昨日2018/8/10に朝日インテックの決算発表がありました。この時期は多くの企業が第一四半期決算を発表中ですが、同社の決算月は6月のため本決算発表となります。JPX400に採用されている唯一の東証2部上場の企業ということで興味を持ち、決算内容や株価推移を確認し投資対象として分析してみました。
JPX400とは荒っぽい表現ですが、簡単に言うと日本の優良企業400社で構成された株価指数です。このほかに有名な指標としては日経225やTOPIXがあります。
・JPX400の構成変更による追加された銘柄の翌日の株価を調べた関連記事です。
目次
朝日インテックとは
朝日インテックは医療機器を製造する企業です。
2004年にJASDAQへ上場、2005年には東証2部へ上場しています。
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2018年9月4日追記
朝日インテックは2018年9月21日付けで東証1部に指定替えされます。
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1972年に朝日ミニロープ工業所として創業し、現在は医療用のガイドワイヤーや貫通カテーテルを主軸としたメディカル事業と内視鏡用部材などを供給するデバイス事業の2つの事業領域を持っています。
詳しくは後述しますが、カテーテルを始めとした医療用機器の伸びが顕著で、売上全体の8割がメディカル事業であり、かつ海外市場における売上が伸びが同社の成長の背景にあります。
カテーテルとは血管の中を通ることができる極細の管で、これにより内部からの診断や、狭くなった血管を広げて血流を回復するなどの用途に用いられる画期的な技術で、近年よく医療ドラマに登場します(というか、ブラックペアンはじめカテーテルという言葉が出なかった医療ドラマがないくらいです)。
2018年6月期の業績
以下に使用する数値は主に2018年8月10日に発表された同社の決算短信から引用しています。
通期業績は非常に良く、好調さがうかがえる決算内容となっています。
連結経営成績
同社の決算資料をペタッと貼ってもいいのですが、それでは分析になりませんので、マネックスの企業情報の内容も参考に作成したのが以下の表です。
前期実績
|
今期 | ||
会社見込み(5/10) | 実績(8/10発表) | ||
売上高(百万) | 42,709 | 47,426 | 50,124 |
(同 前期比) | 8.1% | 11.0% | 17.4% |
経常利益(百万) | 10,941 | 12,170 | 13,740 |
(同 前期比) | 14.9% | 11.2% | 25.6% |
純利益(百万) | 7,725 | 8,599 | 10,042 |
(同 前期比) | 11.8% | 11.3% | 30.0% |
1株当たり純利益 | 60.86 | 66.68 | 77.75 |
PER | 42.6倍 | 61.7倍 | 53.3倍 |
ROE | 20.10% | ||
自己資本比率 | 70.60% |
売上高、経常利益ともに昨年度から大幅に伸びています。特に純利益が前年比で30%も伸びています。
表からは割愛していますが、売上に対する原価比率が低いのが特徴的でした。製造業の多くは厳しい価格競争、人件費の高騰など原価比率が高くなる傾向にあり、思うように利益を出せていない企業が多い中、同社は付加価値の高い製品を提供しているということが分かります。
また注目なのが、5月に発表した通年の会社予測を大きく上回っているということです。
上振れ増収増益サプライズ銘柄として、週明け13日の株価上昇に期待が持てます。
ただし、成長業種は市場予測も高めですので、材料出尽くしとして売られるケースもあり注意が必要です。
2018年8月現在、米中の貿易摩擦懸念により相場環境はよくないですが、個別銘柄物色の中で注目を浴びるかもしれません。
財務状況
決算短信では財務状況も公表されますが、割愛します。固定資産を純資産でまかなえる同社の自己資本比率は70%を越えており、超優良な財務状態です。
朝日インテックは今後も成長を続けるのか
マネックスより朝日インテックの売上および営業利益の推移を引用します。2012年から業績は伸び続けています。
2019年の業績見通し
同社は次期の見通しに対し、需要増続き売上高は54,493百万円(前年同期比+8.7%)、経常利益は14,557百万円(同+5.9%)を見込む、としています。
売上増の主要因として、PTCAガイドワイヤーおよび貫通カテーテルの市場シェアを拡大するとあります。
なお、想定為替は110円とのことです。輸出の占める割合が多い企業は為替の影響も無視できません。
医療機器の市場動向
医療機器の市場動向を見ていきたいと思います。
今期が増収増益だとしても、市場自体が縮小傾向にあれば今後の計画達成が難しくなるからです。
こういう時に役立つのは官公庁の資料です。下の図は経済産業相の資料からの引用です。
出典元:経済産業省における 医療機器産業政策について(平成30年7月版)
日本の市場は微増傾向ですが、世界市場としては大きく成長しているのが分かります。
世界の医療機器市場はこの10年で倍増しています。
日本自体は人口縮小していますが、世界的には人口は増え続けており、医療機器の需要は増え続けているという単純な話です。
同社はこの流れをしっかり取り込みながら海外展開を軸に成長しているため、2019年の目標も達成するだろうと僕は思います。
朝日インテックの立ち位置は?
参考までに世界の医療機器市場におけるシェアを調べました。
こちらも経済産業相の資料を引用します。
日本企業は医療機器分野においてはまだまだシェアは高くなく17位のオリンパスが最高順位です。
オリンパスは内視鏡の世界シェアのほとんどを有しています。
朝日インテックの同業他社としては同18位のテルモが近いでしょう。
売上規模ではテルモは約5千億、朝日インテックは500億と約10倍くらいの差があります。
朝日インテックはまだまだ上を目指す余地が大きいということです。
朝日インテックの株価は買い時か
ここまでで朝日インテックは今後も成長が期待できる非常に魅力的な会社だと分かりました。
ここからは気になる朝日インテックの株価についてです。
株価推移
直近6ヶ月の株価推移と5年の株価推移をマネックスのデータより引用します。
・6ヶ月推移
・5年推移
6ヶ月推移ではかなり上下動が激しく見えます。為替に敏感な精密機械系銘柄の値動きは荒いです。個人投資家や海外の機関投資家が頻繁に売買しているのでしょう。
一方で5年でみると株価は実に10倍ほど上がっています。
現在の株価に割安性はない
上の連結経営成績の表の中でPERを記載しました。
株価を一株当たり純利益(EPS)で割って計算されるこの数字は低いほど割安とされており、日本企業の平均で15倍程度です。
朝日インテックが分類される精密機械業種の業種平均PERは20倍程度なのですが、同社は50倍を超えています。
同社の成長性に疑問の余地はないと思いますが、株価という意味では現在すでにかなり期待を上乗せされた値になっていると見ることができます。
・各業種のPERの中央値を調べた関連記事です。
まとめ
今日はJPX400に採用されている唯一の東証2部企業である朝日インテックの決算内容と株価推移について調べてみたことを書きました。
同社は今後も成長が期待できる非常に良い会社だと思います。
決算と同時に発表された新中期経営計画「ASAHI Road to 1000」では、オンリーワン技術でグローバルニッチNo.1を目指すとあります。「グローバル」「ニッチ」「No.1」これが日本の製造業が生き抜くキーワードというのは僕も同意です。
同社は投資対象としても非常に魅力的な会社ですが、現在の株価はかなり高い水準にあり、成長性(EPSの伸び)を加味しても現在は割安とは言えません。
割安株投資を基本とする僕は残念ながら今のタイミングでの購入はリスクの方が高いと判断します。
しかし、東証1部の要件を満たしていそうなのになぜ東証2部のままなんでしょう。気になります。
・同じくグローバルニッチNo.1を目指すNITTOについての関連記事です。