「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズで有名なニトリホールディングス(9843)は家具・インテリア販売で国内最大の企業です。業績も右肩上がりなのですが、2018年以降株価が下落傾向にあります。ニトリ株にはかねてから興味があったので今日は同業他社のイケアや大塚家具などと比較、分析し、今後の方向性を予想してみたいと思います。
ニトリホールディングス(9843)「以下、ニトリ」は家具小売最大手のニトリを中核とした持ち株会社です。
他にもホームセンターの「デコホーム」もグループ会社で、グループ全体として国内500店舗以上、海外約70店舗を展開しています。
もちろん国内最大の同社ですが、現会長の似鳥昭雄氏が一代で築き上げたというから驚きです。
目次
ニトリの直近株価動向
さっそくですが、まずはニトリの過去2年の株価推移です。
2018年には2万円の大台にタッチしそうになりましたが、そこから急落、2019年は一時1万2千円台まで下がっています。
後述するとおりニトリの業績は拡大し続けており、なぜこんなに株価が下がるのか納得いかないホルダーも多いと思います。
米中貿易摩擦の影響による日本企業への業績懸念で日本株全体が大きく下落している中においてもちょっと下がり過ぎじゃないかと僕も思います。
これは逆に押し目買いのチャンスでは、と同社の決算情報や業界動向などを整理してみました。
ニトリの売上高、営業利益
2018年度決算資料からニトリの売上、利益などを見て行きます。
比較のため、イケア・ジャパンと大塚家具(8186)を併記します。なお、イケアは非上場企業のため、官報に掲載された数字をもってきました。
単位(億円) | ニトリ | IKEAジャパン | 大塚家具 |
売上高 | 6,081 | 840 | 374 |
営業利益 | 1,001 | ▲9.6 | ▲51 |
純利益 | 681 | ▲30 | ▲32 |
僕が思っていた以上に差があるのですね。
ニトリは前期売上高6千億円を突破し、営業利益も1千億円の大台に乗りました。
ニトリは32期連続増収増益
ニトリは実に1987年以降32期連続の増収増益を達成しています。僕の知る限りこんな会社は他にありません。
過去の業績をマネックスから引用します。きれいな右肩上がりです。
利益率が非常に高いのも特徴です。
同社は海外に生産拠点をもうけ、自社で材料調達から販売まで一気通貫したビジネスを展開しています。
余計なマージンが入らない分コスト競争力が高く、安く売っても利益が出るビジネスモデルを構築しています。
このペースで行けば、同社の2032年の中期ビジョンである「3千店舗、売上高3兆円」も夢物語ではないように感じます。
イケア・大塚家具は厳しい状況
一方のイケアと大塚家具は上のとおり赤字状態で非常に苦戦しています。
イケアは日本での売上が思うように伸びない状況に対し、数年前に大幅な価格改定を行いました。
低価格化による規模の経済性を得る狙いと思いますが、たしかに売上高は増加するものの、利益がついてこず、2期連続の赤字となっています。ネット通販事業で出遅れてるのも痛いですね。
ただ、消費者からすると高級イメージだったIKEA商品がお値頃になってきたと見ることもできます。
お家騒動がゴシップ的に扱われている大塚家具はもっと深刻です。
3期連続赤字です。今期は黒字回復の見込みとしていますが、達成できるかは非常に怪しいです。
大塚家具は大型・高級指向ですが、両方時代にマッチしていませんね。
バブル崩壊後財布の紐がきつくなり、近年は核家族化も進み大型家具に対する需要も減少する中、家具市場は1991年の3兆円規模をピークに現在は1/3強にまで縮小していると言われています。
一例ですがこれらの外部環境への対応が遅れており、今なお方向性を見いだせていません。
ニトリと比較すると、経営戦略、事業戦略が会社の明暗を分けたといって良いでしょう。
ニトリの財務諸表
上のとおりニトリは売上、利益とも拡大していますが、続いて財務状態を確認していきます。
実はものすごい借金があったりしたら怖いですからね。
【財務状況】<2019.2> 百万円 | |
総資産 | 619,286 |
自己資本比率 | 80.70% |
有利子負債 | 8,667 |
見てのとおり問題ありません。
自己資本比率が高く健全
一般に40%以上あれば健全といわれる自己資本比率ですが、驚異の80%です。
有利子負債も少なく、多少売上げが落ちようともすぐに経営が行き詰まるなんてことはありません。
これだけ事業が順調なら銀行もいくらでもお金を貸してくれそうなものですが、レバレッジを効かせることをせず、着実に積み上げた利益から開発投資や新店舗を出店しています。
テレビなどで見かける似鳥会長の豪快なイメージに反し、とても堅実な企業だと言えるでしょう。
ニトリのファンダメンタルズ分析
続いて株の購入を検討する際によく見られるファンダメンタル指標類を整理します。
ファンダメンタル指標 | |
EPS | 608円 |
PER | 23.6倍 |
PBR | 3.2倍 |
ROE | 14.5% |
ROEが優秀
ROE(自己資本利益率)は、いかに株主の資金を効果的に利益に繋げられているかを見る指標で、一般的に10%を超えると優秀とされています。
日本企業全体の平均は5%ちょっととされていますので、非常に優秀な値です。
割安さはない
一方でPER、PBRの数字から割安ではないと見ることができます。
現在の株価をEPS(1株当たり利益)で割って算出されるPERですが、日本企業の平均は15倍前後とされ、低いほど割安であるとされます。
とはいえ高すぎるというほどでもなく、成長過程の企業は多少PERが高くても問題ない、と見ることもできるため、ニトリの業績を考えると問題ないレベルと考えます。
逆にPER、PBRが低すぎるのは、企業の成長性に疑問が持たれているということです。銀行株なんか軒並み割安ですが、株価に復調の兆しはありません。
ニトリの配当金、株主優待
株式投資の楽しみのひとつである配当金と株主優待についてです。
配当金 | 97円 | 利回り換算0.7% |
株主優待 | 10%割引券5枚 |
1枚につき上限10万円
|
これはイマイチですね。
配当狙い、優待狙いの銘柄ではない
配当金は多くない部類です。今の株価であればざっくり150万の投資に対し、年1万円もらえるという計算です。
株主優待も、同社製品の10%割引券5枚ということで、フルに活用したら5万円相当です。ただ、毎年ニトリで50万円分の商品を買う人はいないでしょうから、これも投資額に対してはちょっと魅力が低いですね。
配当狙い、優待狙いの銘柄ではなく、株価の上昇によるキャピタルゲインをもって株主の期待に応える銘柄とみることができます。
ニトリの強さと成長性
ここまでニトリの決算資料をもとに業績などを整理してみましたが、売上、利益とも右肩上がりで財務も健全と、非常に魅力的な銘柄に思いました。
株を買うなら現在だけでなく将来にわたって成長できるかが重要なので、最後に素人ながらに今後のニトリの事業のポイントについて考えてみました。
狙うはイケアの世界市場
上のとおり国内ではイケアに圧勝しているニトリですが、世界規模の売上げでみるとイケアの足元にも及びません。
イケアの世界売上げは実に5兆円規模です。
逆に言えば世界にはまだこれだけの市場拡大余地があるということです。
国内市場の劇的な伸びは期待できず、同業他社の売上の概算を下表にまとめましたが、これらを駆逐し独占できたとしても知れています。
(億円) | ナフコ(2790) | 島忠(8184) | 良品計画(7453) |
売上高 | 500 | 400 | 400 |
※ナフコ、良品計画(無印良品)は家具のみ抽出。
国内売上もまだ伸びていますが、これからはやはりグローバル展開が鍵となりそうです。
同社のIR資料をみると中国市場を狙っているようで、世界展開の成功可否が今後の同社の業績、株価に強く影響を与えるでしょう。
ネット販売の強化
ニトリは公式通販サイトNITORI-Netでネット通販を展開していますが、2019年現在英語対応はしていません。
欧米では家具もネット通販が主流になりつつあり、英国では50%以上がネット購入だというデータも目にしました。
海外展開は同社の規模にしては慎重に進めている印象のニトリですが、店舗はショールームのみとして固定費を抑制し、購入はネットでどうぞ、とするのもありかもしれません。
時代に合った商品開発
ニトリの強みは商品開発力です。
消費者の目が厳しくなっている中、その時代時代のニーズに合った商品を開発し、ヒットを飛ばし続けています。
・Nクールシリーズ | ・COLOBO |
Nクールシリーズは累計4,000万近い販売を記録しているそうですし、代表作であるカラーボックスのCOLOBOはどこの家でも目にしますね。
日経新聞のイメージ調査でも商品開発力の強い会社でトップ5に入っており、商品開発力に定評があります。
まとめ
今日はニトリ(9843)の業績をイケア、大塚家具と比較し、今後の展望などを考えてみました。
現状の業績は絶好調、将来事業の拡大に対しても有望で、調べてみて僕はかなり買いたい銘柄だと思いました。
特に2019年現在の株価は売られ過ぎのように感じます。
最後に10年の株価推移を引用しますが、長期スパンでみるとなんというか、ちょうど良いくらいなタイミングに見えませんか?
業績は絶好調ですし、海外展開にも期待できますので、凹んだ分くらいは戻ってきてもおかしくはない気がします。
ただいかんせん単価が高いので迷っています。僕は株を買ったら中長期で保有するので、150万もの資金を1銘柄に拘束されるのは、僕のような普通のサラリーマンにはリスクが高いです。
また、同社の業績は問題なくても、景気悪化などによる日本全体の見通しが暗くなると、日本の株式市場が一括りに売り込まれるという性質があります。
こうやって悩んでいるうちにまたタイミングを逃していくのでしょうね。