商社株は高配当だけど万年割安(株価が上がらない)というイメージを持たれている方も多いと思います。僕もそうです。そんな商社株ですが、ここのところ株価が下落気味です。もしかして買い時なのかなと思い、5大総合商社の決算情報などをもとに業績を比較し、今後の株価の行方などについて予想してみた結果をお伝えします。
この記事を書いているのは2019年2月で、各社の第3四半期決算発表の直後ですが、決算を機に総合商社の株価が軒並み下落しています。
商社株は配当利回りが非常に高く、僕も株を買おうかどうしようか迷っていたところなので、これを機会に5大総合商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)を様々な角度から徹底比較し、どの銘柄がおすすめなのかを分析してみます。
目次
ファンダメンタルズ分析(業績、資産状況など)
まずは企業のIR資料や決算情報をもとに定量的な数字で比較していきたいと思います。
企業の安定度
まずは企業の大きさと安定度をみるために、総資産、自己資本比率、時価総額をみていきます。
総資産(百万) | 自己資本比率 | 時価総額(百万) | |
三菱商事 | 16,613,704 | 34.2% | 4,873,585 |
三井物産 | 11,847,422 | 36.1% | 2,938,465 |
伊藤忠商事 | 10,652,810 | 27.1% | 3,153,930 |
住友商事 | 8,055,615 | 34.6% | 1,941,847 |
丸紅 | 6,989,588 | 28.9% | 1,336,650 |
まぁ調べるまでもなく超巨大企業ですね。総資産なんかぱっとみでは桁が分かりません。
これだけの規模にもかかわらず、自己資本比率はどこも30%近くあり企業経営も健全です。
いずれも日本を代表する企業であることは間違いありません。
参考まで、時価総額(株価×株式数)はその日その日の株価で日々変動しますが、
三菱商事の5兆円くらいが日本企業のTOP10近辺、丸紅の1兆円くらいがTOP100あたりに位置しています。
ちなみに米国株のアマゾン、アップルの時価総額は80兆円越えです。
ただし、表には上げてませんが各社とも有利子負債もとんでもない額なのは気になるところではあります。
売上高、純利益、ROE
次に業績をみていきます。下の表は各社の昨年度の決算資料から作成しています。
ROEは利益を株主資本で割った数字で、いかに効率的に利益を上げているかを示す指標です。
これは一般的に10%以上が優良だとされています。
売上高(百万) | 純利益(百万) | ROE | |
三菱商事 | 7,567,394 | 560,173 | 10.90% |
三井物産 | 4,892,149 | 418,479 | 10.90% |
伊藤忠商事 | 5,510,059 | 400,333 | 15.80% |
住友商事 | 4,827,323 | 308,521 | 12.50% |
丸紅 | 7,540,337 | 211,259 | 14.00% |
三菱商事が利益トップです。昨年度の各社の業績は軒並み過去最高益を達成しています。ROEも優秀です。
これはここ数年の資源高の恩恵を強く受けています。
資源価格の高騰はほとんどの企業にとってマイナスなのですが、商社は資源の販売価格に一定の率をかけたマージンが収入源となりますので、資源高は利益にストレートに効いてくるからです。
特に上位2社は石炭や鉄鉱石といった資源権益を多く有するため、特に業績が伸びています。
ここでは丸紅の純利益が売上規模に対して低いのが気になりますね。
株価と割安性(PER,PBR)
次に気になる株価と割安性の指標であるPER、PBRを見ていきます。
株価は2019年2月8日のもので計算しています。業種によって異なりますが、PERは日本企業の平均が15倍弱で低いほど割安とされ、PBRは2倍以下を目安に健全だとされています。
株価(2/8) | PER | PBR | |
三菱商事 | 3,065円 | 8.12倍 | 0.73倍 |
三井物産 | 1,686円 | 7.82倍 | 0.78倍 |
伊藤忠商事 | 1,990円 | 8.58倍 | 1.15倍 |
住友商事 | 1,552円 | 7.26倍 | 0.83倍 |
丸紅 | 769円 | 6.33倍 | 0.73倍 |
割安株のオンパレードですね。
ただ、商社株が割安なのは今にはじまったことではありません。ずっと、割安です。
これだけ業績が良いのになぜ株価が上がらないのか、商社株ホルダーはイライラしてると思います。
丸紅の株は10万以下で購入できるので、ちょっと試しに買ってみるには手頃な感じですね。
配当利回り
商社株は日本株の中で圧倒的に配当利回りが良いことで有名です。
ちなみに株主優待はどこもありません。
配当性向とは純利益のうちどれだけを配当金にまわしているかということで、株主還元の姿勢を測ることができるとともに、企業の余力をみる指標ともいえます。
配当性向は30%あたりが平均的といわれています。
配当利回り | 配当金 | 配当性向 | |
三菱商事 | 3.83% | 110円 | 31.1% |
三井物産 | 3.74% | 70円 | 29.5% |
伊藤忠商事 | 3.16% | 70円 | 27.1% |
住友商事 | 3.46% | 75円 | 25.1% |
丸紅 | 4.02% | 31円 | 26.0% |
さすがの数字ですね。
さらに各社ともそろって来年度の配当金をさらに上げるとのことなので、もしも株価が今のままなら、配当利回りは5%近くになります。
これは極端に言えば20年同社の株を保有していれば配当だけで元本が回収できてしまう、ということです。
総合商社の株は長期保有におすすめの銘柄と言えるでしょう。
もちろん業績が悪くなれば株価は下がりますし減配もありえますが、それは当然のリスクです。
ただ、配当性向がそれほど高くありませんので、配当金を安易に下げるようなことはしないと思います。
配当性向が高すぎると事業拡大への投資余力がなくなって、それはそれで問題です。
1株当たりの価値(EPS、BPS)
あまり注目されない指標かもしれませんが、1株の価値をはかる指標としてEPSとBPSがあります。
EPSとは利益を株の総数で割ることで1株あたりの利益を算出したものです。
BPSは同じくして1株あたりの純資産を求めたものです。仮にその瞬間に会社が解消したとして、株主に返ってくる金額であるというイメージの説明がよくされます。
株価(2/8) | EPS | BPS | |
三菱商事 | 3,065円 | 353円 | 3,362円 |
三井物産 | 1,686円 | 238円 | 2,287円 |
伊藤忠商事 | 1,990円 | 257円 | 1,722円 |
住友商事 | 1,552円 | 247円 | 2,048円 |
丸紅 | 769円 | 119円 | 880円 |
この表から、株価とBPSが近いので、今株を買っても比較的安全だ、ということが分かります。
詳しい人には、それが上のPBRだろ、とつっこまれそうですが、頭の整理もかねて分けて記載しました。
また、EPSという1株当たり利益の金額から、上の配当金が出ているという見方もできます。
株価推移
次に気になる株価推移ですが、各社の10年スパンのチャートをマネックスより引用します。
・三菱商事 |
・三井物産 |
・伊藤忠商事 |
・住友商事 |
・丸紅 |
|
各社よく似ている、と思いませんか。
日々の値動きでも、「商社株が売られた」などと連動しますが、長期スパンでみても相関関係が大きいことが分かります。
近年各社変革しようとしていますが、総合商社は資源ビジネスというところが根っこにあります。
そのため、経済情勢や資源価格等の変化による影響を各社ほぼ同じレベルで影響を受けているのかな、と素人ながらに思いました。
この意味では、どこの株を買っても大差がない、かもしれません。
また、この株価推移をみて気づいたのですが、2013年からのアベノミクス相場で多くの企業の株価が倍とか10倍とかなってる一方で、総合商社の株価はいずれも1.5倍から2倍もあがっておらず、取り残されている印象です。
株価の値上がりによるキャピタルゲインとしては物足りないですが、ある意味これくらいの株価推移が健全にも思います。
日本の中小型株の値動きはギャンブルのそれそのものです。商社株は大きすぎて個人投資家のおもちゃにはできないというのもあるでしょう。
割安な状態が続きながらも緩やかに株価が上がっているということは、利益が順調に増えている、とみることができます。
商社株の今後を予想
上で調べた結果、事業基盤もしっかりしてますし、目先の株価に左右されるのではなく、がっつり長期で保有するのに向いていると改めて思いました。
最後にこれからの業績や株価の行方を予想するのにポイントになりそうなところを考えてみました。
2018年度は各社引き続き過去最高益更新の見込み
下表は2019年に発表された第3四半期決算です。
各社昨年度の業績を上回る見込みです。年の3/4経過してますので、ここから大きくずれることはないでしょう。
17年度実績 | 18年度予想 | 増減 | |
三菱商事 | 560,173 | 640000 | 114% |
三井物産 | 418,479 | 440000 | 105% |
伊藤忠商事 | 400,333 | 500000 | 125% |
住友商事 | 308,521 | 320000 | 104% |
丸紅 | 211,259 | 230000 | 109% |
各社過去最高益を見込む中、伊藤忠商事の伸びが大きいですね。
ただ、懸念として2018年後半から原油価格が急落するなどしており、この影響は第4四半期に出てきそうな気がしています。
当然各社織り込んでいるでしょうが、ちょっとだけ本決算が心配です。
商社には優秀な人材が多い
少し視点が変わりますが、就職人気ランキングの上位常連だけあって、優秀な人材が多いのも株を購入する後押しになります。
求人倍率が1倍を越えている現在において学生をよりどりみどりで選べる立場の会社は多くはありません。
実際僕が5年ほど前に海外の案件で一緒に仕事をしたある総合商社の方もすごく優秀でした。
なぜそんなにたくさん仕事がこなせるかと聞いたところ、笑顔で「簡単さ。寝なきゃいいんだよ。」と応えた彼の言葉が冗談に聞こえなかったことを今でも覚えています。
働き方改革によりこのような人は減っているでしょうが、プライドと熱意を持った優秀な人材が豊富です。
商社に体育会系が好まれるのはこういうところなんだと思います。
やはり企業は人ですので、優秀な人材が豊富というのはプラス材料です。
非資源事業が拡大できるかどうか
各社の好業績の背景に資源高があるということは、資源価格が暴落しようものなら一瞬で赤字に転落しかねないということです。
各社とも資源事業依存からの脱却を進めており、例えば三菱商事はローソン、伊藤忠商事はファミリーマートを子会社化し、使い古された言葉ですが、川上から川下までの一貫したビジネスで収益強化を図っています。
これはほんの一例ですが、非資源依存の新規ビジネスの成否がこれからの業績の明暗を分けるでしょう。
ただ、各社事業があまりに多岐にわたりかつ大きすぎて、素人に見極めできようはずもありません。何かヒントをと各社の決算資料を読みましたが、早々に諦めました。
5大商社の中では伊藤忠商事が非資源事業が強く、一歩先を行っている感じがします。
まぁ僕が気付くようなことは皆さんすでにお気付きで、株価もよくみると同社がここ数年では一番強い値動きをしています。
まとめ
今日は商社株が直近急落してましたので、ちょっと押し目買いを検討しようと5大商社の業績や株価について調べて考えたことをお伝えしました。
どの会社も今の株価水準はとても魅力的に思えます。配当利回りも高く長期保有にぴったりな銘柄ですね。
個人的には上で書いたとおり非資源ビジネスで一日の長がある伊藤忠商事がおすすめかなと思います。その分割安性は他より低いですが。
ただ僕自身は、株を買うのは本決算を待ちたいと思います。
本決算と同時に次年度の利益見通しも出ますので、そこで大きく減益見込みとなれば割安でなくなるかもしれないからです。
まぁこんなこと言ってたらいつまでたっても株は買えませんけどね。。
関連記事です。
僕は伊藤忠商事を買いました。幸いこの半年で25%くらい含み益が出ています。
電気大手8社の株価、業績をまとめました。こちらは厳しそうですね。