回転寿司大手チェーンの株価分析|「くら寿司」「スシロー」の株価、業績を比較し今後を予想

みんな大好き回転寿しの大手チェーン「くら寿司(2695)」と「スシロー(3563)」は、株主優待も人気の銘柄です。今日はこの2社の決算資料やIR情報などをもとに株価や業績などを確認し、投資対象として分析してみた内容をお伝えします。

僕は食べ物にあまりこだわりが無い方ですが、寿司は数少ない好物のひとつです。

一番よく行くのは「無添くら寿司」なので、同社だけ分析してみようと思ったのですが、ライバルの「スシロー」も調べて比較してみたいと思います。

同業他社と比べることでいろいろな気付きがあるからです。

ちなみにこの2社に「かっぱ寿司」と「はま寿司」を加えた4社が回転寿司界の四天王と呼ばれているそうです。

かっぱは近年業績が芳しくなく、はま寿司はゼンショーグループ傘下なのではま寿司単体の業績を確認できなかったので今回の比較対象から外しました。

決算資料から業績を確認

まずは両社の決算資料をもとに基本的な業績等を確認していきます。

参考に店舗数を入れていますが、スシローは全国500店舗を突破しました。

どうりでどこいっても見かけるわけですね。

(百万円) くら寿司 スシロー
店舗数 406店舗 500店舗
売上高 132,499 174,883
(同 前期比) 7.93% 11.82%
経常利益 7,655 11,508
(同 前期比) 5.08% 27.94%
純利益 5,130 7,991
(同 前期比) 5.04% 14.95%

表からは割愛していますが、ROE(自己資本利益率)も優良の目安とされる10%を越えています。

売上高は両社1,000億以上

売上高としてはスシローは1,700億円と業界No.1です。

東洋経済新聞社の調べによると、外食産業全体としても6位に位置しています。

ちなみにくらコーポレーションは10位です。

過去の業績は割愛していますが、ここ数年で見てもこの2社は順調に売上を伸ばしています。

ちなみに外食1位はすき家やなか卯、はま寿司などを擁するゼンショーグループで2位はすかいらーく、マクドナルドが3位だそうです。

寿司単体で2社もトップ10に入っていることからも日本人のお寿司好きがうかがえるとともに、両社とも日本を代表する企業であることが分かります。

もちろん東証1部上場の大企業です。

スシローの利益が好調

外食産業という利益を出しづらい業態の中、上の表のとおり両社ともしっかり利益を出し、黒字をキープしています。

特にスシローの利益は前年度から10%以上成長しています。

株価推移

続いて過去2年分の株価推移をマネックスより引用します。

・くら寿司(2695)

・スシロー(3563)

株価推移で見ると、くら寿司は2年前まで逆戻り、スシローは右肩上がりに見えます。

株価もスシローが好調

スシローは「あきんどスシロー」時代の2003年に東証2部に上場、その後すったもんだあり上場廃止、2017年に再上場した経緯があります。

上場当時はいろいろ言われましたが、株価は好調で、この2年で2倍以上になっています。

ただ後述しますが、このすったもんだの影響が尾を引き、財務体質はあまりよろしくありません。

くら寿司のバイトテロの影響は?


2月上旬におきたくら寿司のバイト学生による不適切動画の拡散の影響を受け、次の日の株価が130円下落しました。

このニュースは社会現象となり皆さんも「バイトテロ」という言葉でご存知かと思います。

投資家の間では1日で20億円以上の時価総額が消失したと取り上げられるとともに、同社は民事刑事双方で訴訟の構えを見せていると報じられました。

株価推移に印を付けているところです。

バイトテロ後一瞬下がりましたが同社の訴訟報道が好感され、株価は一度値を戻しています。

その後、第一四半期決算のタイミングで急落していますね。

バイトテロによる客足への影響懸念などもあるかもしれませんが、株価への影響を立証するのは難しいように僕は思います。

割安な状況ではない

この記事は2019年のGWに書いていますが、休み前の終値は以下のとおりです。

・スシロー : 7,270円
・くら寿司 : 4,805円

この数字でPERを計算すると、両社20倍を超えています

PERとは、株価が1株当り利益(EPS)の何倍まで買われているか、という割安さの目安とされる指標です。

日本企業だと15倍が平均とされており、両社とも割安とはいえない状況であることが分かります。

割高だから株価が上がらないということはなく、またサービス業に絞れば20倍台は普通ですが、割安株が好きな僕としては他に良い材料がなければ敬遠するくらいの値です。

配当金、株主優待


配当株主優待は投資の楽しみの1つです。

特に外食系の会社の株主優待はお食事券だったり実用性が高いのが魅力です。

細かい使用条件とかがいろいろあるのですが、ざっくりとまとめると以下のようになります。

100株あたり くら寿司 スシロー
株価(4/26終値) 4,805円 7,270円
配当金 3,000円 8,500円
株主優待 2500円相当 4000円相当

配当利回りはスシローの方が高いですが、他の高配当な企業を比べると物足りないですね。

株主優待はグループ店舗で使えるお食時券です。

くらで計算してみると、48万円の株に対し、毎年5,500円相当の配当+優待となり、1%強の利回りとなります。

商社株なんかは3%超えが当たり前なので、配当狙いには不向きな銘柄ですね。

配当狙いなら、高配当の商社株は買い時か?にも書いたとおり商社系がおすすめです。

財務状態の確認

続いて財務状態の確認です。

日々の値幅を狙う個人投資家にはあまり注目されない指標ですが、長期投資であればこれらにも目を向けることが大切です。

代表的な指標をまとめました。

(百万円) くら寿司 スシロー
総資産 59,012 131,699
自己資本比率 66.90% 31.00%
利益剰余金 37,311 25,848
有利子負債 76 43,816

財務体質はくら寿司が健全

総資産はスシローの方が大きいですが、財務体質はくら寿司が圧倒的に健全です。

自己資本比率は40%が安全の目安とされている中、60%を超えています

何より有利子負債、ようは借金がほとんど無いのが良いですね。

直近で多少業績が苦しくなってもすぐに倒産ということはないでしょう。

スシローはのれんと有利子負債がかなり大きい


一方のスシローは総資産が大きいですが、自己資本比率がくら寿司に比べて低めです。

30%という数字自体はそこまで悪くはありません。

ただ、引用は割愛しますが、同社の貸借対照表を見て気になったのはのれんと有利子負債の大きさです。

のれんについては少々難しいので割愛しますが、これは資産の中でも非流動資産に分類され、上場廃止から再上場までのごたごたの中でかなり増加しました。これが総資産の結構な割合を占めているのが気になります。

有利子負債はその名の通り、借金です

同社はここ数年でかなり店舗数を拡大しています。その資金の多くを借り入れているということです。

現状は拡大路線に売上げ、利益が伴っているため、株価の上昇は投資家に攻めの姿勢を評価されていると見てよいでしょう。

一方でレバレッジを効かせて事業拡大をしている会社は、つまずいた時に一瞬で見切られて株価が急落する怖さもあります

くら寿司とスシローの経営方針の違いが見えますね。

回転寿司業界の今後を考えてみる


ここまでくら寿司とスシローを比較しながら見てきましたが、今後の株価を予想するにあたり、外食産業全体も含めてこれからを考えてみました。

外食市場は頭打ちか

日本フードサービス協会が公表している外食市場に関するデータを引用します。

遠回りなようですが僕は株の購入を検討する際に市場全体を調べるようにしています。

いかに優れた企業であっても市場そのものが縮小すれば成長し続けるのが困難だからです。

出典:日本フードサービス協会

目盛りがありませんが、現在概ね25兆円くらいの市場規模です。

大きくみれば横ばいで、ここ数年は景気回復に伴い回復基調でしたが、これからが不透明です。

言うまでもなく、人口が減少するからです。

インバウンドの恩恵はあるでしょうが、少なくとも市場規模が急激に拡大する未来は無く、市場環境としては厳しい分野なのは間違いありません。

人手不足、材料費高騰が直撃

慢性的な人手不足、材料費の高騰傾向も大きく影響を受けます。

両社の損益計算書(P/L)を確認しましたが、費用構造がとてもよく似ています。

とも売上のざっくり半分が原価、残り半分が人件費等管理費という費用構造です。

ぎりぎりのところで利益を出していると見えました。

普通の外食産業は原価3割、人件費3割でFLコスト(Food/Labor)6割が目安とされる中、両社とも9割近いです。

消費者から見るととてもコスパの良い良心的なお店と言えますが、投資家の観点では、もうちょっと何とかならんかね、と思われるでしょう。

競争が激しい世界なので安易に値上げすることもできず、さらにコストは上昇傾向ですので、利益率を伸ばすのも難しいと思われます。

各社の戦略


利益を伸ばすためには、売上を拡大するか、コストを削減するか、本質的にはこの2択しかありません。

上のとおり外食市場を取り巻く環境は厳しいですが、当然両社とも手を打っています。

メニューの差別化は当然で、各社継続して取り組んでいますが、それだけではありません。

両社のIR資料を見ながら、これからの事業戦略について感じたところをお伝えします。

くら寿司は海外展開に積極的

くら寿司はすでにアメリカに17店舗、台湾に14店舗を出店しています。

寿司という日本が世界に誇る食文化を世界に広げると同時に売上を拡大する戦略です。

寿司は日本独自文化なので「いきなりステーキ」よりは勝算が高いように思いますね。

一方スシローは海外展開では遅れをとっていてまだ10店ちょっとです。

競合を避けるためか、こちらは韓国を狙っているようです。

スシローは杉玉ブランドを出店

スシローの名前を伏せ、「杉玉」という大衆寿司居酒屋を展開しています。

このブランドはスシローより客単価が高い収益性の良いお店としたいのだと思います。

回転寿司はファミリーが多く、利益率がめっちゃいいお酒類があまり出ないですからね。

素人の見立てですが、食事はスシローのルートを最大限活用し質の良いものを安く提供し、酒で稼ぐ、そういうビジネスモデルが狙いではないでしょうか。

両社とも自動化、デジタル化を推進


ロボットの活用はこの業界に限らずですが、人件費の占める割合の高い同社では高い効果が見込まれます。

バイトテロのように従業員のモラルという潜在的なリスクも回避できますしね。

あと数年もしたらカウンターでロボットが寿司を握る時代になりそうです。

またスシローはデジタル化にも積極的で、スマホアプリとの連動やUBER eatsを活用したデリバリーサービスに力を入れています。

まとめ

今日は僕も大好きな回転寿司業界を牽引する最大手チェーンの「くら寿司(2695)」と「スシロー(3563)」の株価や業績について分析してみた内容をお伝えしました。

両社ともとても消費者指向の良い会社だと感じましたが、いかんせん競争が激しく、外食産業という利益を出しにくい業界ですので、投資という観点では今は株を買うのは見送りたいと思います。

もうちょっと下がったら、、、とかいってたらいつまで経っても買えませんけどね。