もし僕が退職金2,000万円を投資で資産運用するなら|リスク回避重視の投資法

退職金でまとまったお金を手にして初めて投資や資産運用を考える人が多いと聞きます。今日は僕がもし退職金を運用するならこうするという内容をお伝えします。重視するのはリスク回避で、そのポイントは資産の分散です。

大卒者の退職金がだいたい平均2,000万程度とのデータを見かけました。

本当にこんなに貰えるの?と疑わしいですが、それは置いといて2,000万円という数字が後の説明に使いやすいのでこの数字で説明したいと思います。

1,000万なら半分に、3,000万なら1.5倍で考えてください。

あくまで僕ならばこのように運用するだろうということで、もちろん正しいとか正しくないという話ではありません。

ただ、今の僕はもっとリスクを取った投資をしていますが、もしも投資をはじめた頃に戻れるならこうしとけば良かったという反省を踏まえた内容となっています。

退職金の資産運用の基本的な考え方

今日の設定は退職金ですので、老後の大切な生活資金となります。

そのため、投資で資産を増やすというよりも、リスク回避ということに重点を置きます。

実際の資産運用法を書く前に前提を3つ補足します。

1.資産アセットの分散によるリスク回避が大切

日本で生活する限り全て日本円で精算しますので、どうしても日本円を中心に回りの物の値段(価値)が変わるという風に見えてしまいますが、日本円もまた相対的な価値を与えられているという見方が大切です。

ですので、資産は可能な限りいろんな形にして持っておくことこそがリスク回避であると考えています。

この図はあくまでイメージです。

例えば守りの資産とした債券の中にも新興国のハイイールド債のようにリスク・リターンの大きな攻めの要素が大きいものもあります。株式もまた日本株、先進国株、新興国株で大分特徴が違います。

資産配分を決めることをポートフォリオと呼んだりアセットアロケーションと呼んだりします。

このアセットアロケーションが投資の運用成績のほとんどを決めるというのが通説となっていて、リスク、リターンのコントロールはこの資産配分でコントロールするのが良いとされています。

投資信託で資産運用する場合も資産の分散を意識することがが大切です。

もし僕が今500万円を投資信託だけで資産運用するならで書いたように投資信託を活用した分散も有効です。

2.配当金や分配金だけで生活しようなんて考えない

2,000万程度の元本で、配当や分配金のみで生活するのは不可能です。

退職し収入が途絶えることの不安から、毎月高額な分配金を出す投資信託に退職金を全部預けるという人もいると聞きます。

気持ちは分かりますが、これは、罠です。

その配当金なり分配金が、本当に株式の配当から出されているのであれば、2,000万の元本に対してせいぜい月3万が良いところです。

これを大きく超えているものは元本を取り崩している可能性が極めて高いです。

ある人気の毎月分配型の投資信託は2015年から2018年の3年間で基準価格が半分になっています。解約したら元本の半分しか返ってこないということです。

毎月分配型の投資信託をおすすめしない理由は・毎月分配金型投資信託をおすすめしない理由に書いていますので、購入される前に一度目をとおしてみてください。

これらの投資信託を購入される場合、その中身をよく理解することが大切で、理解した上で投資方針に同意して購入するのであれば止めませんが、そうでなければ止められた方がよいでしょう。

3.資産を日本から逃がす

残念ながら僕には10年後、20年後の強い日本というものが想像できません。

世界の人口は増加し続けており、2055年には100億人を突破すると言われています。これは世界経済は拡大していくということです。

一方で日本は少子高齢化も深刻ですし、現在すでに税収と医療費がほぼ同じというはちゃめちゃな経済状態です。

ですので、まだ円が強い今のうちに、日本から資産を逃がす、ことを考える必要があると思います。

今は安全資産とされている「円」も国力が弱まれば必然的に弱くなるからです。

世界が今後10年20年というスパンでどのように変わるかは分かりませんが、日本の衰退は避けられないでしょう。

メーカー勤めの僕自身の実感としても、近年は技術のコモディティ化による日本企業の競争力の低下は顕著です。

以上の3つを前提に、僕の考える退職金の資産運用方法を書きたいと思います。

僕の考える資産運用法

まずはこの退職金2,000万円のうち、1,000万円をドルに替えます。決してFXをするということではありません。

ただし、その時々の為替の円安・円高の影響を避けるため、ドルコスト平均法を用いて、毎月50万円を目処に数年かけてドルに替えていきます。1回のドル転はネット証券であれば数分の作業です。

これは上でも述べたとおり、日本円から逃すという直接的な意味合いと、この後に説明する米国ETFを購入するためです。

日本円として残した1,000万円の使い方

上のとおり、1,000万円は日本円として保有します。これをまたざっくり500万ずつ運用を変えます。

500万は、銀行預金

退職金という設定ですので、65歳になってまともな年金が入ってくるまでは基本的にはこれを取り崩して生活します。

長寿な日本人が60歳から退職金の2,000万だけで老後の生活全てを賄うのは難しいので、それまでの貯蓄もあてにしています。

なければ定年延長かもしくはバイトなども想定します。

残りの500万は、先進国債券の投資信託を購入

リスク回避を第一に考えますので、株式ではなく、債券にあてます。

債券は株式に比べ値動きが緩やかなためです。この500万は預金の次の待機資金となりますので、円として持ちつつ、債券市場という比較的安定した資産として保有します。

ただし、ここは日本の国債ではなく、先進国債券です。

超低金利時代にある日本国債を持つ理由はありませんし、全体のポートフォリオの1/4を日本円として持っていますので、国を分散しなければリスク回避にならないからです。

近年は手数料の安い投資信託も増えてきていて、例えばeMAXIS Slim先進国債券インデックスなどは信託手数料が0.2%を切っています

退職金の資産運用ではリスクを抑えることを第一に考えるため、表裏一体であるリターンも小さくなります。このため、信託手数料のコンマ数%を無視するべきではありません。

投資信託を探すには中立公正な評価をするモーニングスターで検索されることをおすすめします。

モーニングスターの使い方は投資信託選びはモーニングスターのかんたんファンド検索がおすすめに書いていますが、自動でポートフォリオを組んでシミュレーションしてくれる機能は無料とは思えないほど秀逸です。

日本株は一切買わない

あれっ、株は?と思われるかもしれませんが、日本の株、またそれに準ずる投資信託は一切買いません

語弊を恐れずに言いますが、日本の株式市場はギャンブル場です。

ギャンブルですので勝つときもありますが、負ける時もあります。

負けている時に日本円が必要となれば強制的に損切りせざるを得なくなります

それでも日本株を持ちたいという方は個別の有名な大型株ではなく、中小型株を中心に扱った「ひふみ投信」などの投資信託が良いでしょう。

なぜ中小型株かというと、大型株は業績とは関係ない要因で株価が左右されるのに対し、中小型株は比較的業績に素直に株価がついてくるからです。

当たり前ですが、ひふみ投信は僕の下手くそ極まりない日本株投資よりよほど優秀な成績をおさめてくれています。日本株はよほどセンスがない限り勝てない相場です。

ここまでのポートフォリオをまとめると以下の構成となります。

1,000万円分のドルの使い道

ドルにした資産は主に米国の株式と債券のETFに充てます。

少しずつドルに替えていきますので、これらも少しずつ購入していくことになります。ここでもドルコスト平均法を使います。

500万円分はVTIを購入

VTIとは米国企業の株式を満遍なく取り込んだバンガード社が運用するETFです。

VTIとよく比較されるETFにS&P500銘柄を中心にしたVOOがあります。

またバンガード社と双璧をなすブラックロック社が運用するIVVなどもあり、たびたび比較分析されていますが、正直これらはどれを買っても同じです。

いずれも信託手数料は0.05%以下と、日本の投資信託では考えられない安さです。

配当利回りも2%以上ありますので、まとまった金額となれば配当金も期待できます。

日本の投資信託、ETFにも同様のコンセプトの商品がありますが、手数料はドルで直接上記のETFを購入するのに比べ割高となっています。これもドルを直接持つ利点の一つです。

VTIは米国株式市場にほぼ連動します。米国株式市場の代表であるダウ指数の過去10年をマネックスより引用します。

米国の株価は上のとおり基本右肩上がりです。

リーマンショック時には株価が半分くらいまで下落しましたが、わずか数年で回復し、最高値を更新し続けています。

少なくとも過去を見る限り、米国株を資産運用に組み込まないのはリスク回避の観点でもあり得ません

米国株、ETFの買い方は米国株、ETFの購入までの流れを説明|マネックス証券の場合に書いています。

世界経済の中心が米国なのは間違いなく、他の国の株価より強い動きを続けています。

海外株式はVTIだけで良いとも思いますが、分散投資という意味で、米国以外の先進国株式で構成されるETFとしてVEA、成長可能性がある新興国株で構成されるVWOを組み込むのもありかと思います。

残りの500万分のドルは米国債券(BND or AGG)を購入

最後の500万はアメリカの債券市場に連動したETFを購入します。

この500万でバンガード社のBNDもしくはブラックロック社のAGGを購入します。

BND、AGGとも2〜3%程度の配当があります。

パフォーマンスはほぼ同じで信託手数料も0.05%と同じなので、これもどちらを買ってもリターンは変わらないでしょう。

両者とも米国中心の信用格付けが高い債券を組み込んだETFとなっており、リーマンショックのような株価暴落場面においてもほとんど下落していません。一方でトランプラリーのような株価上昇場面でもそれほど上がりません。

債券という値動きの安定性と確実な配当は、ある程度まとまった金額を投資できる退職金の運用に最適だと思います。

ただし、現在のように金利の利上げ局面にあると債券相場の下落が懸念されますので、こちらもじわじわ買い足すのが良いでしょう。

また、このETFを保有する目的は、米国株下落時の追加投資用資金とする意味もあります。

上のとおり米国株は基本右肩上がりなので、下落時に購入するのが理想的です。

大きな下落時にBND,AGGといった債券系ETFを解約し、VTIなどの米国株ETFへ割り当てられれば理想的です。

といってもいつが底なのかなんて分からないので、欲をかかずたんたんと株と債券の両方バランスよく買い足すのが良いです。

欲に目が眩んだ投資(株が上がってるから株を買う)は上手くいきません。これは身をもって体験中です。

まとめ

今日はもし僕が退職金2,000万円を投資で資産運用するならばこうするという内容を書きました。

僕の現在の投資の反省を踏まえたポイントは、日本円を時間軸と資産クラスで分散するということです。

時間軸の分散とは、退職金の運用と言えど積立てのように少しずつ投資するのが良いということです。

資産クラスの分散とは、米国株の例でいえばVTIとVOOを両方持つというのは広い意味での分散にはなりません。

両方株式だからです。一方でVTIとBNDを持つというのは分散になっています。資産クラスを分散することがリスク回避となります。

僕は最初にどかっとドルに替えたり、保有する資産クラスが株式偏重の傾向あり、2018年10月の株価下落局面でかなりの打撃を受けており、今こそ追加したいのですが余力がないという状況です。

もし上記のとおり運用していたら間違いなく今より良いリターンを得ていたはずです。

ロボットアドバイザーも有効

自分でポートフォリオやアセットアロケーションを考えて、個別に投資信託やETFに投資するのが面倒だという人にはロボットアドバイザーを活用するのも有効です。

CMで有名なウェルズナビやTHEOなどについて調べましたが、信託報酬はだいたい1%というところで、個別にETFや投資信託を買うよりも若干高いですが、上で書いたような資産を分散しつつ定期的にリバランスも自動で実施してくれます。

ロボットアドバイザーについては別の機会に記事にしようと思いますが、下手な投資信託やファンドラップでは太刀打ちできないだろうとみています。

—–追記——
ロボットアドバイザーについての記事を書きました。
・ロボットアドバイザーの運用の実態|評判のウェルスナビ(WealthNavi)でリスクを変えた2パターンで説明