太陽光発電投資の一番のリスクは出力制御かもしれない|九州電力が出力停止に踏み切る可能性

太陽光発電投資家にとって気になるニュースがYahooのトップページに掲載されていました。九州電力が太陽光発電事業者に一時的な出力停止を求める「出力制御」に踏み切る可能性があるということです。出力制御とは即ち売電収入が止まることを意味し、太陽光発電事業者にとっては影響が大きい問題となります。

太陽光発電は2012年当時に制定されたFIT法を背景に日本国内で急速に拡大しました。

FIT法とは簡単に言うと、20年間固定で売電単価を保証しますというものです。

これにより安定した利回りが期待できると太陽光発電投資がブームとなりました。

太陽光発電投資家がこぞって購入したのが、下図のような野立ての低圧(50kW未満)太陽光発電所です。高圧になると電力事業者の扱いが変わり、個人投資家が投資目的で保有するにはハードルが高くなります。

低圧の野立て太陽光発電投資は、ざっくりですが、2千万の設備を購入して、毎年2百万の売電収入を得るというビジネスモデルです。

2千万の設備をキャッシュで購入できる人は限られますので、ほとんどが信販会社や銀行なりに借り入れをしており、毎月10万〜20万のローンを返済しています。

この原資はいうまでもなく売電収入ですので、出力制御=売電停止は太陽光投資家にとって非常に影響が大きく、死活問題と言っても過言ではないでしょう。

太陽光発電の出力制御の対象は

出力制御には優先順位があり、出力の大きな発電施設ほど優先的に出力制御されるとされています。

下図は資源エネルギー庁の資料からの引用です。2012年以降太陽光発電による発電量が急速に増えていますが、全導入量に対し家庭用の割合は少なく(青線)、多くは太陽光発電投資家が購入した低圧発電所によるものです。

ですので、上の図のような投資目的の野立ての太陽光発電所は、残念ながらもれなくこの出力制御の対象となります。

出典元:資源エネルギー庁

逆に、家庭用の太陽光発電設備が出力制御の対象になることはまずないでしょう。

関東電力、中部電力、関西電力は出力制御対象外

なお、今回九州電力の管轄内の太陽光発電設備への出力制御の可能性が大きく取りざたされましたが、関東電力、中部電力、関西電力は多くの太陽光投資家が保有する50kW未満の設備への出力制御を実施しないとされていますので、これらの管轄で太陽光発電所を保有されている方はひとまず安心してください。

九州電力管轄内の太陽光発電所に対する出力制御の可能性

ニュースでは太陽光発電への出力制御の可能性を示唆しただけでしたが、実際のところ本当に出力制御されるのかが気になるところです。今まで離島で数回出力制御がかけられることがありましたが、本島では過去ありませんでした。

僕は、仮に今年は出力制御を避けられたとしても、来年や近い将来は必ず出力制御が発生すると思います。そう思う根拠を以下に示します。

九州電力における太陽光発電の普及状況

九州地方はその晴天率、日照量の良さを理由に日本で最も太陽光発電が普及した地域です。

九州電力のHPによると、下図のとおり太陽光発電の接続可能量817万kWに対してすでに785万kWが接続済みという状況です。

出典元:九州電力

太陽光発電は天候に左右されるため出力が不安定であるという側面もあり、電力需給バランスからこれ以上は増やせないというラインが817万kWなのでしょう。需要を大幅に超える電力供給は大規模な停電等のトラブルにつながる、とされています。

今年のGWには日中の電力需要全体の8割以上を太陽光発電でまかなった日があったとのことで、これ以上供給過多の状況になると出力制限せざるを得ないという説明です。特に電力需要が減る春と秋に出力制御の可能性が高くなります。

だったらどっかでバッテリーに貯めて夜間使えば?とへそ曲がりな僕は思うのですんなりは信じられませんが、納得するデータと技術的な説明に出会えていないだけで、嘘ではないとは思います。

まだまだ増え続ける太陽光発電所

僕が太陽光発電の出力制御が避けられないと思った決定的なデータが下図です。九州地方の太陽光発電の接続状況を示すデータです。

出典元:九州電力

このデータによると、太陽光発電所の接続数は今後、今の倍に増えるということです。

現在でさえ揚水発電所の水の組み上げに余剰電力の使うなど、使い道に苦慮している状況であり、この秋から出力制限の可能性があるといっているのに、さらに倍ですよ。

どう考えても出力制御は近い将来発生するでしょう。

原発の影響

九州電力は原子力発電の再稼動に力を入れています。

玄海原発4号機が6年半ぶりに再稼動し、現在4基体制となっています。九州電力としては自身の利益に直結する原発を優先したいと考えるのも、企業の考え方としては理解できます。ここはこれ以上触れません。

出力制御の回避方法

残念ながら出力制御を回避する策はありません

ただ、最近は出力制御に対する保険を販売する会社もありますので、九州電力管轄に野立ての太陽光発電所を保有されている方はこのような方法も検討されてはいかがでしょう。

東京電力、中部電力、関西電力管轄の出力制限なしの案件を選ぶのがベストではありますが、FIT単価が22円以上の案件はどこの会社もほぼ枯渇している状況です。

今から太陽光投資をはじめることを検討されている方は出力制御という観点もリスクとして十分考慮した方がよいかと思います。


まとめ

今日は九州電力の太陽光発電に対する出力制御の可能性を示唆する報道をきっかけに調べてみたことをお伝えしました。

太陽光発電のリスクといえば、災害やいたずらによる設備の損壊やモジュールの出力低下などが一般的にあげられますが、出力制御もかなりのリスクだと感じました。

そんな中、僕も東京電力管轄ですが太陽光発電投資をはじめました。
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おまけ

僕自身が投資しているので多少オフセットされた意見になるとは思いますが、この件に関してはいろいろ思うところがあります。

太陽光発電は電力単価が高く、国民の税金負担も多いという説明をよく目にします。

太陽光投資は再エネ普及という国策への貢献も兼ねているはずなのですが、風当たりが厳しい、というかそのように世論を誘導しようとしているとさえ感じます。

原発に税金がいくら投入されているかは隠したまま太陽光負担だけに煽るのはフェアじゃないように思います。