ファイザー(PFE)の株価はなぜ上がらない?モデルナ(MRNA)と比較

ファイザー(PFE)は薬品分野で世界トップクラスの売上高を有する、米国を代表する製薬会社です。ご存知のとおり、ファイザーはコロナのワクチン開発に成功し、これの売り上げ貢献により、今年はおそらく過去4年連続首位のロシュを抜いて世界一を奪取すると言われています。今日はそんなファイザーの株価を同じくワクチンで一躍有名になったモデルナ(MRNA)と比較しつつ、買い時かどうかを考えてみた内容をお伝えします。

ファイザーはコロナワクチンの開発前から製薬分野では最大級の企業でしたが、米国株投資家からは長年、「なぜか株価が上がらない株」と言われ続けていました。

過去5年の株価は下のように、方向感にかける感じで、少なくとも右肩上がりとは言えません。

・ファイザー株価(5年スパン)
ファイザー,株価

一方でS&P500をはじめとするIT系企業の株価は好調で、たとえば同期間のグーグルの株価は以下のように、「コロナショック、なにそれ?」と言わんばかりに最高値を更新し続けています。

・グーグル株価(5年スパン)

ワクチン開発したから株価が上がるというなら、そんな簡単な投資はないですが、それを差し引いても現在の相場に納得がいかない方も多いでしょう。

僕もそんな一人で、ほとんど売買をしない僕にしては珍しく、株価はきっと上がるはずだと、1年ほど前からちょくちょく買い足し続けています。

現在の投資金額は300万くらいと、個別銘柄としては僕のポートフォリオに占める割合が一番大きくなってしまいました。

今日は同じくワクチン関連銘柄として代表的なモデルナ(MRNA)と比較しつつ、改めて買い時か、売り時かを考えてみた内容をお伝えします。

僕の結論としてはホールド、追加投資は見送り、です。

ファイザーとモデルナの株価比較

ファイザーとモデルナの直近1年の株価を比較してみましょう。

ファイザーの株価推移

まずはファイザーの直近1年の株価推移です。

・ファイザー株価(1年スパン)
ファイザー株価
つい先日、7月末の四半期決算発表を機に急激に上昇しました。

ただ、それまでの期間はほぼ横ばいという感じで、GAFAMをはじめコロナショックから急速な回復を見せる米国株と比較すると出遅れ感は否めません。

コロナ禍に対して、ワクチンというもっとも直接的な出口を作った会社に対する株価の反応がこの程度なのは納得がいきませんね。

僕は後で紹介する業績なども踏まえ、あと1年は無心でホールドすると決めました。

もちろん株価が上がらないどころか急落するリスクもありますが、ダウがコロナの影響で受ける上下動に対して、ワクチン関連銘柄は逆相関を示すのではないかと予想しているところもあり、金や債券に分散する感覚で保有できる銘柄と判断しています。

モデルナの株価推移

一方でモデルナの直近1年の株価推移は以下のとおりです。

・モデルナ株価(1年スパン)
モデルナ株価

衝撃的ですね。株価は1年前の5倍です。ちなみに2年前なら10倍です。

まさにまだはもうなり、もうはまだなり、の状況ですが、まだ天井を打たず連日最高値を更新しています。

モデルナ製ワクチンの緊急承認が話題になったのは昨年末くらいだったでしょうか。

その時に投資しても十分間に合ったのですが、なぜ僕の頭は投資と結びつかなかったのかと今でも後悔しています。

今となっては、上がりすぎが怖くて投資するのに二の足を踏む状況ですね。

モデルナは上場して間もない、いわゆるバイオベンチャー企業です。

バイオベンチャーの株は本当にギャンブル要素が強いです。

日本の企業ですが、数年前にサンバイオというバイオベンチャーが脳梗塞に対する新薬の治験に失敗して4日連続ストップ安となったのは有名ですね。

サンバイオの株価は下のとおりピークの1/10です。あの時いったいどれだけの人が市場から退場したことでしょう。

さんバイオ

バイオベンチャーにはこういうリスクがあることを認識した上で、大きくベットできる人でなければ投資で大きな利益を得ることはできないと改めて考えさせられました。

モデルナの株価はすでにチキンレースが始まっていると思っていますが、あえて僕は先月投資してみました。その経験から自分がどのような考えを学ぶかを知りたいからです。

ファイザーとモデルナの業績比較

ファイザー,モデルナ,比較
続いてファイザーとモデルナの昨年度の決算から業績とファンダメンタルのポイントを比較してみましょう。

ソースはmorningstar、感覚的に分かるように1ドル100円で計算しています。

2020年通期 ファイザー モデルナ
売上高 4兆2千億円 800億
営業利益 8,760億円 ▲760億
株価収益率(PER) 19.9倍
配当利回り 3.40%

株価収益率(PER)と配当利回りは直近の株価から算出しています。

昨年度の売上比でみると、モデルナはファイザーの約1/50と、まさに巨大企業とベンチャー企業の比較という感じですね。

また、モデルナは昨年度までずっと赤字なので、利益率はマイナスですし、割安性を示すPERなどの指標が算出不可です。

もちろん今年はワクチンで黒字ですが、今の株価には期待というプレミアが乗っている状態であることは言うまでもありません。

コロナワクチンの売上げへの影響

一方で2021年のワクチンのみの売上高の予測は以下のとおりです。

ソースはロイターかどっかのネット記事です。

2021年 ファイザー モデルナ
ワクチン売上 3兆4千億円 2兆2千億円

ファイザーの売上に占めるワクチンの割合が思ったより大きいのに驚きました。

ワクチン以外の売上見込みは微増らしいので、ざっくりですが、ワクチンのおかげで昨年度の1.5倍くらいの売上高になる見込みです。従業員1万人を超える大企業の売上が1年でこんなに売上増えるなんて滅多にありません。

一方のモデルナはほぼワクチンの売上が会社の売上となり、なんと2.2兆円と、昨年度の30倍ちかくなります。

そりゃ株価も上がるわな、という状況であることが改めて確認できました。

去年の決算と今年の見込みデータを踏まえて、ファイザーとモデルナの株を買うか売るかを考えてみます。

ファイザー(PFE)についての考察

ファイザー
冒頭のとおり、僕はファイザーの株は売りもしないし、追加購入もしないことにしました。

平均取得単価が40ドルくらいなので、下は30ドル、上は60ドルを目安に無心でホールドします。

株価は依然割安な水準

ファイザーのPERは20倍を切っており、米国株としては割安な水準といってよいでしょう。

PERは純利益(正確には1株当り利益)で計算される指標で、利益が上がればさらに割安となります。

少し荒っぽいですが、売上・利益が1.5倍になるなら、株価が1.5倍になっても割安性は変わらないということです。

なので、これが僕が上値60ドル(40→60)を設定した根拠です。

計算が雑で安直と思われるかもですが、米国の大型株に対してはシンプルな考え方で投資するのが良いと思ってます。

また、間違ってるにせよ、なにかしら自分の中でロジックを持つことは大切です。

そうでないと、株価下がったらすぐ狼狽売りという、投資家としてもっとも無様な姿を晒すことになるからです。

高い配当利回りは安心材料

ファイザーの配当利回りは現在の株価水準で3.4%くらいあります。

高配当企業が多い米国株においてもトップ10に入るか入らないかくらいの位置です。

製薬会社は日米問わず一般的に高い傾向がありますね。ちなみに日本の企業だと武田薬品は5%近い水準です。

さらにファイザーは過去12年連続増配していますし、他の高配当企業より配当性向がそれほど高くない点も魅力的ですね。

配当性向は会社の利益の何割を配当に回しているかを示す指標で、高すぎると将来の投資余力がなくなることを示すので、個人的にはけっこう重視しているポイントです。

ワクチン売上増もあり、しばらくは減配リスクも非常に低いでしょう。

仮に株価が30ドルになると、配当利回りは5%を超えるので、簡単にはそこまで下がらんだろうというのが僕の仮説です。

開発力に疑問

ファイザーについていろいろ調べましたが、ファイザー自身が開発した代表的な新薬は1998年の「バイアグラ」から登場してないそうです。

さらに各種の特許切れの問題もあり、こういったところが株価がずっと上がらなかった原因のようですね。

最大級の製薬会社で居続けられるのは、買収、M&Aによる拡大によるところが大きく、それが悪いことではないですが、ワクチン後の将来が見えない、というのが市場の見方なのかもしれません。

ここが、僕が追加投資は止めておこう、と判断した理由です。

モデルナ(MRNA)についての考察

モデルナ
続いてモデルナについて少し調べて今後のポイントになりそうなところをお伝えします。

モデルナは「バイオ界のテスラ」などと呼ばれることもあるとおり、市場最高値を更新し続けています。

時価総額は11兆に到達

先日ネットのニュースでモデルナの時価総額が11兆円になったと見ました。

ご存知のとおり時価総額は「株価×発行済み株式数」なので、いかに株価がすごい水準にあるかということが分かります。

モデルナの時価総額は米国トップ100に入りましたし、これを日本企業にあてはめると全体のトップ5に入ります。

従業員1,000人くらいのモデルナが、時価総額ではNTTと同じ規模ということでです。

さすがに今の水準がフェアバリューとは思えませんね。

実績がともなっているので、株が紙クズになることはないでしょうが、チキンレースはすでに始まっていると見るべきと思います。

まぁこんなことばっか言ってるから、僕はテンバガー株をつかめないと自覚してはいますが今から大金つっこむ気にはなれませんね。

モデルナの株価を支えるのは「期待」

モデルナのコロナワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)という技術が使われているそうです。

当然僕には詳しいことは分かりませんが、方式として、今後のワクチンに応用がききやすい、短期間での開発が可能となる、ことが期待されています。

株価はワクチンの売上増の織り込みだけでは説明がつかない水準ですので、これが業界のゲームチェンジャー技術になる可能性に投資家は期待している、とみることもできますね。

ファイザーの株価予想のまとめ

今日はファイザー(PFE)の株価の買い時、売り時を考えるために決算情報の整理や、同業のモデルナとの比較などをお伝えしました。

冒頭のとおり僕はファイザーの株をもうしばら持ち続けたいと思います。

僕は長期投資を基本としているので、レンジは30ドルから60ドルで考えます。

ただ、コロナの勢いはとどまることなく、今はデルタ株に対する治験が進められているところですが、そのうちオメガやガンマなどとさらに変異していくかもしれません。

今後これらに対する治験の成否や、インフルエンザに対するタミフルのような特効薬ができるかどうか、どこが作るかで、製薬・バイオ分野の株価は今後も荒い値動きが予想されるので、頭を固くせず臨機応変に考えていきたいですね。