ゼネコン界に激震を与えた大成建設ショック!第一四半期決算の確認と建設業界の今後を予測

2018/8/6、大成建設の2018年第一四半期決算発表直後に同社の株価は急落、一時前日比14%安となり、終値でも5300円と前日の6030円から大幅に下落しました。タイミング的に決算内容の失望売り以外に考えられません。今日は同社の四半期決算の内容を分析するとともに、建設業界の今後について僕なりに考えてみます。

大成建設の株価が1日、というか1時間にも満たない時間で10%以上下落しました。

過去同社の株価暴落といえば、リニア不正疑惑が明るみとなった昨年12月が記憶に新しいですが、昨日はそれ以上の下落幅です。

大手のゼネコン株のほとんどがこの大成建設ショックで連れ安となりました。

コンプライアンス疑惑以上のインパクトが決算にあったということでしょうか。まずは何はともあれ同社の決算情報をみていきたいと思います。

2018年第一四半期決算の内容

今回は第一四半期決算の発表ですので、前期の同時期の四半期決算との比較となります。

同社は、通期業績予測に対する変更はなしとしており、業績の下振れ修正をしたわけではないため、市場からその業績の達成に疑問符がついた、という見方をするのが妥当な解釈です。

なお、当記事で使用している数値は同社の決算報告資料とマネックスの銘柄分析から僕が特に重要と考えた部分を抜粋して作成しています。

貸借対照表

決算資料の最初に示されるのが財務状態を表す貸借対照表です。

これについては省略します。同社は実質無借金経営かつ、純資産が固定資産以上ある超優良経営であり、ここに株価へ影響を与えるような大きな変化はありませんでした。

売上高及び経常利益

売上高および経常利益等の前四半期決算の比較とともに整理したのが下の表となります(単位は百万円です)。

第一四半期 前年度 2018年度 概況
売上高 320,249 318,218 横ばい
売上原価 274,472 282,023 100億増
管理費等 19,196 20,913 10億増
営業利益 26,578 15,281 110億減
経常利益 28,498 17,451 110億減

売上高はほぼ横ばいに対し、経常利益は約100億の減となっています。
直接的な原因は売上原価と管理費の増加です。

通期業績見通し

決算資料によると同社の通期業績への見通しに対する変更は、無し、としています。
昨年度の通期業績と今年度の業績見通しの比較を下表に示します。

2017年実績 2018年予想
売上高(百万) 1,585,497 1,590,000
経常利益(百万) 185,349 133,000
純利益(百万) 126,788 91,000
1株当たり純利益 561.36 413.31
PER 9.56倍 13.03倍
ROE 20.50%
自己資本比率 34.60%

今年度の通期業績見通しは、昨年度の本決算と同時に発表されますが、同社は今年度の減益を見込んでいました

ここまでは事実で、ここからは僕の推測となります。

株価下落の直接的な原因を推測

上の決算内容を見ると、要因はやはり利益が昨年度より減っているのが嫌気された、と見るのが自然だと考えます。

ただし、減益となること自体は昨年度の本決算発表時点で公表しています。

今年度の売上高はほぼ確実に達成されるでしょう。

スマホゲームの一般ユーザーからの課金ビジネスなどと違い、特に大手ゼネコンが受注する工事は公共事業等の大規模工事が中心で、客先で予算確保済みであるものが大半だからです。

むしろ売上高は上振れすると僕はみています。

通期の経常利益に対する進捗率が低調なことも理由としてあげられます。

下図はマネックスからの引用ですが、1年の4分の1が終わったのに利益は予定の13.1%しか進捗していません。

大成建設の株価の今後は?売られ過ぎなのか?

今後の株価が分かれば苦労しませんが、僕なりに考えてみます。

まずは大成建設の過去10年の株価推移を示します。アベノミクス効果により2013年から実に10倍近く上がっています。

大成建設の過去10年の株価推移を見ても昨日の下げが異常だというのが分かるとともに、今までが上がりすぎなのではないかとも見えます。

また、過去半年の株価推移を示します。この半年間じわじわと含み益を積み上げていた投資家も、わずか一時間でマイナス転落です。

日本の個別株とはこういうものです。

話がそれましたが、割安性を示すPERは上で示した表のとおり2018年予想で13.03倍となっています。

これは日本株33業種それぞれの銘柄数とPERの中央値を調べてみたで過去自分で調査した割安性の調査によると、建設業の平均よりもまだ高い値となっています(建設業のPER中央値は10.3倍)。

つまり、この異常ともいえる株価下落してもなお、建設業の中でみると割安といえる水準ではないということです。

成長著しい銘柄であれば高いPERも許容されますが、売上横ばい、利益減の同社の株価が是正されたと見ることもできます(結果論ですが)。

建設業界の今後の見通しに対する所感

大成建設のみならず大手ゼネコンやその下請け業者には東京五輪による特需、品川駅の再開発などの大規模工事が計画されており、あと数年の間は建設業界は売り手市場が続くと見ていました。

言い換えると、利益率の高い工事を選べる立場にあるため、安定した受注と高い利益率を確保可能だと考えていましたが、今回はその今後の見通に疑問符が付く状況であるということが分かりました。

話が発散しますので引用は避けますが、大成建設の中期経営計画資料によると売上は拡大するも収益率を示すROEは今後下がる見通しを示しています。いかに売上に対する原価比率を抑えるかが建設業界に共通する今後の課題です。

今後の株価を予測する材料をポジティブとネガティブそれぞれ1つずつ示します。

ポジティブ材料|建設業はスロースターター

同社に限らず、建設業の利益率は年の後半にかけて利益があがってきます。第一四半期が最も悪いのは通例です。

たしかに今年度は利益が低めですが、通期業績の見通しも減額予想なので、過去の推移を見ると異常値というほどではありません。例年に習えば今後利益は上がってくる可能性があります。

ネガティブ材料|原価費、管理費の増加は通年の課題

ネガティブ材料としては、今回経常利益を圧迫した原因が原価費、管理費の増加だということで、一過性の理由ではないことです。

材料費は高騰し続けています。また、技能者・作業者不足に加え、働き方改革の影響もあり、作業の生産性は落ちざるを得ない状況です。おそらくですが、下請け業者への追加作業発注等が多々発生したと想像します。

これらは特に今年は影響が大きく、通年としても利益を圧迫していくことになります。

まとめ

大成建設ほどの大企業が1時間そこらで10%以上株価が下がるのはそうそうあることではありません。異常といってもよいでしょう。

相場になんらかの変化が出る予兆、不穏な空気が流れ始めたような気がしてなりません。

さすがに今回の大成建設は売られ過ぎだと思っているため、ある程度反発してもおかしくないと思いますが、材料費と人件費の問題は建設業界全体の問題であり、今まで好調だった建設銘柄の株価がピークアウトする可能性がないとは言い切れないと考えています。

同社ではありませんが、建設業株をコアの1つとして保有する僕としては是非とも外れて欲しい予想です。

日経平均自体はそれほど動いていない状況なので、内需系から外需系への資金の循環の一環であればいずれ戻ってくると思いたいのですが。。

今日は大成建設の株価下落の要因を僕なりに分析してみました。

押し目買いに走りたい衝動にかられましたが、今は割安になったと飛びつくには不透明感の方が強いからしばらく様子見が無難、というのが僕の結論です。

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・僕の長期保有銘柄である九電工も大幅下落しました。

・大成建設はリニア不正疑惑で手放しました。