働き方改革銘柄(1)|人材サービス業界

 前回は働き方改革のマクロな視点を学ぶため、働き方改革実行計画の概要を所見とともにご紹介しました。今回は働き方改革銘柄の1つとして人材サービス業界について書きたいと思います。

人材サービス業界を取り巻く環境

 政府の働き方改革実行計画を読むと、派遣などの非正規雇用を無くし、正社員化を促進すると言っており、また人手不足を背景に近年の求人倍率は1倍を超えており、新卒者の正規雇用は確実に進んでいます。

 このような状況が進むと人材サービス業界の代表である派遣業界などは厳しくなってくるようにも思われます。一方働き方改革実行計画には能力に応じた報酬の適正化の促進も謳われていますので、高いスキルをもった人達に対する転職サービスは明るいようにも見えます。

 僕は人材サービスの代表である派遣業界も転職業界も両者とも更に伸びると思っているため、それらに関する銘柄への投資比率を上げることを考えています。以下の構成で書きます。

・日本の非労働力人口 → 派遣業界が有望と思う理由
・働き方改革に対する実感 → 転職業界が有望と思う理由
・僕がチェックしている人材サービス会社 → 銘柄紹介

日本の非労働力人口

 厚生労働省がまとめる2016年の労働力調査によると、年平均の非労働力人口は4418万人であり、そのうち,就業希望者は380万だそうです。日本人の2.5人に1人は働いていないというのにびっくりですが、これは高齢化が主な理由です。
 この就業希望者380万人の比率が示されていました。


 
この表で目を引くのが女性の35〜44歳の就職希望者で、77万人だそうです。25歳からも含めると100万人を超えます。これらの人達の多くは子育てがひと段落し、自分も働きに出ようと考えだした方々ではないかと推測されます。

 この就職希望者というのは、「現在就業を希望しているものの、就職活動をしていない者」、と調査結果にありましたので、育休制度などで会社に戻ることが約束されている人ではないと想像されます。

 安倍内閣は女性の活躍を強く押し出し、資格取得の支援等のサポートを政策とするとしていますが、本当にこれらの女性の全てが高いスキルを得て正社員としてバリバリ働きたいと思っているのかに疑問を持ちます。子育てを理由に離職した人も親の介護等が理由の人も同じく、今もそれに解放された訳ではなく、仕事はしたいけど、家のことを優先しつつ働きたいという人達が多いのではないでしょうか。実際僕の周りにいる人達の多くはそう考えています。家庭の仕事は男性が思うほど簡単なものではなく、資格取得一つとっても勉強の時間もそうそう取れるものではないと思います。そして、非難されそうですが、普通の人が片手間にとれるような資格やスキルで、現職の人と同等以上の実務能力を得られるということはほぼありません。逆にそれを認めるなら働き続けている人に失礼です。

 この100万人以上の働きたい女性に対してどれくらいが上の理屈に当てはまるかは分かりませんが、かなりの人が自由度の高い働き方を望んでいると、僕は思いました。特にこの女性の労働力という点においては、企業と雇用者お互いの条件をマッチングする人材派遣会社はこれからも存在感を増してくると思います。 

働き方改革に対する実感

 働き方改革は間違いなく進んでいます。
 僕の会社でも一斉定時退社日の設定など、残業を規制する動きが出ています。これは良いことだと思います。これによりダラダラと会社に残るということが許されなくなり、残業代の抑制にも繋がっています。

 ただ一方で、間違いなく仕事をする時間が減っているのにもかかわらず、求められるアウトプットは変わらないというのが現状の働き方改革です。若手社員は限られた時間でベストエフォートの成果を出すことに専念すればよいですが、企業としてベストエフォートの結果ダメでしたじゃ立ち行きません。じゃあこれをどこで吸収しているかというと、一部の極めて優秀な社員の頑張りです。最近僕はドラマ「陸王」を見ていますが、役所広司さんが演じる足袋屋の社長や寺尾聰さん演じるエンジニアのように昼夜を問わず仕事に没頭する人達がいて、働き方改革とは真逆なその姿に感動される方も多いと思います。ですがこれら優秀な社員が、会社の人事部などから「悪」として目をつけられはじめた、これが僕の会社を含め多くの企業の現状ではないかと思います。これも非難されそうですが、会社を本当に支えているのはこういう一握りの人達です。働き方改革を早く帰る言い訳にして、飲み屋で会社の愚痴をこぼしている人達100人よりこれらの人達を大切にすべきだと僕は思います。この人達への処遇を間違えると、その会社は大切な人材を失うことになります。

 僕は働き方改革のファーストステップとして、今まで忙しいフリをしていた人達から、本当に会社にとって大切な人が炙り出されつつあると見ることができ、この意味で働き方改革の成果は大きいと思います。
 
 働き方改革は精神論ではありません。意識の変化だけで仕事の能率が急激に上がることはあり得ません。1つ仕事を追加するのであれば、2つ仕事を抜くか人を足す、これが働き方改革の基本だと思いますがこれをできている会社はまだ少ないです。企業としては人を足すのはコスト増加だし、仕事を減らすのは売り上げ減少になるため、どちらも許容したくないからです。結果、ますます優秀な社員にしわ寄せが行っています。
 きっとこういうことは多くの会社で日常茶飯事であり、若く優秀な人ほど転職という結論に至ってしまうんじゃないかと思い、転職業界は今後さらに活発化するように思います。 

 僕は多くの企業が変革するのにはまだまだ時間がかかると思っています。会社の経営者や役員になる人達の多くは、上でいう極めて優秀な社員であり、昼夜問わず仕事に人生を捧げることを良しとしてきた人達だからです。逆にいち早く変革を果たした企業は、転職市場で優秀な社員を獲得することができると思います。

僕がチェックしている人材サービス会社

 前置きが長くなりましたが、僕が人材サービス業界で注目している会社です。
 この業界も競争が激しくなってきています。差別化を打ち出していかなければ淘汰が進んでいくと思います。

リクルート

 皆さんご存知のリクルート。就職活動でリクナビにお世話になった方は多いと思います。リクナビ以外にも転職のリクナビNEXTやリクルートエージェンシも展開しています。業界でも圧倒的な売り上げ高です。リクルートについては僕の恥ずかしい投資結果を以前書いています。

パーソルホールディング

 テンプホールディングが2013年にインテリジェンスを買収し、今年社名をパーソルホールディングに変更しました。両社の合併により、リクルートに次ぐ業界2位の規模となりました。
 テンプは派遣のテンプスタッフで有名ですし、インテリジェンスはDODAという転職サービスを持っていました。どちらもサービス名は今も変わっていません。派遣会社と転職会社のお見合い結婚により、人材サービス市場におけるさらなる相乗効果を狙っているのは素人にも分かりますし、戦略に期待したいところです。

アウトソーシング

 製造業向けの派遣工員に他社に無い強みがあります。
 一時期ひふみ投信が同社の株をかなり多く持っていたことで話題となった記憶があります。もちろん同社のサービスは製造業だけではありませんが、専門的な分野で確固たる地位を築くというのは大手と差別化を図るよい手段と思います。

メイテック

 メイテックはエンジニアの派遣が主です。僕の勤める会社にもいらっしゃいました。
 電気機器の回路設計やS/W設計など、メーカにかかせない上流設計をできる技術者を提供するというところを強みに、アウトソーシングと同じく差別化されています。最新の技術を学ぶ必要があるため社内教育も活発だと聞きました。

エンジャパン

 最近CMでよく見かけます。エン転職やエンバイトなどを展開しています。
 規模としてはリクルートやパーソルには遠く及びませんが、700万人を超える会員数ということで、知名度はかなり高いです。

JACリクルート

 上記に比べると有名ではありませんが、「専門性が高いポジション」「ミドルマネージメントからエグゼクティブポジション」「グローバル関連のポジション」という同社のHPの引用から分かるとおり、グローバルかつハイスキルな人材にターゲットを絞った事業展開をしています。規模はまだ大きくないですが、個人的には期待しています。

人材サービス業界の株価動向

 2017年11月現在、ちょっと買い足すには過熱感があるなぁ、という状況です。
 僕が持っているパーソルホールディング(元テンプ)の株価動向です。僕はこれの他にJACリクルートを買っています。

 この1年で1.5倍以上になっています。僕の様々なダメトレードの肩代わりをしてくれているありがたい銘柄です。
 他の人材サービスも同じような株価推移をしており、買い足すには勇気がいる状況ですが、僕はタイミングを見て上のどれかを買い足そうと思っています。

まとめ

 今日は働き方改革の恩恵を受けそうな銘柄として、人材サービスについて書きました。人材サービスはECほどではありませんが、手数料ビジネスという見方もでき、収益性は高い業種だと思っています。
 ただ、競争が激しくなっているのでサービスの差別化というところに特に注意して投資先を考えていきたいと思います。