パチンコ・パチスロ関連銘柄|業界各社の株価と業績を比較、斜陽産業で起死回生の次の一手は?

今日はパチンコ・パチスロ関連銘柄の株価や業績を決算資料をもとに比較分析し、今後の業界の方向性や株価の行方などを予想してみたいと思います。この業界を取り巻く環境は非常に厳しく、各社生き残りをかけて新事業に取り組んでいます。

パチンコ・パチスロ業界の市場は年々減少の一途を辿り、日本生産性本部の「レジャー白書2017」によると国内のパチンコホールの売上げは21兆円程度でした。

10年前は30兆円規模でしたので、実に2/3に落ち込んでいます。

市場が縮小する中においては如何に企業が優れていても利益を出し続けるのは簡単ではありません。

このような長期低迷の中、パチンコ・パチスロ業界は斜陽産業と呼ばれて久しく、アナリストなどからは将来性が無いとたびたび評されている現状です。

直近の決算の内容を確認しつつ分析してみたいと思います。

比較するメーカー


このブログにもたびたび機種レビューを書いたりしているとおり、僕自身パチンコ・パチスロをたまに打ちます。

まずは今日比較する代表的な以下6社を、過去10年の株価推移とともにご紹介します。

セガサミーホールディングス(6460)

セガとサミーが統合した会社ですが、sammy系統がパチンコ・パチスロを開発しています。

サミーといえば「北斗の拳」シリーズが人気でホールの主力として活躍しています。僕はとことん相性が悪い機種です。

スロットは獣王シリーズが有名ですが、5号機以降パッとしない印象ですね。

株価は2013年に急騰しましたが、2014年に入って急落、以降上がったり下がったりで方向感がありません。

近年は統合型リゾート(IR)施設に力を入れています。

ユニバーサルエンターテイメント(6425)

旧アルゼです。

アルゼといえば「ミリオンGOD」「ドンちゃん」シリーズを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

「バジリスク」「まどマギ」など、スロットでは昔からヒットメーカーですね。

こちらも海外の高級カジノ関連企業へ出資していて、カジノ関連銘柄としても有名です。

株価は上下しながらも上昇傾向に見えますが、同社は特に統合型リゾート(IR)事業への投資に力を入れており、これの成否によって株価は今後大きく動くでしょう。

僕は今日比較する6社で一番ハイリスク・ハイリターンな銘柄だと思います。

平和(6412)

Heiwaのロゴが入ったパチンコ機はよく見ます。

「ルパン三世」シリーズや「アントニオ猪木」シリーズが有名ですね。

平和の台は特に波が荒い印象で、めっちゃ勝った記憶と同時に大負けした思い出が多いです。

平和はPGMを子会社化し、ゴルフ事業にも進出しています。

株価はこれもまた上がったり下がったりですが、10年スパンでみると2倍になっています。

パチンコだけでなく、ゴルフ事業も含む総合娯楽事業会社として今後の成長が問われます。

SANKYO(6417)

SANKYOは大手パチンコメーカーです。

「ビスティ」ブランドの「エヴァンゲリオン」シリーズや「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」などアニメとのタイアップ機種が強いですね。

後述しますフィールズ(2767)が主要な取引先で、同社との関係性が強いです。

株価は方向感が無い感じです。

同社はあくまでパチンコ・パチスロで勝負していく方針のようで、機種のブランド力向上、販売コスト低減などが課題です。

藤商事(6257)

藤商事はあまり馴染みがないかもしれません。

「リング」「呪怨」シリーズが有名です。

トレードマークの藤丸くんがプレミア演出でたまに出てきますね。

初めてのリングで、有名な貞子の手約物が落ちてきた時はパチンコ人生で一番驚きました。

タイミングも油断した瞬間に来るなど、さすがにやり過ぎと思いましたが、この機種は結構勝たせてもらった記憶があり、印象は良いです。

株価は2018年に入って大きく下げています。

藤商事はジャスダック上場の時価総額も小さい中小型株ですので、決算を機に荒い値動きをする可能性があります。

今年度の決算はそこそこに見えましたので、持ち直す可能性もありそうですが、専業メーカーなので、長期的にはヒット作をいかに輩出するかが鍵となります。

当たり前ですね。

フィールズ(2767)

FieldsはたまにテレビCMでも見かけます。

こちらは機器の製造メーカーではなく、アニメなどとタイアップした企画や販売を行う商社に近いイメージの会社です。

さまざまなメーカーと提携し、上の「エヴァ」「GANTS」、「カイジ」、「ウルトラマン」シリーズの開発を手がけています。

2010年に円谷プロを子会社化していて、ブランド力のある作品が同社の強みですね。

こちらは2016年以降株価が低迷しています。

一時2,200円近いところからじりじり下げ続け、数年で600円台と急落しています。

後述しますがFieldsは赤字状態で、株価も上がる材料が乏しい状況にあります。

ちなみにユニバーサルと藤商事がジャスダック、ここにあげている他のメーカーは東証1部上場の大企業です。

この他「ジャグラー」シリーズの北電子や「海物語」シリーズのSANYOなんかも代表格ですが、これらは非上場です。

業績を比較

株価推移はいずれも微妙といった感じでしたが、次に決算資料等をもとに業績を比較してみます。

売上高(百万) 経常利益(百万) 純利益(百万)
セガサミー 331,648 7,495 2,642
ユニバーサル 93,267 67,232 161,168
平和 132,765 13,105 6,799
SANKYO 88,558 22,300 13,384
藤商事 52,314 4,234 2,525
Fields 61,055 ▲5,204 ▲7,691

売上高はセガサミーが一番大きいですが、ゲームなどのエンターテイメント事業を含んでいますので、パチンコ・パチスロ関連としては半分以下です。

同じくユニバーサルはIR関連事業、平和はゴルフ事業が半分以上を占めています。

各社利益が少なく苦戦している

赤字なのはFieldsだけですが、各社売上げに対する利益が少なく、やはり業界全体として苦戦していることが分かります。

ユニバーサルがとんでもない利益を出しているように見えますが、これは海外のカジノ案件による株式償還差益、すなわち一過性の利益です。

本業の営業利益でみると実はマイナスです。

この中ではSANKYOが一番利益率が良いですね。

ファンダメンタルズの比較

続いて企業のファンダメンタルズをみていきます。

株価(5/10) PER ROE
セガサミー 1,353円 131倍 0.9%
ユニバーサル 3,290円 1.59倍 53%
平和 2,112円 31.4倍 3.1%
SANKYO 4,170円 28.25倍 4.0%
藤商事 940円 12.85倍 5.3%
Fields 740円 ▲5.26倍 ▲19.9%

なお上の表からは割愛していますが、自己資本比率はどこもかなり高く、すぐすぐ事業が行き詰まって倒産ということは無さそうです。

ROEが低い

ROE(自己資本利益率)は一般的に10%以上が優秀とされる中、各社ともかなり低い数値です。
(上のとおりユニバーサルは特別利益なので除外)

割安さで見れば藤商事

株価をEPS(一株当り利益)で割って算出されるPERは、割安さを示す指標とされ、日本企業では一般に15倍以下が割安とされています。

ここでもユニバーサルを除外すれば、藤商事だけ割安な水準だとみえます。

ただ、藤商事は上述のとおり時価総額がかなり小さい中小型株であるため、割安か割高かを論じることにあまり意味がないでしょう。

同社はベースの売上げや利益の額そのものが小さいので、好決算であれば株価が値を飛ばす可能性がありますね。

配当、株主優待

長期投資を考えるのであれば配当や株主優待は大切です。

配当利回り 配当金 配当性向
セガサミー 2.70% 40円 355%
ユニバーサル 1.54% 50円 2.50%
平和 3.69% 80円 115.9%
SANKYO 3.22% 150円 91.0%
藤商事 3.60% 50円 47.0%
Fields 2.46% 30円 NA

配当金の数字は悪くありませんね。

株主優待は、セガサミーが1,000円分のUFOキャッチャー券、平和とSANKYOが提携会社のゴルフ割引券を設定しています。

正直ほとんどの人にとっては無価値でしょう。

配当性向が高い=無理している

配当利回りでみればそこそこという感じですが、配当性向が大きすぎますね。

配当性向とは、純利益の何%を配当に回しているかということを意味し、30%くらいが一般的です。

利益が少ない中配当を頑張っている株主還元志向の強い会社と見える一方で、かなり無理をしている、ともみえます。

今後減配の可能性もあるでしょう。

パチンコ・パチスロ業界の今後を予想

ここまで業界を代表する各社の株価や業績などを確認してきましたが、予想通り各社かなり苦戦を強いられています。

今後の株価の行方を予想するために、今後の事業環境などについて簡単にまとめます。

パチンコ・パチスロ業界は衰退の一途

冒頭の市場規模が示すとおり、市場規模は縮小の一途を辿っています。

FXなどの投資(投機?)商品が身近になり、ギャンブル好きな人達がこちらに流れて行っている感もありますね。

さらに射幸性を抑える新規性の影響も各社の売上げや利益を直撃しています。

一昔前は一日で数十万勝つこともあれば負けることもあり、今よりもギャンブル性が非常に高く、ギャンブル依存症が問題視されており、年々規制は厳しくなっています。

個人的には適正化の動きだとは思いますが、面白くなくなってきている、のも事実です。

新規制適用のタイムリミットもあり、機種の入れ替え需要はあるでしょうが、ホールも二の足を踏んでいる現状です。

そもそも不景気でサラリーマンを中心にお財布事情が厳しく、これからも客離れは進むでしょうし、難しいですが、事業の多角化を余儀なくされているように感じました。

カジノ・リゾート事業への投資

事業の多角化で代表的なのが、カジノ関連です。

特にセガサミーとユニバーサルエンターテイメントは特に統合型カジノ・ホテル事業にかなり投資をしています。

統合型リゾート(IR)実施法により今後の市場拡大が見込める一方で、海外の事業者もインバウンドが期待できる日本のマーケットを狙っており、激しい競争が予想されます。

ここが一番の勝負所ですね。

その他の関連銘柄

いろいろと調べましたが、パチンコ・パチスロ関連銘柄として本命である機器メーカーよりも、周辺事業の方が有望に思えました。

ダイコク電機(6430)

ダイコク電機はホール向けのコンピュータシステムを開発しています。

最近のホールにはほぼ全て台のスランプグラフや大当りデータが見えるようになっていますが、これらの機能はユーザーに求められており、売上げも好調です。

ただ、直近はこのシステムも行き渡った感あり、株価も低迷中ですね。

マースエンジニアリング(6419)

同社は計数機を開発・販売しています。

ご存知のとおり最近はドル箱を積むのを止めているホールが多いです。特に1パチを中心に、各台に計数機がついているのが一般的です。

大手だとマルハンだけは箱済みにこだわっていますね。

ちなみに同社もダイコク電機に同じく株価はイマイチ伸びていません。

サン電子(6736)

サン電子は制御機器や電子部品関係を取り扱っている会社です。

直近ではパチンコ系の事業の損益が急悪化して赤字転落しています。

ジャスダック上場の小型株ですので、思惑で激しく株価が値動きしています。

まとめ

今日はパチンコ・パチスロ関連株として代表的な銘柄の株価や業績を分析した結果をお伝えしました。

調べる前からある程度予想はしていたのですが、とても株を買う気にはなれませんでした。

業界そのものは無くなりはしないでしょうが、徐々に衰退していくことは間違いありません。

国主導でそうしようとしてますしね。

このような市場環の中、セガサミーとユニバーサルはカジノ、平和はゴルフ事業等への多角化方針、SNKYOと藤商事は足元の事業のブランド力強化とコスト削減、フィールズは知的財産権による高収益化というのが事業方針とみました。

最後になりますが、ギャンブル好きの国民性に独創的なアイデアで発展してきた日本のパチンコ・パチスロの進化はすごいと思います。

海外のカジノのマシンなんか本当につまらないです。

統合型リゾート実施法も成立し、なんとか健全(?)なカジノ業界でも海外勢に負けずに頑張って欲しいと思います。