2018年第一四半期決算を受け九電工が15%の大幅下落|原因をIR情報から分析してみた

 2018年7月31日は九電工の第一四半期決算の発表日でした。同社の決算発表直後株価は大幅に下落し、前日比15%安となりました。決算の失望売りであるのは間違いありません。同社の株は僕も長期保有していますので、決算内容について確認していきたいと思います。

 九電工は九州電力系の建設会社ですが、九州電力への依存度は20%以下です。東京五輪も控え、潤沢な手持ち工事があり、安定した成長が期待できるのではないかと、僕が投資を始めた2016年から同社の株を保有しています。

 そんな九電工の株価の1日の下落幅としては今日が最大と記憶しています。タイミング的には決算の失望売りしか考えられません。

 ちなみに半年前、2017年の第3四半期決算直後にも10%近い暴落をしています。その時の関連記事です。


 決算発表では貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)が公表されます。貸借対照表からは財務状況、損益計算書からは売上や利益の状況が見えてきます。それぞれ見ていきたいと思います。

理由の候補1|財務の悪化?

 まずは財務状況を表す貸借対照表から見ていきたいと思います。同社のIR情報をざくっとまとめたのが以下の表となります。

B/S(百万円) 2017第1四半期 2018第1四半期
資産 324,919 303,054
負債 160,780 139,587
純資産 164,139 163,470

 これから何がわかるかというと、相変わらず財務は超健全、ということです。なんの問題も見当たりません。

 資産合計自体は減っていますが、見るべきは純資産です。純資産はほぼ横ばいなので、むしろ自己資本比率は上がっています。省略してますが流動資産と流動負債で相殺されてますので、資産が減ってる!なんて焦る必要はありません。

 さらに純資産の総額で固定資産を全てまかなうことができる同社の経営状況は、一般に「超優良」に分類されます。負債の部が固定資産を大きく超えていると、倒産の危険があります。優良とされる自己資本比率の目安40%に対し同社は50%強です。

 なので、財務状態は要因ではありません。

理由の候補2|損益の悪化懸念?

 となると、これしか考えられません。上と同じく同社の決算発表資料をざくっとまとめました。なお、この表を見るにあたり事前に知っておくべき必要があるのが、同社の今年度の計画では売上げ、経常利益ともに約7%前年度から増加するという見通しを昨年度の本決算で発表しているということです。

損益計算書(百万円) 2017第1四半期 2018第1四半期
売上高 65,649 70,792
営業利益 4,527 2,937
経常利益 5,020 3,565

売上高の下振れ?

 上の表のとおり、今年度の第一四半期売上げは昨年度から約7%拡大し、約700億円を達成していますので、コミット通りといえます。これは理由ではないでしょう。

経常利益の昨年度割れ下振れ

 やはりこれが主因でしょう。昨年度5,020百万円に対し3,565百万円と減益しています。これに嫌気した失望売り、というのが一番納得の行く理由です。

 売上げは増加しているのに経常利益は約15億円減っています。引用は省略しますが、原因は売上原価と一般管理費の増加、です。

 おそらく材料費の高騰と人手不足による人件費高騰が効いているのだと思われます。

 九電工クラスの企業になると、作業のほとんどは外注となりますので、売上原価の大半は外注の人件費だと想像します。今年は天候不順が多かったので工事の進捗に遅れがでたかもしれませんし、

 もしかしたら働き方改革の影響で、
「何とか今日中にコンプレッサーの接続まで頼むよ〜」
「いや、残業無理っす」
 みたいなことになっているのかもしれません。

 700億の売上に対して600億が原価というビジネスモデルだと、利益コントロールは原価コントロールが重要だということになります。

 600億分の15億のブレがここまで株価に影響するとなると、大手の建設業はじめ原価比率の高い製造業は、よりコスト管理能力が問われていきそうです。

 すみません。話が逸れましたが、経常利益の前年度より少ない、これが主要因です。

経常利益の進捗度

 上のとおり、経常利益が昨年度から下振れしているに加え、進捗率も問題視されている可能性があります。

 四半期決算というからには25%の進捗していると考えるのが普通かもしれません。

 それに対し、年の1/4が経過したのに8.1%しか進捗していないことになります。

 建設業は期末納期が多いので年の後半にかけて利益が上がってくるのが特徴ですが、それにしても低調だと受け取られたとしてもしょうがない数字です。

理由の候補3|来年以降の業績見通しへの懸念

 最後にもうひとつ気になるのが、受注の実績です。これは将来への種まきということですが、受注が減少しています。これは営業さんに頑張ってもらって取り返してもらうしかないですね。

今後の見通し

 株価の動きには様々な複合要因がありますし、僕らには見えない市場の意思もあるのでこれからどうなるかなんて分かりませんが、今回の下落は明確な理由を伴った下落です。

 ただし、建設業種は売り手市場であるのは間違いなく、同社が赤字転落なんてまずあり得ませんし、売上げも拡大傾向にあるため、コスト管理の徹底により充分巻き返しは可能だと思います。

まとめ

 今日は僕が結構期待している銘柄の1つの九電工の株価下落の理由について決算資料等をもとに分析しました。

 株価急落の理由は経常利益が昨年度を下回っていることによる嫌気売りが濃厚です。

 それでも15%の下落は売られ過ぎな気がしますし、東京オリンピックや品川駅の再開発など、大規模工事により引き続き成長が期待できると考えるため僕はまだ保有し続けます。