今日は大手メーカーにエンジニアとして入社し、10年以上プロマネをしてきた僕が大企業に勤めるメリットとデメリットを実体験に基づいてお伝えしたいと思います。大手企業への就職や転職を考えられている方の参考になれば幸いです。
前書き|僕の立場
大企業といっても当然業界によって雰囲気も違えば社風も違います。
僕の視点にも色がついていますので、最初に僕の立ち位置を明らかにしておきます。
僕が勤める会社は従業員数がゆうに1万人を越えており、エンジニアとして10年ちょっと前に入社しました。
会社の特徴、イメージは、良くも悪くも旧態然とした日本企業と言ってよいでしょう。
今は本社で企画兼営業という立ち位置にいますが、それまでの約10年間はプロジェクトマネージャーをしていました。
プロジェクトマネージャーとして社内のエンジニア、スタッフ等、多くの部門と関わりを持ち、本社では営業も経験していますので、多くの人より会社の全体を見る機会を与えられたと考えています。
大企業のメリット・デメリットという内容は多くの方が書かれておりますので、ここでは一般的な内容はさらっと流しつつ、僕の経験による部分に重点を置きたいと思います。
大企業で働くメリット
大きな事業、プロジェクトに携わることができる
僕が第一にあげるのはこれです。
例えば国のインフラを支えるような事業に関わったり、何十億、何百億というお金が動くようなビジネスに携わることができるのは中小企業にはないメリットだと思います。
会社を裏で支えるスタッフ部門など、必ずしも全員が直接ビジネスの表舞台に出るわけではありませんが、大企業はその規模の大きさから、社員1人1人が仕事で扱う数字、影響範囲が大きいです。
事業スケールの大きさは責任の重さにも繋がるため、メリットと感じない人も多いかもしれませんが、これをモチベーションに感じられる人は大企業で働くのに向いています。
また、仕事でなければ会うことのない人たちとの会話や交渉は刺激になります。
(特に若いうちは)転職に有利
転職市場においても元大企業の肩書きは有利です。
特に若いうちはそれほどスキルがあるとは思えない子でも外資系コンサルなど別の一流企業へ転職していくケースが多々あります。
大企業は基本がしっかりしています。特にコンプライアンスなどの社会人として基本的な部分は入社後に徹底的に教育されます。
大企業は社会的信用が命と言っても過言ではありませんので、例えばカルテルなど、知りませんでしたでは済まされない失敗をされる訳にはいきません。
このように社会人としての基本的な教育を受けていて、大企業に入社したというお墨付きがある若手は、第二新卒市場でもかなり選択肢をもって転職活動ができるようです。
一方で30代を過ぎてからの転職は専門性が求められます。当たり前ですね。
大企業の体質はぬるま湯な側面も合わせ持ちますので、その中でゆでガエル化せずに自己研鑽を続けた人はハイクラス転職というのも夢ではありません。
給料が良い
給料は中小企業に比べて良いのは間違いありません。特に賞与(ボーナス)の差は大きいです。
国税庁の調査によると、平成29年の日本人の平均給与は432万円とのことです。
一方で、東京商工リサーチによると、上場企業(大企業)の平均給与は約600万円だそうです。
統計の取り方によっていろいろなデータが出てきすし、業種によって大きく異なりますが、入社した会社による給与格差が個人の能力以上に大きいと感じています。
初任給はどこも同じようなものですが、その後の昇給ペースは圧倒的に大企業が早いです。
これは僕がいうまでものく、就活生はリクナビやマイナビなどで平均給与をチェックされてますよね。
周りに優秀かつやさしい人が多い
大企業には優秀な人が多いです。
ここでいう優秀な人というのは学歴が高い人ということではありません(相関関係は間違いなくありますが)。
高度な専門性を有する人、交渉力がすごい人、論理的思考力がハンパない人など、自分には無いしこれからも持ち得無いような能力を持った人達とともに仕事ができるということはとても幸せなことだと感じています。
また、会社の風土によるでしょうが、つきあいのある他社の雰囲気をみても、大企業の社員の人はおおらかで優しい人が多いです。
腹の中は真っ黒なのかもしれませんが、社内の人間関係という観点でも大企業は恵まれている気がしています。
ただ特段仲間意識が強いということでもない印象で、社内の飲み会なども少ないです。
人間関係をビジネスに持ち込まないというタイプが多いのだと思います。まぁこのあたりは社風次第ですね。
社会的信頼が高い
これが一番目に見えて現れるのはローン審査です。
僕は家を買う気はありませんが、同僚は銀行からとんでもない金額を借りて家を買っていました。
基本的にはホワイトな企業が多い
大企業は社会的信用を重視しますので、ホワイトな企業が多いです。
経産省が認定するホワイト500などがあるように、会社の印象のためにも大企業はホワイト化を目指しています。
就職活動をされている方で、ブラック企業は絶対嫌という方は一度ホワイト500企業を調べてみることをお勧めします。
これは働き方改革の影響が大きく、具体的には残業が少なかったり、有給休暇が取りやすかったりします。
僕の勤める会社はいろいろやらかしてしまってますが、全体的に大企業のホワイト率が高いのは間違いないでしょう。
福利厚生が良い
これも良く言われていることですが、福利厚生がしっかりしています。
多くの記事で書かれてますのでここは僕が一番のメリットだと感じているところだけあげます。
社員寮、社宅、住宅手当、これの存在が大きいです。
若手のうちは大企業といえども給料はたいして高くありません。一方で遊びたい盛りの20代はお金がいくらあっても足りません。
社員寮は多くの場合1、2万だったりしますので、普通に家賃払う場合と毎月5万くらいの差が出ます。
また社宅や住宅手当も同様に毎月数万で効いてきますので、これらの制度は入社前に確認することをおすすめします。
あとは保険の団体割引きもお得です。なぜか大企業に勤める人の多くは外の保険に入ってます。さらには家を買うにあたって生命保険に新たに入ったりしています。
いったい何回死ぬつもりなんでしょう。僕には理解できません。
組織として役割分担がしっかりしている
大企業の事業は規模が大きいため仕事の役割分担がしっかり決められています。
部門ごとに職務範囲が区切られているため、自分が責任を負うべき範疇が明確です。
また組織としての体制がしっかりしていますので、担当者は安心して働ける環境といえるでしょう。
縦割りな制度は弊害もあったりしますが、担当レベルの視点でみるとメリットと言えるでしょう。
社内研修のスキルアップ制度が充実している
大企業は社内研修制度が充実しています。
技術から営業、経理や品質保証やコンプライアンス関連など、職務に必要なスキルを勉強する機会が多くあります。
僕は現場で必要なスキルは現場で身に付ける派だったのであまり活用しなかったのですが、これは反省しています。
また、海外研修制度などがある企業も結構あります。
その他
大企業に勤めればモテる。たまに議論されていますが、これは幻想です。
商社や広告代理店が特にモテると言われていますが、彼らは自ら合コンやクラブなどに出向き、積極的に女性を口説いているからモテるのであって、大企業に勤めているかどうかは本質ではありません。
とはいえ5人に1人の男性が生涯未婚だと言われる現代において、大企業に勤める人達の多くは30代には結婚している人が多いので、婚活市場で有利なのは間違いないでしょう。
大企業に勤めるデメリット
若手がすぐに活躍しづらい
大企業の多くで新入社員や若手がいきなり大きな成果を上げて評価されることはまずありません。
大企業は仕事の規模が大きいので、その中心に新入社員が据えられることはまずありませんし、その会社特有の仕事の進め方というのもありますので、そのルールやしきたりを覚えるだけでも数年を要することがあります。
大企業は下積み期間が長いというのは間違いなくあります。
これは即戦力としてバリバリ活躍したいという方にはデメリットでしょう。
ただしこれは企業風土によって大きく違います。
あくまで一例ですが、僕が仕事で接した中では、商社はスパルタなイメージがあります。
ある総合商社に海外メーカとの商談の代理店として仲介をお願いしたところ、新入社員が派遣されてきました。その子に罪はありませんが、技術用語が飛び交うなかで満足な翻訳もできず、相当苦い経験となったことでしょう。
このように企業風土の差や育成方針も違いますので一概には言えませんが、若手がすぐに活躍しづらいというのは事実です。
大企業病にかかりやすい
大企業は「ぬるま湯」だと評されることが多いです。
これは、10年以上大企業に勤める僕も、その通りだと認めざるを得ません。
企業の規模が大きいと、例えば自分の部門が赤字でも会社全体として黒字であればリストラの心配、クビになるかもとビクビクすることはありません。労働組合も強いですしね。
この結果、自分の給料がどこから出てきているのか考えたこともない社員が多くいるのが実態です。
僕自身も、甘えがあると自覚しています。
プロマネとしての10年間それなりに第一線で働いてきたという自負はありますが、一皮むけば人に誇れるスキル、資格がある訳でもなく、ビジネスマンとしての価値がどれほどあるかは自分自身疑問に感じています。
最近ではシャープや東芝の事例のように大企業だから安泰という神話はもはやなくなりつつあります。
その会社の色に染まりきり、自分の仕事の価値を客観的に評価できず盲目に目の前の仕事をこなすことが正しいと信じている大企業病の末期患者がかなり多いです。
大企業への就職を目指す人はこの点に特に注意してください。
ブラックな職場はマジでブラック
メリットで書いたとおり、大企業は全体としてみればホワイト企業です。
その一方大企業の裏の側面として、激務な部門は恐ろしいほどの激務なのも事実です。
僕の同期の友人は会社全体の経理のまとめ役に抜擢され、将来の役員候補と目されていましたが、あまりの激務に体調を崩し、昨年転職してしまいました。
この同期とは今でもたまに飲みにいきますが、あと1年働き方改革が進んでいればまた違っていたことでしょう。残念で仕方ありません。
また、大きなトラブルの中にあるプロジェクトの責任者がストレスで鬱になるというのを目の当たりにしています。
特にプロマネは鬱発症率高めです。そんなプロマネの仕事についての関連記事です。
・プロジェクトマネージャーの仕事内容
どのような職場に当たるかは、運次第、ですが、ブラックな職場に当たった場合、そうそうに転職を視野に入れるか休職という権利を主張したほうがよいです。
無理ゲーなものは、誰がやっても無理ゲーです。あなたのせいではありません。悪いのは会社です。
働き方改革の影響もありかなり改善されていますので、このようなケースは減りつつあります。
専門性を磨きずらい
専門の技術やスキルを磨きずらいです。
これは、大企業に勤めるということは、少なからず人をまとめる立場にあるということに起因します。
エンジニアとして就職したのに、仕事の大半はメールや社内の会議に追われるというのが実態だったりします。
本当に技術を突き詰めたいという人はそれに特化した会社を選択される方が後悔がないことでしょう。
何をするにも、遅い(無駄な会議、作業が多い)
大企業は何をするにしても組織としての合意形成を重んじます。
ビジネスに対するスピード感はベンチャー企業と雲泥の差です。
最近では働き方改革を進めるためのワーキンググループという新たな仕事が増えました。
これをバカげていると思わないのが大企業です。
これは一例ですが、無駄(と僕は思う)な仕事が多く、これに疑問を持たない社員が多くいます。
ただここは僕の偏見も多分に含まれています。きっと大事なのでしょう。
やりたい仕事ができない可能性が高い
大企業には多くの部門が存在します。
あなたの希望にぴったりはまる職種に配属されることのほうがまれでしょう。
メーカーの場合、人気の研究職は有名大学のリクルート枠で決まっています。
大企業は人が多いため入社後も希望を出し続ければ異動が叶う可能性もありますが、どうしてもやりたい職種がある場合は十分な下調べが必要です。
与えられた職場でやりがいを見つけ、そこで成果を出すことで新たな道が開けるということもありますので、希望の職種でなくても腐らず1、2年は頑張ってみることをお勧めします。
出世が遅い、できない
大企業の出世競争は厳しいです。
同期入社の10人に1人が課長となり、100人に1人が部長となります。
出世できずに平社員として会社人生を終える人が大半というのが実態です。
出世を望まない人が増えていますが、出世を望んで仕事に邁進しても出世できないのが大企業です。
さらに上で書いたとおり、大企業には優秀な社員が多いです。
東大、京大出身で頭はキレキレのうえに仕事熱心、かつ性格は嫌味なくバランスに優れた人、こんな人が大企業には実際にいるんです。こんな人を差し置いて出世できると思いますか?
大企業では実力があっても出世しづらいとデメリットとして挙げられることがありますが、これに対し僕は単純な競争原理だと感じています。
出世についての関連記事です。
・会社で出世する人の意外な共通点|仕事ができるだけでは出世しない
・こいつは出世するなと思う若手(1〜2年目)の具体的な特徴
歯車感が強い
大企業において社員は歯車です。
明日僕が死んでも会社は問題なく回っていくでしょう。
これは働きがいがないとして大企業のデメリットによくあげられる内容です。
中小企業では担当者でも責任のある仕事を任され、権限もあり仕事が充実しているという表現もよく聞きます。
成果の見えやすさ、充実感の得やすさという点ではそのとおりかもしれません。
ただ、たしかに大企業の方が歯車感は強いのは事実ですが、歯車にも自らの動力が付いているものと、周りの歯車に合わせてただ動くだけのものがあります。
会社全体からすると小さなものかもしれませんが、自分を中心に周りの歯車も動いて大きなビジネスが動き始めるという魅力が大企業にはあります。
人をまとめる力を求められる(コミュニケーション能力が必要)
上でも少しふれましたが、大企業に勤めるということは少なからず人をまとめることを求められます。
エンジニアであってもです。
自分の世界にこもって黙々と設計するなんていう職場は大企業にはほとんどありません。
大企業は上流設計を行い、プログラミングや実装設計は関連会社にお願いするというのが一般的です。
このため、社員はメールや電話などの調整、打ち合わせなどに費やす時間が多く、もっと技術的な仕事をしたいと思って入社した人にはかなりのデメリットでしょう。
コミュニケーション能力が入社試験で重視されるのもこのためです。
まとめ
ちょっと長くなりましたが、今日は大企業に10年以上勤める僕が感じているメリット・デメリットをお伝えしました。
書いてみて気付きましたが、メリットもデメリットも表裏一体の部分が多く、上で書いたことも捉え方次第でどちらにもなり得ますね。
とりとめのない感じになっていしまいましたが、就活で大企業への就職を希望されている方や転職を考えている方の参考になれば幸いです。
関連記事です。
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