千円カットで有名なQBハウスの株価は今後どうなる?|値上げで利益押し上げも気になる「のれん」と「借入金」の大きさ

千円カットで有名なQBハウスはキュービーネットホールディングス(6571)として東証1部に上場しています。フランチャイズで店舗数を拡大し続け、現在国内外で671店舗(内海外119店舗)を構えるほどに成長しています。今日はそんなQBハウスの業績を確認し、今後の株価の行方を予想してみたいと思います。

QBハウスは本当に至るところで見かけるようになりました。主要な駅の近くやイオンといった商業施設などの好立地に多く出店している印象です。

QBハウスを展開するキュービーネットホールディングス(6571)は2018年3月に東証1部へ上場しました。

新規上場はマザーズやJASDAQが多いのですが、いきなり東証1部はすごいですね。

なお、IPOは公募価格を上回るケースが多いのですが、同社の初値は2,115円ということで、公募価格の2,250円を割っていますね。

投資家にとって懸念材料があったのでしょうか。そのあたりは後ほど分析します。

理美容業界を取り巻く環境とQBハウス

同社の業績を確認する前に、理美容業界を取り巻く環境を分析してみたいと思います。

遠回りなようですが、決算や財務諸表の数字以外に気付きがあるかもしれないからです。

理容所と美容所の店舗数

厚生労働省によると、美容院は増加する一方で、理容所は年々減少しているとのことです。

出典:厚生労働省HP

先日たまたまテレビを見ていて驚きましたが、美容院の数はコンビニより多いそうです。

統計では、ここ10年間で 理容所は 10,164減少、美容所は 22,823増加しているそうです。

最近はTVなどでたびたびカリスマ美容師が取り上げられたりしますが、この状況を見ると改めて、よほどの勝算がなければ参入するべき業界ではないと思いますね。

美容師にあこがれていつかは自分の店舗を持つ、若者が描きがちな夢ですが、それは間違いなくいばらの道となるでしょう。

QBハウスは格安カットを売りにしているので、美容院とは競合せず、ライバルは理容所(床屋)となります。

床屋の店舗数がゆるやかに減少していく中、同社はすごい勢いで出店数を増やしています。

出典:QBハウス決算資料

国内だけでも500店舗を超えています。

詳しくは後ほど書きますが、売上げも店舗拡大についてきています。

美容院ではなく、普段床屋を利用する客層をターゲットにした、というのが同社が成功した理由の1つでしょう。

また同社は海外展開にも積極的です。独自技術などで差別化が困難な散髪で海外進出はなかなかにアグレッシブな経営だと思います。

QBハウスのカット価格は価格破壊そのもの

QBハウスといえば千円カットです。2019年2月にカット料金を1,200円に値上げしましたが、客離れは起きておらず、値上げはストレートに利益に効いています。業績は後ほど詳しく分析します。

少しソースが古いですが、厚生労働省の調べによると、理容所・美容所の平均単価は下図のとおり4,000円近く、いかに同社の価格が安いかが分かるでしょう。

QBハウスは10分で仕上げるカット専門店であるということを差し引いても激安です。

客層をみても、髪型なんか特にこだわりがないというサラリーマンや年配の男性のニーズを掴んでいることが分かります。

理容師数の減少と高齢化は同社を後押し?

理容業界の高齢化が著しいことは広く知られています。

同社IR資料からの引用ですが、全国の理容所の実に80%以上の経営者が50歳以上ということです。

理容所は個人経営がほとんどですので、経営者=理容師でしょう。また、別の調べによると後継ぎが決まっていない理容室が70%以上だそうです。

理容店は今後も廃業が見込まれますが、安く散髪したいニーズは間違いなく残り、同社はこのニーズを今後も刈り取っていくでしょう。

当初僕は、人口が減少し続けるなか理容業界に未来はないと考えていましたが、浅はかな考えだったと思い知りました。

理容、美容師の給料はかなり低い

業界としてかなり給料が安いことで有名です。

離職率の高さもかなり高く、3人に1人は1年以内に離職するというデータもあります。

この業界の一番の問題点ですね。QBハウスは東証1部上場企業、すなわち大企業ですから、給料面でも業界をリードしなければならない立場にあります。

同社は2019年中に値上げによる利益を従業員の給料アップに充てるとしています。

投資家目線では利益が減るというマイナス要因ですが、こういった問題を吸収しつつ成長しなければ、一流企業の仲間入りは果たせない、ということです。

QBハウスの業績確認

それでは本題の同社の業績を確認していきます。

同社は1995年に創業しており、2018年に満を持して東証1部上場ということですが、その業績はずっと拡大し続けています

決算の確認

昨年度の決算資料と前年度比を整理したのが下の表です。

単位(百万円) 2018年 昨年度比
店舗数 671 10店舗増加
売上高 19,287 7.32%
経常利益 1,560 10.09%
純利益 1,041 1.76%

冒頭のとおり出店攻勢で、すでに国内外合わせて700店舗近く展開しています。

売上げ高、利益ともそれにしっかりついてきており、順調に伸びています。

世間で近年成功した数少ない企業の1つだと扱われるのも納得です。

株主優待・配当利回り

投資対象としてみたときに株主優待や配当利回りは無視できません。

美容室などはクーポン券だらけですので、同社も似たようなものが設定されているのかなと思いましたが、意外に株主優待はありません。

配当金は設定されていますが、配当利回りは低い部類ですね。

QBハウスの財務分析

同社の決算説明資料などを確認したところ、売上げも拡大しており、海外展開も順調なように見えますが、僕が一番気になったのは同社の財務状況です。

単位(百万円)
総資産 23,855
自己資本 9,349
自己資本比率 39.20%
資本金 1,103
利益剰余金 3,373
有利子負債 11,727

自己資本比率は安定の目安である40%に近いのですが、いくつか気になることがありました。

大きすぎる「有利子負債」

一番気になったのが同社の有利子負債、すなわち借金の大きさです。

なんと100億円もあります。

事業拡大の原資として借入金があること自体は問題ないのですが、総資産の半分近い額というのは異常です。

さらに自己資本よりも借金の方が大きいという状態はとても健全とはいえません。

QBハウスといえばフランチャイズや規模のメリットによる導入コスト削減による出店拡大をしていると思っていたのですが、なぜこんな状況になっているのでしょう。

大きすぎる「のれん」

有利子負債の大きさが気になって同社の貸借対照表を確認したところ、またまた気になることがありました。

「のれん」の大きさです。

のれんとは企業を買収したり合併する際に発生するもので、無形資産となります。

難しいことは僕にも分かりませんが、不動産のように売ったり買ったりすることはできない資産であるのれんで総資産のほとんどを占めているという資産構成はあまり見たことがありません。

同社の上場は投資ファンド主導によるもので、上場するまでにいろいろすったもんだあったようで、その結果がのれんと有利子負債の大きさに繋がっています。

このあたりがIPOで株価が公開価格を下回った原因だと思われます。

QBハウスの株価と今後を予想

QBハウスの上場来の株価推移です。

株価には方向感がありませんね。

今後を予想

あくまで個人的見解ですが、僕はQBハウスの株価は今後もそれほど上がらないだろうと見ています。

近年めずらしく成長著しい企業だとニュースなどでも取り上げられていますが、僕には利益が伸びる未来が見えないからです。

付加価値による差別化ではなく、徹底的な低価格化によるシェア拡大方針は、売上げを拡大し続けなければ利益は増えていきません。

拡大はひと段落というフェーズにみえますし、これからはさらに人件費の問題が大きくなってくるでしょう。

さらに売上げ規模に対して借入金が大きいですので、利息の支払いもキャッシュフローを圧迫するでしょう。

さらなる成長の鍵は海外展開の成功ですが、これも簡単ではないと見ています。特にアジア圏などの新興国では低価格なカットが当たり前だからです。

QBハウスの地に足のついた事業展開には好感を持ちますが、割安とも言えない水準の株を買うには懸念材料の方が目に付きますね。

今の半額(千円くらい)ならお試しで買ってもいいかな、とうレベルです。

まとめ

今日は成長著しい成功企業として扱われることが多いQBハウスの株価や業績などを分析してみました。

売上げ、利益ともに拡大している良い会社だと思う一方で、財務状況がとても気になりました。

大きすぎる「のれん」と「有利子負債」、これが特徴の企業に僕はライザップを思い浮かべます。

ライザップは(無謀な?)企業拡大、同社は地に足をつけた事業展開というイメージで、全く逆のスタイルなのですが、ライザップ(2928)が連日のストップ安でも書いたとおり、ライザップはそのうち倒産してもおかしくないと僕はみていますので、これと共通点を見出してしまった時点で僕は投資する気が失せてしまいました。