が無いと判断しても仕方ないでしょう。

海外での収益力強化が鍵

上で調べたとおりインドを中心とした新興国における海外市場が堅調です。

ここでいかに収益を上げられるかが各社の鍵となります。

いかに安く品質の良いものを作るか、当たり前ですが、これしかありません。

新興国リスクに注意

新興国の通貨価値は短期間で大きく変動します。

通貨は国そのものの信頼性の鏡という側面があり、特に新興国の通貨は、なんとかショックなどにとても弱いです。

海外売上げ分は為替レートがそのまま業績に直結しますので、この点はリスクです。

逆にインドルピーが上がれば利益も膨らむので、裏を返せばチャンスでもあります。

新しい技術

日本はやはり技術の国です。各社EV二輪車などに力を入れていますね。

自動車で先行する自動運転などの技術を使った安全性の向上など、世界に先駆け新たな技術で差別化していくことで市場での確固たる地位を築けるので、どこが抜き出てくるか注目です。

まとめ

今日はバイク業界の4強(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)を投資対象として分析、いろんな角度から比較してみました。

今日調べるまでは国内市場も縮小傾向で先が無い業界なのかぁと思ってましたが、こんなにも世界市場が拡大しているとは知りませんでした。

この中では僕自身ずっと乗っていたヤマハの株に興味がありますが、ちょっと株価が上下しすぎで怖くて手を出せない、というのが正直な感想ですね。