先日はじめて飛田新地を観光してきました。鯛よし百番をはじめとする歴史的な建造物が数多く残っている同地域は、日本最大級の元遊郭として有名です。僕はディープスポットを巡るのが好きで、少し歴史を勉強して過去に思いを馳せつつ、現在の街を歩くというのが数少ない趣味のひとつです。昼と夜の両方歩きましたが、夜の異世界感には圧倒されました。
大阪には昔の遊郭の名残を残す5大新地と呼ばれる地域があり、その中でも飛田新地(旧飛田遊郭)は日本最大級の”ちょんの間”として有名です。
僕は現在転勤で大阪に住んでいるのですが、大阪にいるうちに一度は飛田新地をのぞいて見たいと思っていて、ようやく実行しました。
かねて興味はあったものの、やはり立地が西成区という響きに気圧され、治安は大丈夫か?と、あと伸ばしにしていました。
昼に散策して道を覚えてから、夜に安全なルートを辿って雰囲気を楽しもうという二段構えをとりました(笑)。
実際にお店に入ったわけではないので、体験談的な話はできませんが、事前に調べた歴史や飛田の現在を観光した感想などを思い出としてこのブログに書き留めておこうと思います。
僕が実際に歩いた道を写真や地図でご紹介するので、初めて行く方の参考にはなると思います。
ちなみに大阪の夜のディープスポットの代表格、アポロビルも面白かったです。興味がある方の参考まで。
目次
飛田新地(旧飛田遊郭)とは
飛田新地は1918年(大正5年)に生まれた飛田遊廓から、実に100年の歴史があります。
ここがどういう場所かというのは改めて僕が説明するまでもないでしょう。
通称“ちょんの間”と呼ばれる営業スタイルですね。
第一次世界大戦後には好景気で賑わい、実に200件以上の妓楼が軒を連ねていたと言われています。
阿部定事件で有名な阿部定もこの頃飛田で働いていたそうです。
第二次世界大戦後、GHQによる公娼制度の廃止要求に伴い、遊郭(貸座敷)としての歴史を閉じ、以降いわゆる赤線、青線などと呼ばれるようになりました。
その後、1958年の売春防止法の設立後は、全てのお店が「飛田新地料理組合」を中心とする「飲食店」に業態を変えていますが、今現在までその実態は変わっていません。
飲食店でたまたま出会った男女が恋に落ちる、自由恋愛ということになるのでしょう。
面白い屁理屈ですね。
これをグレーゾーンではなく真っ黒だ、違法だ、という論調もありますね。
ただこれは、そこでことがいたされているのが確定しているという前提にたったもので、そもそも料理組合やお店の経営者は中でのことを知らない、関与していないのであれば、前提が成立しない、ゆえにグレーであるという見方もできます。
暗黙知は公知の事実ではないのです。
こういうロジックを考えるのって面白いですよね。
元大阪府知事で有名な方が飛田料理組合の顧問弁護士時代に、料理組合自体は違法ではない、と発言されたこともあるそうです。
パチンコとの換金問題と同じくよく議論されるネタですが、本音と建前が交錯しつつグレーゾーンとしてなんとなく受け入れてるのが日本らしくて面白いです。
飛田について書かれた本は多くありますが、その中でも一番有名なのが「さいごの色街 飛田」ですね。
著者の12年間に渡る取材の集大成は傑作ルポと評判です。
より詳しく飛田の歴史や実態を知りたいと思った方におすすめの書籍です。
吉原との違い
小ネタを続けますが、飛田新地とよく比較されるのは、ソープで有名な「吉原」ですね。
東の吉原、西の飛田、といった感じですが、実は業態は異なります。
吉原は風適法に定める「浴場業」ですが、飛田は上のとおり「飲食店」です。
お上のお目溢しを受けて営業を続けている、実態を黙認されているという点では同じです。
飛田新地の治安は?安全か?
飛田新地は大阪は西成区の中でも、日本最大級の「ドヤ街」として有名なあるあいりん地区に隣接しています。
「ドヤ街」の語源は「宿」だそうで、日雇い労働者が多数いることからこのように呼ばれています。
飛田の治安は大丈夫かな、と正直ビビっていたのですが、昼夜ともすごく安全な感じがしました。
昼に歩いた時はゴミひとつ落ちていませんでしたし、夜は若いサラリーマン風も多い印象でしたね。
想像していたような場末感というか、危ない感じはしませんでした。
酔っ払いやヤ○ザ風な人に絡まれるような恐れもなさそうです。
そういえば飛田新地はいっさい暴力団関係とつながりがないそうですね。
その代わり警察とは深い付き合いがあるのでしょう。
結構な頻度でパトカーが巡回していたので、喧嘩沙汰なんかおこすと一瞬でしょっぴかれますね。
近年は外国の方にも観光地化していると言われていますし、イメージを悪くしないよう飛田料理組合を中心にかなりきっちり町が管理されてる印象でした。
飛田新地の営業時間、料金は?
飛田新地の営業時間は10時から24時です。
クラブやバーのように深夜は営業していません。
また、実際は10時から営業している料亭は少ないようです。
やっぱりお客さんが増えるのは夜ですから、中居さんの出勤時間もそれに合わせているようです。
最近はコロナによる緊急事態宣言や蔓延防止(マンボウ)で時短してたり、営業を休止しているところも多いですね。
料金は料亭による金額差はなく、一律20分16,000円がメインですね。
料亭に入るまで分からないので、ここは下調べが大切です。
15分で11,000円、30分で21,000円と、5分あたり5,000前後するのが相場感です。
僕は入ったことないですが、噂ではメニューはなく、料理はアメちゃんしか出てこないそうですね。相当高級な飴なのでしょう。
ちなみに常連であろうと値切りにはいっさい応じないそうです。
飛田新地の行き方
飛田新地周辺をすごく簡略化したらこんな感じの地図になります。
2つの商店街と阪神高速14号線に囲まれた地域が飛田新地の場所です。
この図は我ながらすごく端的に表現できたと思いますね。
ここから実際に飛田新地への行き方や街の様子を写真等を使ってわかりやすくお伝えします。
ちなみに昼夜の写真が混ざってるのは冒頭のとおり2回行ったためです。
動物園前駅からのアクセス
飛田新地への最寄りは地下鉄御堂筋線の「動物園前駅」からのアクセスが有名ですね。
ここからすぐ近くにミナミの象徴、通天閣がありますし、新世界といったティープスポットも近いです。
新世界は激安の串カツのお店が多いことで有名です。
飛田新地へは、動物園前駅からみて通天閣や天王寺動物園とは逆側の2番出口が近いです。
地上に出ると目の前に動物園前商店街が見えます。
商店街は昼から営業してるスナックとか、どこからともなく漂う香ばしい匂いとか、なんとなく昭和の感じがしました。
少し歩くと西成区発祥の関西が誇る激安スーパー「玉出」もあります。
この商店街のアーケードを抜けたところから左にのびるのが「大門通り」です。
このすぐわきに「大門跡」があります。
大門跡といっても、今は説明板が残るのみとなっています。
大門通り
この大門通りを進み、阪神高速をくぐれば飛田新地の中心地に到着です。
今このブログ記事のために写真を改めて整理してみたらこんなとこにコインシャワーがあったんですね。
歩いている時はまったく気付きませんでした。
また、この道を少し歩くと公衆トイレもあります。
飛田新地にトイレは多分ここにしかないと思います。
大門通りは飛田新地の準備エリア的な役割を果たしているのかなと思いました。
もう少し行くとたこ焼き屋さんがあります。
仲間と連れ立って飛田に来た人たちの集合場所みたいな感じですね。
このたこ焼き屋さんの裏に駐車場があります。
ここ以外にも駐車場はけっこうあったので車でのアクセスもよさそうです。
天王寺駅、阿倍野駅からのアクセス
続いて「天王寺駅」、「阿倍野駅」からの行き方です。
こちらは飛田新地の東側からのアクセスですが、新開筋商店街が目印ですね。
振り向けば大阪の新シンボルである「あべのハルカス」がそびえます。
両極端な地域がこんなに近かったのかと驚くとともに、少し複雑な気持ちになりますね。
新開筋商店街も動物園前商店街と似た空気を感じます。
商店街を少し歩くと「北門」があり、ここを曲がったところに「飛田新地料理組合」があります。
飛田新地料理組合は先のとおり売春防止法が成立したのち設立され、飛田新地にあるすべての「料亭」を束ねています。
コロナ禍では全店休業の音頭をとるなど、その役割と影響力は大きいですね。
ヤ○ザとはいっさい関わりがないらしく、その代わり警察をバックにつけています。
いろいろ複雑な構造がありそうですが、僕ら一般庶民にはあずかり知らないところです。
そして、この料理組合の奥が、目的地である飛田新地です。
飛田新地には「メイン通り」「青春通り」「妖怪通り」などと道で名前が付けられています。
それぞれ歩いてきました。
メイン通り
さて飛田新地の中を散策していきます。
また下見のときの昼の写真に戻りますが、まずは「メイン通り」を歩いてきました。
実はこの日はコロナによる休業最終日でした。
昼から営業しているお店もあるみたいなので、写真とかとるなら今日しかないと思い立ったのが観光してみようと思ったきっかけでもあります。
嘆きの壁
メイン通りの突き当たりに時計台があり、エリア外と壁で仕切られています。
この壁が「嘆きの壁」と呼ばれています。
その昔、遊女が逃げないようにと立てられたそうですが、今は国道との境になっています。
灰皿があったので、タバコを吸いながら壁の奥に見える高層マンション群を見ていると、嘆きの壁と名付けられたのは遥か昔でしょうが、なんとも言えない気持ちになりました。
後日、コロナ明けてから遠巻きにスマホで撮影したものです。もちろんお店の前で撮影は禁止です。
「メイン通り」はその名の通り飛田新地の看板で、両脇にずらっと並んだ料亭が圧巻です。
昼と夜とのギャップ、この異世界感はすごいですね。
一往復してみましたが、「やり手ばばあ」と呼ばれる客引きのおばちゃんの飛び交う掛け声、テンション高いサラリーマングループの熱気、ニコニコと笑顔で手を振る女の子、本当にここは日本なのかと思いました。
「お兄ちゃん、こっちこっち!、見てや〜、こんなかわいい子おらんで!」
というおばちゃんの声に顔を伏せながら、、僕の目ん玉はこれでもかって横に張り付いてましたね。
雰囲気に気圧されてまともに見れませんでしたが、本当にかわいい子が多かった印象です。
青春通り
メイン通りのお隣が青春通りです。
グーグルマップで拡大すると「青春通り」とでてくるので、一般的に認知された呼び名なんですね。
建物の外観はきれいですが、よく見ると昭和初期くらいの建築物ですね。
いろんな法律の制約があるのでしょう、ここに限らず新しい宿を作るのはもちろん、建て替えも禁止されているそうです。
夜の様子を嘆きの壁の上から見るとこんな感じです。
青春通りは20代前半の若くてかわいい女性が多いと評判です。
たまたまかもしれませんが、コスプレの子が多かったですね。
妖怪通り
飛田新地は「メイン通り」「青春通り」のほかに「妖怪通り」と呼ばれるエリアがあります。
地図のとおり、阪神高速のカーブの外側にあたります。
ここは昼しか歩いてないのですが、熟女系の女性、といっても30代、40代のきれいな女性が多いそうです。
大阪のノリといえ、妖怪通りはちょっとひどい名付け方だな、というのが個人的な感想です。
鯛よし百番
飛田新地の観光最後ですが、「鯛よし百番」は100年以上の歴史があります。
鯛よし百番は老舗料亭で、飛田新地で唯一、普通のご飯屋さんです(笑)。
戦禍を免れ、未だに大正時代の趣を残しているとされている同店は、歴史的建築物として2000年に登録有形文化財に登録されました。
ただ、経年劣化による傷みが激しく、修復のためにクラウドファンディングを募っていたようです。
僕が行った日はコロナで営業停止していましたが、ここはいつか入ってみたいです。
飛田新地を観光した感想とまとめ
今日は飛田新地を散策してみたので、歴史や背景など交えつつ、歩いてみた感想をお伝えしました。
本当に昼夜のギャップがすごかったですね。
コロナ休業中だったとはいえ、昼は誰もいないゴーストタウンのようでありながらゴミひとつ落ちてなくて、ここだけ下界からバリアで区切られるかのような印象でした。
夜は一転して上のとおりで、異世界に迷い込んだかのような感じがしました。
お店には入ってないので中の様子はお伝えできませんが、最後にその他調べたことや思ったことをお伝えします。
飛田新地はなぜ潰されない?
近年とくに性産業への市民の目は厳しく、グレーゾーンとなっている新地にもメスが入りはじめています。
記憶に新しいところでは、兵庫県の尼崎にあった「かんなみ新地」が2020年11月に警察から警告書が出され一斉廃業、70年の歴史に幕を閉じました。
このニュースは、地上波では当然スルーされましたが、ネットでは大きく取り上げられましたね。
今まで黙認されてたのに急になぜ?という疑問が出ていましたが、かんなみ新地は新型コロナの緊急事態宣言下も営業を続けていたそうなので、直接的な原因はこれでしょう。
今までお上のお目溢しを受けていましたが、さすがにもう市民感情を抑えられないと判断して大きな力が動いたんじゃないかなと想像します。
飛田新地は新型コロナ感染症の際の対応は素早く、一斉に休業したのが良かったですね。
また、過去には京都の七条新地として栄えた色街の五条楽園も2010年に京都府警の一斉摘発を受け、お茶屋と置屋の経営者が逮捕、2011年の3月に解散しています。
何かのきっかけに飛田新地もいつ無くなるか分からないので、異世界の雰囲気を実際に目にできるのも今だけかもしれません。
冷やかしや観光で来るような場所じゃない
最後に、やっぱり飛田新地は観光で来るような場所じゃないですね。
自分が歩いといて何言ってんだって感じですが、冷やかしは感じ悪いですもんね。
好奇心に負けてしまいましたが、僕はもう二度とここを訪れることはないでしょう。
興味がある方も観光は一度だけにしておくことをおすすめします。
あと最後に、女性同士やカップルで来るのは絶対ダメです。
女性が歩いてるとお店のおばちゃんから罵声が飛ぶとも言われていますし、それ以上に、周りは男性ばかりなので変な目で見られることに耐えられないと思います。
大阪の夜系ディープスポットといえばアポロビルも有名ですね。
こちらもいってみましたが、同じく女人禁制ですね。
その他の5大新地
大阪にはこの「飛田新地」をはじめとし、5大新地と呼ばれるエリアがあります。
参考までにその他の4新地それぞれの場所をお伝えします。
・松島新地
松島新地は九条駅のすぐ近くです。
大阪からのアクセスは飛田新地と同じくらい良いですね。
飛田新地に次ぐ規模の新地として有名です。
・信太山新地
信太山新地は信太山駅が最寄りです。
けっこう南の方にあるので、大阪からだと1時間くらいかかりますね。
10代から30代の若い中居さんが多いと評判だそうです。
・今里新地
今里新地はグーグルマップで直ででなかったので、近くのタイムズの場所です。
今里駅は複数ありますが、近鉄の今里駅が最寄りのようです。
よく場所が分からんと迷う人が多いと言われているので注意してください。
・滝井新地
滝井新地は料亭が少なく10軒もなく、大阪の新地の中でも最も規模が小さいそうです。
ネットで調べた限りでは、中居さんの年齢層も他と比べて高めとのことでした。