ウェルスナビやTHEOといったロボットアドバイザーによる投資が注目を集めていますが、実態はどのようなものを想像されていますか。AIやアルゴリズムを駆使して高速で株取引きしたりするイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。今日は最近CM等で評判のウェルスナビを例に、ロボットアドバイザーの運用の中身をお伝えします。
僕もロボットアドバイザーには興味があり、ウェルスナビ(WealthNavi)とテオ(THEO)の比較でもしてみようかなと思いましたが、既にたくさんの方が記事にされていました。
一方でその多くがロボットアドバイザーでいくら増えた、減ったという「やってみた」的な運用実績公開や、表面的なメリット・デメリットのまとめがほとんどでした。
なので少し別の角度から掘り下げてみたいと思います。
今日のテーマは「ウェルスナビ」の運用の中身
今日は最近CM等でも評判のウェルスナビを例に、リスク許容度を変えた2パターンで、それぞれの運用の中身をご説明します。
ロボットアドバイザーって実際にはどんな運用をしているんだろうと、一歩踏み込んで興味を持たれた方の参考になれば幸いです。
無料診断でリスク許容度を設定
ウェルスナビそのもののについての説明は既に目にされているでしょうから割愛します。
ウェルスナビでは資産運用にあたって最初に目標緊縛とリスク許容度を決めます。5段階中の「5」が一番リスク・リターンを追求した提案となり、「1」が一番リスク回避を重視した提案となります。
今日はこの「1」と「5」について運用の中身を説明します。
リスク許容度「5/5」
これは簡単に言うと若者向けの提案です。
無料診断で、20代・積立設定・追加投資設定などすれば概ねリスク許容度「5」が提案されます。
この場合のポートフォリオは以下のようになりました。見やすさのため投資金額は1,000万としています。
概ね80%が株式というリスク資産での運用、20%を安全資産で運用するという感じになります。
資産クラスの欄に実際に組み込まれるETFの名称が書いてあります。これをそれぞれ見ていきます。
米国株(VTI)に約3割
VTIはバンガード社が販売している米国株ETFです。
VTIは米国の企業約4,000社の株式で構成されています。米国株式市場へ広く分散投資されています。
感覚的には、N.Yダウが上がれば増える、と考えれば良いです。
米国の株価は基本、右肩上がりです。リーマンショックを乗り越え最高値を更新し続けています。2008年のリーマンショックで一時半分くらいになりましたが、過去10年でみると約3倍になっています。
・ダウの推移
リスク許容度「5」で投資した場合、預けた資産の3割を米国株へ投資しているということです。
米国の株式市場が崩れるとかなりの損失が出ることを覚悟しなければなりません。
日欧株(VEA)に約3割
VEAは同じくバンガード社のETFですが、米国以外の先進国の株式で構成されています。
VTIに対して資産クラスを分散する意味合いがありますが、これも株式での運用となります。
ちなみにVEAの中に日本の株式が含まれていますが、その割合は2割程度となっています。
全体でみると、日本株への投資の割合は3割の2割で6%程度となります。
ロボットアドバイザーは日本株への投資はおすすめしていない、ということです。
新興国株(VWO)に15%
VWOも同じくバンガード社のETFで、主に新興国の株式で構成されています。
新興国の株式は今後の大化けが期待できる一方で、経済が安定していない国も多く逆に株価が暴落する危険性があります。リスク・リターンとも大きな資産クラスです。
実際過去を振り返ると、VWOはVTIに比べて非常に荒い値動きをしています。
この値動きの荒さゆえ、VTI、VEAに比べて組み入れ比率が少なめになっているのでしょう。
米国債券(AGG)に5%
AGGはブラックロック社が販売する、主に米国債券のような優良債券を幅広く取り入れたETFです。
ブラックロック社はバンガード社と双璧をなすETF運用会社です。バンガードはAGGに対してBNDという同等のETFを販売していますが、どちらもリターンはほぼ同じです。
AGGは債券ETFなので値動きが非常に緩やかです。リーマンショック時もほとんど下落しませんでした。
債券の価値は国の信用そのものなので、デフォルトなどが起きると大変なことになりますが、AGGは先進国を中心とした優良債券で構成されているため、リスクは低い商品です。配当も2%程度の利回りがあり、保守的な運用にはぴったりな商品です。
一方で金利の上昇場面では債券価格が下落するというリスクがあります。それでも株式ほどのリスクはありません。リスク「5」の場合、これに15%が配分されます。
金(GLD)に8%、不動産(IYR)に5%
この2つはまとめてしまいますが、インフレヘッジの資産運用といってよいでしょう。
インフレヘッジというと難しく聞こえますが、これもリスクを抑えた資産運用に分類されるとされています。
例えば1個100円のりんごが物価上昇で200円になったとします。これは当時の円の価値が半分になったことになります。
一方で金の価値は変わらないとされますので、物価上昇前の100円分の金は物価上昇後に200円の価値をもちます。インフレの影響を吸収するということです。
すごく荒っぽくいうとこういう資産への投資となります。デフレになると損失がでます。
個人的には上のような単純な話ではないと思っていて、金も不動産も投資したくないですが、イメージとしては株式と債券の間くらいのリスク・リターンです。
ウェルスナビも資産配分の割合は低めです。
リスク許容度5/5の特徴まとめ
上のとおり世界各国の株式や債券などに分散投資されていますが、リスク許容度「5」の場合、株式中心の資産運用となります。
このため、株価の上昇局面では大きく利益が出ます。
その中でも米国の株式の比重が高く、日本の株式の比率は低めです。
また、日本国外の株式比率が高いため、為替の影響を強く受けます。円安に振れれば日本円換算の資産は増え、円高になれば目減りするのが特徴です。
リスク許容度「1/5」
これは簡単に言うと退職金の資産運用向けの提案です。
無料診断で、60代・安定した資産運用の設定をすれば概ねリスク許容度「1」が提案されます。
この場合のポートフォリオは以下のようになりました。
株式の組み入れ比率が25%程度と、リスク許容度「5」に比べてかなり少なくなっています。
なお、このポートフォリオの場合、日本株への資産配分は全体の1%程度となります。
米国株(VTI)、日欧株(VEA)、新興国株(VWO)あわせて25%
株式系のETFを全部合わせても資産全体の1/4程度に抑えられています。リスク許容度「5」が80%なので、全く別の資産運用といえます。
リーマンショックの時には株価が半分くらいまで落ち込みました。このようなリスクを回避するためです。
例えばダウはリーマンショック前の株価を超え最高値を更新していますが、やはり回復には数年を要しています。
いつか第二のリーマンショックか、そうでなくとも株価の暴落局面はあるでしょうから、退職金の運用のように資産を取り崩すことを前提とした資産運用に株式はリスクが高いということです。
米国債券(AGG)に約3割、物価連動債券(TIP)に約3割
リスク許容度「1」の場合、債券系ETFで全体の6割以上を占めるポートフォリオというのが特徴です。
TIPというETFは僕も今まで知りませんでしたが、ブラックロック社が運用する米国の物価指数に連動するETFです。
AGGとTIPの価格推移をブラックロック社から引用します。両者とも過去5年でみるとほとんど値動きしていません。
TIPの利回りは1%程度と、AGGに比べさらにリスクを抑えた商品となっています。
このようにリスク回避を重視した資産の割合が高いです。
金(GLD)に5%、不動産(IYR)に5%
インフレヘッジという意味ではTIPがありますので、金や不動産は控えめな配分となっています。
ロボットアドバイザーによる資産運用の特徴
ウェルスナビを例にとりましたが、ロボアドによる資産運用のポイントは資産クラスを分散したポートフォリオを形成するところにあります。
この基本的な考え方は、テオ(THEO)など他のロボットアドバイザーも同じです。
僕の思うロボットアドバイザーのメリット・デメリットを書きます。
メリット1|積立ができる
ロボットアドバイザーによる運用は数ヶ月、1年というスパンで増えた減ったという見方をするのではなく、もっと長期投資としてみるべきです。そのように設計されているからです。
上のとおり米国ETFが多く組み込まれていますが、これを自分でを買う場合、積立というやり方ができませんし、購入のたびに手数料がかかりますので、ある程度まとまった金額での投資が効果的となります。
これに対し少額から積立可能なロボアドのメリットは大きいです。
メリット2|分散ポートフォリオと自動リバランス
個人で株式、債券への分散、しかも米国や新興国も交えた分散投資を行うのは相応の労力を要します。
これを全て自動で資産配分し、リバランスをしてくれるのがロボットアドバイザーの強みだと思います。
リバランスとは、例えばインフレ局面では株式・債券の比率を下げてインフレヘッジ資産の比率を高めたり、またその逆をしたりしてくれることです。
メリット3|自動税金最適化(DeTAX)
自分で株やETFの取引きをする場合、特定口座を使っていても、損出しをした際に確定申告などを活用して損を軽減することを考えたりといろいろ手間がかかります。
これに対し、ざっくりした表現ですが、ロボアドは自動で利益と損を相殺するようなことをしてくれます。
上のことを総合して、手間がかからない、これがロボアドの最大メリットです。
デメリット|手数料が少し高め
ウェルスナビもテオも手数料が1%です。米国ETFのVTIを直接購入した場合0.1%以下の信託手数料ですので、これに比較すると割高さは否めません。
米国ETFを購入する場合、外国株口座を開設し、ETFを買うたびに手数料を払う必要がありますので単純に0.1%対1%ということにはなりませんが、もう少し安くして欲しいですね。
仮に0.2%くらいになれば、ほったらかし投資の最適解と言ってよいように思います。
僕の考えるロボアドのデメリットは手数料が若干高いことだけです。
ちなみに1%の信託手数料というのは、例えば日本株投資で人気の「ひふみ投信」などと同じくらいの手数料です。
まとめ
今日はロボットアドバイザーの実際の運用の中身をウェルスナビを例に説明しました。
年代や運用資産、リスク許容度によって全く違う資産運用となることが分かりましたが、資産クラスを分散したポートフォリオを形成するという意味でリスク回避をしっかり考えた良い商品だと思います。
運用実績を公開している多くのブログでは毎月の運用報告という形で短期間での利益や損失ばかりに注目していますが、こういう商品は数年、10年スパンでみていくのが良いように思います。
また、投資というと「日本株のトレード」という印象を持たれる方も多いかと思いますが、ロボットアドバイザーではほとんど日本株を組み込んでいないという点は覚えておいて欲しいところです。