防衛関連銘柄をちょっと真面目に考えてみた|5兆円産業は熾烈なパイの奪い合い

防衛関連銘柄はたびたびテーマ株の掲示板などに取り上げられます。特に北朝鮮のミサイル発射実験やシリアをはじめとした中東情勢の悪化などの地政学リスクの高まりを報じるニュースとともに注目を浴び、多くの企業の株価が下落する中、逆行高を演じるということがよくあります。

一方で僕はyahooニュースなどに取り上げられる防衛関連銘柄に違和感を感じています。

今日はそんな僕がちょっとだけ真面目に防衛関連銘柄について調べて見た内容をお伝えしたいと思います。

防衛産業の市場規模

遠回りのようですが、僕は銘柄を探す際に可能な範囲でその市場規模や見通しを調べるようにしています。

いかに優れた企業であっても市場そのものが縮小、減退するのであれば利益を出し続けるのが困難だと考えるからです。

防衛関係予算は約5兆円

防衛産業の市場規模を見ていきます。

防衛予算は国家予算なので、その予算規模の推移や内訳は公表されています。

いろいろソースは出てきましたが、「防衛白書」から以下の図を引用します。

防衛予算は概ね5兆円前後で推移しています。ニュースサイトなどによると、国のGDPの1%を国防費にあてるというのが日本の慣例のようです。

予算は安定しているが、急に伸びたりもしないということです(よほどの何かが無い限り。。)

この5兆円のうち、半分くらいは隊員の方々の給料だったり食費等になるため、防衛関連企業の市場規模としては、2兆円をちょっと切るくらいだと思われます。

これを各企業で奪い合う、というのが防衛産業の特性だと理解しました。

主要な契約企業

防衛予算は国家予算、僕たちの税金が使われているため、その用途が公表されています。

防衛省のHPで面白い資料を見つけました。数年前のものですが、主要な契約企業とその比率が一覧になっていました。

これらが防衛産業における本命銘柄群のはずです。

抜粋したものを以下の表にまとめます。興味があれば以下の防衛省のHPを参照ください。
・契約に係る情報の公表(防衛省HPへのリンク)

 

順位 契約相手方 全体に対する比率
1 三菱重工 16.7%
2 川崎重工 12.2%
3 日本電気 6.4%
4 ANA 5.9%
5 三菱電機 5.5%
6 IHI 3.9%
7 富士通 3.4%
8 東芝 3.0%
9 小松製作所 2.2%
10 三井造船 2.0%
11 伊藤忠アビエーション 1.8%
12 JX日鉱日石エネルギー 1.7%
13 日立製作所 1.4%
14 コスモ石油 1.3%
15 沖電気工業 1.0%
16 伊藤忠エネクス 1.0%
17 ダイキン工業 0.9%
18 昭和シェル 0.8%
19 日本製鋼所 0.7%
20 ジャパンマリンユナイテッド 0.6%

 

三菱重工と川崎重工は戦車や飛行機のイメージがありましたが、他の企業は意外な顔ぶれという印象です。

この20社で全体の70%以上を占めていますので、これらが本来防衛関連銘柄の本命のはずです。

ただ、いずれの企業も大きいですので、その会社にとっての、売り上げ全体に対する比率は少なそうです。

防衛省から見たら相当な比率を占める各社ですが、各社にとっては事業全体のほんの一部ということなのでしょう。

日本の防衛産業の構図が見えるとともに、僕が感じていた防衛関連銘柄に対する違和感(防衛関連銘柄としてこれらが取り上げられないこと)に納得がいきました。

防衛省と契約のあるその他の企業

上の主要な契約企業のような大企業ではなく、防衛産業への依存度が高い中小型株の方が防衛関連銘柄というに相応しいというのが、日本の株式市場の考え方だと理解しましたので、その他の契約を見ていきました。

以下の防衛装備庁のHPに全ての契約がエクセルデータで公開されています。
・防衛装備庁のHPへのリンク

ここから防衛省と契約した企業をピックアップしたものを以下にまとめます。

全ての契約を合わせると3,000件以上あり、とても全部は見切れなかったので、企業名でソートしながら、この会社聞いたことあるなというもので上場している銘柄を選定しました。

企業名(証券コード) 主要製品
沖電気工業(6703) ソーナー装置
ユニチカ(3103) 作業服
明星電気(6709) 気象観測装置
昭和飛行機(7404) コンテナ
新日本無線(6911) 電子管
キーサイト・テクノロジー 計測器
明電舎(6508) 電源車
トプコン(7732) 潜望鏡
細谷火工(4274) 発煙筒
石川製作所(6208) 機雷
新明和工業(7224) 飛行機部品
日本アビオニクス(6946) 通信装置
富士電機(6504) 計測器
山洋電気(6516) 周波数装置
丸文(7537) 電子管
ミネベアミツミ(6479) ラック
古野電気(6814) 衛星航法装置
池上通信機(6771) 録音再生機
アジア航測(9233) 測量調査
能見防災(6744) 感知器

 

結構疲れました。順不同で売上高や売上比率までは調べてませんがご了承ください。

石川製作所細谷火工は防衛関連銘柄として有名ですね。北がミサイル発射した翌日は必ず株価が上がっていた印象です。

機雷と発煙筒で一体どうやってミサイルを防ぐのかは分かりませんが、そういう問題ではないということは分かっています。

特にこの2社は上の表の中でも時価総額が小さめで、株価の値動きが軽いので個人投資家に好まれるのでしょう。

僕はこれらの銘柄は怖くて手が出ません。これらを扱うのは個人投資家という名のギャンブラーだと思います。

なお調べたのは「契約に係る情報の公表(中央調達分)」というデータでしたので、地方契約分というのもあるのでしょうが調べきれませんでした。

米国の軍事関連企業


上のデータを調べている際に気になったことがあります。

高額契約TOP10のうち6件が米国空軍との契約でした。

契約名もよく分からない名称のものが多かったですが、分かる範囲で製造元のメーカを調べてみました。

また、グーグル検索でairforce,contract(契約)などのキーワードで米国の軍事関連企業も調べましたので合わせて記します。ざっと調べただけなので、間違いあったらすみません。

ちなみに日本は専守防衛なので防衛費と呼びますが、アメリカは戦争するので軍事費です。

企業名(ティッカー) 主要製品
ボーイング(BO) オスプレイ
ロッキードマーチン(LMT) F-35
レイセオン(RTN) Patriotミサイル
ノースロップグラマン(NOC) グローバルホーク
BAEシステム(BA) 戦闘システム
Honeywell(HON) アンテナ
Space X 衛星通信
ジェネラルダイナミクス(GD) サイバー
L3コミュニケーションズ(LLL) 通信機器
オムニコムグループ(OMC) 広告
CSRA(CSRA) ITサービス

 

F-35オスプレイはニュースでよく聞きますね。トランプの圧力もあり日本にかなり導入が進むのでしょう。これらの米国株も検討してみてはいかがでしょうか。

ちなみに米国の軍事費は以下のとおりです。これも「防衛白書」にのってました。

600,000(百万ドル)ということで、えっ、70兆円!?日本の約14倍です。

軍事関連銘柄も米国株から探すのが良さそうですね。ただ、米国も予算自体は横ばい傾向です。

これからは宇宙、サイバー、電磁波、らしいです


最後に防衛関連銘柄を探す上でのヒントとなりそうなポイントをお伝えします。

今日の記事を書くにあたっていろいろ調べていたところ、「中期防衛力整備計画」という資料を見つけました。自衛隊の今後の方向性などが書かれています。
・中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)について

なかなかに一般人には理解しがたい難しい内容でしたが、今後の銘柄選び、投資先選定に関係しそうなキーワードとして、「宇宙」「サイバー」「電磁波」に力を入れていくとのことです。

僕らが子供のころに見たガンダムや宇宙戦艦ヤマトの世界に近づいていくのでしょうか。まだまだ先な感じがしますが。

予算額は変わらなくとも予算の配分は変わるでしょうから、これらのキーワードをヒントにするのも良いかもしれません。

まとめ

今日は防衛関連銘柄について調査した結果をお伝えしました。

テーマ株としてよく取り上げられますが、市場が伸びないので個人的にはあまり買いたいとは思えませんが、米国株の方はちょっと興味があります。

防衛関連銘柄の本命とよく言われる日本の中小型株は、業績とは関係ないところで株価が動くので、投資初心者や僕のようにセンスのない人は手をだされないことをおすすめします。