SUMCO(3436)の株価が急落しています。2018年初頭には3,000円を超えていた株価が、9月現在1,500円台まで下がっています。半年で約半分です。僕も同社の株を保有しており、決算内容および半導体市場動向などを調べて今後どうするか考えてみました。
—–2020年2月24日追記——–
SUMCOの株価分析を新たに書きました。
本記事は当時のSUMCOの状況や事業内容などの参考に残します。
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下図はここ半年のSUMCOの株価をマネックスのチャートから引用したものです。
2017年は好調だった株価が2018年に入り一転しています。
僕は半導体関連銘柄を1つ持っておきたいということで、下落がひと段落したかなと思った2,400円のところで購入しました。
その後2段底、3段底ということで相変わらずセンスのない取引きをしています。
特に8,9月は個人投資家の機械的な損切り(ロスカット)による売りや機関投資家による売り仕掛け(信用売り)などが重なったのでしょうか、売りが売りを呼ぶ展開となっています。
こんな状況の中、逃げ損ねた僕は同社の株を売るべきかホールドするか、はたまた強気にナンピン買い(買い足す)かを悩んでいます。
ということでSUMCOの今後の株価を予想するため、今日は同社の業績や半導体市場を分析したいと思います。
記事が長くなってしまったので、結論だけ先に書きます。僕は株価は戻ると予想し、ナンピン買いします。
というか1600円切ったところで既に買いました。
なお、ナンピン買いは平均取得単価を低下させる一方損失を拡大する可能性があるので、僕は基本的には敬遠している投資手法です。
SUMCOってどんな会社
SUMCOは半導体の材料となるシリコンウエハを製造する会社で、日経平均を構成する225社(いわゆる日経225銘柄)の1つです。
このシリコンウエハを使って半導体が作られます。
半導体は僕らの身近にあるスマホやパソコン、デジタル家電や自動車、医療機器などあらゆるところに使われており、後ほど詳しく説明しますが半導体需要は非常に伸びています。
同社のIR資料より電子機器の製造の流れを引用します。
珪石を原料とした多結晶シリコンから単結晶インゴッドを生成し、これをスライスしてシリコンウエハを作るところまでがSUMCOの領域です。
上の図の工程をみてわかるとおり、後段にある半導体メーカーの事業の根幹を支える製品であり、半導体産業の中核といえるでしょう。
このシリコンウエハですが、表面積が大きいほど効率的に半導体を製造することができるらしく、SUMCOは現在最大級の300mmのシリコンウエハの開発に成功、主力製品化しています。
これをインテルやサムスンといった半導体メーカーに販売しています。
下図も同社IR資料からの引用ですが、同社の売り上げの海外比率は約8割であり、グローバルな企業であることが分かります。また、世界の主要な半導体メーカーの全てと取引きがあります。
実はSUMCOのシリコンウエハの世界シェアは30%弱と、業界第2位です。
1位は信越化学工業(4063)で、日本勢で世界の半導体需要の実に半分以上を担っているということです。
ライバルとされている信越化学工業ですが、同社の半導体関連事業は全体の20%程度ということで、SUMCOの方がより半導体関連銘柄としての色合いは強いでしょう。
半導体市場の動向
SUMCOの決算等の確認の前に半導体市場の動向を確認したいと思います。
いかに今が優れた業績であっても、市場そのものが萎んでいけば利益を拡大し成長し続けることは困難となるからです。
半導体は上に書いたとおりスマホやパソコンなどを中心に広く利用されていますが、今後は人口知能(AI)や次世代通信(5G)、IOT化の進展がますます進み、特にデータセンター向けのメモリ需要は逼迫していると言われています。
下図は世界半導体市場統計(WSTS)が示している半導体市場の予測です。
2017年、2018年と市場は二桁成長を遂げており、現在4千億ドル(40兆円強)を突破しています。
2019年以降ペースは落ちますが市場は更に拡大する見込みです。
半導体といえばインテル、サムスンなどが強いですが、グーグルやアマゾン、アップルなども半導体ビジネスに乗り出すとのニュースもあります。
半導体メーカーの競争は苛烈化するでしょうが、半導体の素材であるシリコンウエハの供給側からすると需要は減りません。
そう考えるとSUMCOは半導体市場の拡大の恩恵を思いっきり受けられると思います。
中国勢はじめ、シリコンウエハの製造技術が追いつかれシェアを奪われるという懸念はありますが、現状優位な立場にあるのは間違いないでしょう。
SUMCOの決算内容の確認
ここまでSUMCOの事業の中身と半導体市場動向をみてきましたが、世界シェア2位(30%)のシリコンウエハ供給者であり、今後の成長も見込まれ、業績にも期待が持てそうです。
財務状況は省略しますが、固定資産を純資産でまかなえる同社の財務状況は極めて健全です。
下表は同社のIR資料にある昨年度本決算資料と、一番右の欄は直近の第2四半期決算資料をもとに作成しています。
SUMCOは12月が本決算ですが、半導体業界は事業環境が短期間に大きく変化するため次年度の通年の見込みを開示しない方針です。
2016年 | 2017年 | 2018第2四半期 | |
売上高(百万円) | 211,361 | 260,627 | 159,023 |
営業利益(百万円) | 14,046 | 42,085 | 41,192 |
経常利益(百万円) | 9,919 | 36,709 | 40,092 |
当期利益(百万円) | 6,588 | 27,016 | 28,151 |
EPS(円) | 22 | 92 | 96 |
自己資本比率(%) | 43 | 45 | 48 |
ここで注目して欲しいのは2018年の各数字、特にEPS(一株当たり利益)です。
これは年の半分の数値です。売上げが昨年度を上回るのはほぼ間違いなさそうですが、このペースで行けば、ざっくりEPSは昨年度の倍になります。
利益率もよく、昨年度11%だったROEは20%を越える可能性があります。
ためしに割安性を示すPERを計算してみます。僕は割安株好きなので割とPERを重視しています。
まず業績が上期と同じ水準であれば通年のEPSは180円程度となります。
仮に株価が今のままであれば、PERは10倍以下(PER=株価÷EPS)です。日本の平均のPERは15倍程度と言われ、特に成長産業のPERは高めです。
また、同社のIR資料等によると、特に300mmシリコンウエハの需給は引き続き逼迫しているとのことです。
これは作れば作るだけ売れるということであり、価格交渉でも優位に立てるため、利益率も引き続き良いということが想像されます。
またこれは、企業の財務に負担となる棚残がほぼ発生しないことにも繋がります。
結論として、SUMCOは成長著しい半導体産業の本命銘柄ともいえるのに、今の株価(1,600円くらい)はいくらなんでも売られ過ぎ、何故こんなに売られているのか分からないというのが僕の分析結果です。
あくまで前期と同じ業績のペースであればだろうと言われそうですが、昨年度はむしろ後半に伸びています。
また、表からは割愛していますが同社は配当性向も日本企業にしては高く、売り上げが落ち込んだ2016年は40%を超えていました。
業績が苦しい時に配当で還元するという姿勢は米国株にも通じ、好感が持てる企業だと思います。
なぜSUMCOの株価は急落したのか
今まで見てきたとおり、SUMCOは半導体関連銘柄の中でも超有望株に見えます。
株価の急落に何故を求めるのはナンセンスで、売られたから下がったとしか言いようがないですが、その理由を自分で考えることは無駄ではないと思います。
貿易戦争への懸念
米中の貿易戦争は泥沼化するばかりで、相変わらずトランプは揺さぶりをかけています。
半導体関連銘柄は最も景気敏感銘柄でもあるため、世界景気停滞となれば、最も売られる銘柄の1つが半導体関連銘柄です。特に日経225銘柄でもある同社の株価は先物売りの影響も受けます。
半導体市場縮小の懸念
直接の原因はこれだと思っています。
9月に入り、米国で半導体需要が減退するとの見方が出て、マイクロンやKLAといった米国株の半導体関連銘柄の株価が軒並み下がりました。
これに呼応するかのようにSUMCOをはじめ半導体関連銘柄の株価は急落しました。
半導体ブームは2016年の後半からはじまっており、ピークは過ぎたという見方も多いですが、僕は成長は鈍化するにしても拡大はすると見ています。ここは自分を信じるしかありません。僕は押し目が入ったとみます。
北海道地震による千歳工場の稼働停止
9月6日の北海道地震は記憶に新しく、この記事を書いている9/24現在同社の千歳工場はまだ稼働していません。
SUMCOの製造拠点は他に佐賀県の伊万里市、山形県の米沢市にありますが、売り上げや利益への影響はかなりあるでしょう。
ただ、同社のIR資料等では製造の工場毎の比率等はないものの、googleアースで各工場を見た感じだと主力は佐賀の伊万里工場のようですので、致命的な損失とはならないのではないかと見ています。
テーマ株としてのブームが去った
日本の株式市場はギャンブル場です。
過去5年のSUMCOの株価チャートをマネックより引用します。
業績に連動しているというより、半導体ブームに連動しているといった見方が相応しいように思います。
半導体ブームは数年周期で起きているそうです。
そうみると今は半導体産業関連銘柄はテーマ株として市場の興味が去りはじめているのかもしれません。
株価の行方を予想するにあたり注意しておきたいこと
上のとおり日本の株式相場は読めませんが、僕は愚直に考えたいと思います。
設備投資
SUMCOは過去大きな設備投資はしていませんでしたが、昨年佐賀県の伊万里の工場に主力の300mmシリコンウエハ増産のための設備投資をしています。
稼働は来年ということですが、これにより世界シェア1位を取れるか、はたまた設備投資に利益が追いついてこないか、注目しておく必要があります。
また設備投資により他社(特に中国企業)を刺激する側面もあり、価格競争は激化していきますので、単価の下落があれば同社の収益に大きな影響を与えると思います。
半導体市場の動向とシリコンウエハの単価
半導体市場は上のWSTSのデータが示すとおり今後も拡大する見込みです。
ただ、いつまで売り手市場が続くかは分かりません。
9月の株価急落のきっかけにもなったとおり市場が減退する可能性もありますし、中国企業などが安価な製品を開発するかもしれません。
同社の高利益体質は売り手市場で採算性の良い案件を選べる立場にあるからこそだというのは忘れてはいけないと思います。
サムスンの業績
SUMCOの海外売り上げの比率はアジアが大きく、これはサムスンの影響が大きいです。
サムスンがこければSUMCOもこける、可能性があることには注意したいです。
まとめ
今回SUMCOの株価急落を受けて改めて分析してみた結果、僕は売られ過ぎだと思うためナンピン買いすることにしました。
日経平均も年初来高値の24,000円に近づいており多くの企業の株価が戻る中取り残されているようにみえますが、縮小するのが明らかな多くの他業種よりSUMCOの方がよほど有望だと思っています。
半導体関連銘柄というとメモリの東芝や、ルネサステクノロジといった企業にスポットが当たりがちで、SUMCOは四季報の業界地図2019年度版には半導体関連銘柄として上がってませんでした。
それでも僕は半導体産業の本命銘柄としてSUMCOに期待し、あと1年は保有したいと思います。
ただし、上で触れたような懸念が表面化するようであればこの限りではありません。
なお、くれぐれも投資は自己判断でお願いします。
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