毎月分配型の投資信託が人気ですが、これらのリスクやデメリットを理解せず、分配金による安定した収入が得られると退職金などのまとまった金額を投資する人がいます。僕はこれらを決して資産運用に組み込むことはしませんが、今日はそのように考えるに至った理由について書きたいと思います。
今日は最近流行りのカバーコール戦略、オプションプレミアムというキーワードを売り文句とした毎月分配金型投資信託を対象にそれらを僕がおすすめしない理由を説明したいと思います。
結論から言うと僕が毎月分配金型投資信託をおすすめしない理由は以下の3点です。
・コンセプトに対して運用実績が伴っていない
・分配金捻出の捻出に資産の取り崩しを前提としているとしか思えない
・手数料が高い
目次
コンセプトに対して運用実績が伴っていない
複雑な毎月分配型の投資信託の仕組みを考えてみたでも書いたとおり、オプションプレミアムを含むカバーコール戦略はリスク回避を主軸に置いた投資戦略であり、その理屈には僕も一応納得しています。
ただ、実際にこのとおりに運用できているかというと甚だ疑問です。最近売れ筋としてよく目にする以下の2つの投資信託について見てみます。
日本株アルファ・カルテット
これは売れ筋ランキングの常連です。運用額はなんと2千億円強です。
この出資者のうちどれだけの人が内容を理解しているのでしょうか。
まぁそれは置いといて、投資は結果が全てです。以下の図は同ファンドの目論見書にある騰落率の比較です。
このファンドは日本株中心の運用なので、隣の日本株をベンチマークとするのが良いでしょう。
アルファカルテットに投資するということは、大前提として日本企業の株価が上昇することに賭けているということです。
その割にはリターンが日経平均をインデックスとする多くの投資信託に劣っています。
これに対する言い訳としては、インデックスファンドの多くはアベノミクスによる株高の恩恵を受けており、後発の同ファンドのパフォーマンスが現在のリターンで劣っている訳ではない、僕が売り手ならばこう言うでしょう。
もしかするとこのような説明を受けた方がいらっしゃるかもしれません。
ただ、注目すべきは赤丸を付けたマイナス側です。
カバーコール戦略はリスク回避をもっとうとしているはずなのに、他の資産アセット全てに劣後しています。
納得の行く言い訳があるなら聞いてみたいものです。
次に同ファンドの基準価格・純資産の推移です。
ざっくりですが基準額は2014年に1万であるのに対し、2017年末には4千円ちょっとになっています。
2018年の初頭に大きな株価下落があったので、今はもっと下がっているでしょう。
2016,2017年は分配金を抑えることにより基準額をなんとかキープしています。
分配金込みで考えると一応、トータル損はしていないように見えますが、例えば当時退職金1000万円投資された方が今換金すると400万になるというのが事実です。
こんなはずじゃなかった、、そう思っている方も多いと思います。残念ながらこれは決して、1千万に戻ることはありません。決してです。
比較として参考までに同じ日本株を投資対象としたひふみ投信の資産推移です。
同期間に1000万投資していれば、2017年末には2000万になっています。
ひふみ投信は分配金は設定していませんが、それを差し引いてもどちらのパフォーマンスがよいか、言うまでもありません。
ブラジル株式ツインαファンド
これも最近売れているようです。アルファカルテットが日本株に対しブラジル株式ツインαファンドはブラジル株です。
次から次へと懲りもせずという感じですが、このファンドに投資するということは、ブラジル経済の発展に賭けるということだけは理解しておいて下さい。同ファンドの騰落率です。
繰り返しになるのでもう書きませんが、マイナス側が半端ないです。
いったいどういう運用しているんだという感じです。
参考までにこのファンドが投資しているブラジル株ETFの価格推移をマネックスから引用します。
ブラジルはBRICSの頭文字の1つであり、勢いのある新興国とされていますが、この株価推移をみて、退職金とかの大金を預ける気になる人の神経が僕には理解できません。
売る側もせめて、この投資信託を買うということはブラジル経済に賭けるということだよと、リスクを客に説明するなどのモラルを持った対応をして欲しいです。
これら複雑な商品は往々にして売る側さえも商品内容を理解せず、高利回り、高い分配金という売り文句だけ覚えている場合があります(残念ながら友人の嫁にこのような人がいました)。
同ファンドの資産推移です。アルファカルテットと同じく基準価格は下がっています。
ブラジル経済が傾いたらどうなるかは想像に難くありません。
分配金捻出の捻出に資産の取り崩しを前提としているとしか思えない
これは上のファンドに限らず、ほとんどの毎月分配型に当てはまります。
分配金を安定した収入などと思うのは大間違いです。
日本株であれば年2%も「配当金」があれば御の字ですし、iシェアーズ・ブラジル・キャプトETFの「配当金」は1%未満です。
これらから10%もの分配金が賄えるはずはありません。
そもそも日本株の場合配当は年1回ですので、毎月分配金の原資が株式の配当金から出されてると考えること自体がおかしいです。
となると、分配金はどこから捻出されているのでしょう。株の売却益か資産の取り崩しと考えるのが自然です。
2017年は相場環境が非常に恵まれていたため、上がった株を適宜売却することで基準価格をあまり目減りさせずに済んだというのが実態です。
対象としている株式市場が崩れたら資産の減価は避けられません。
手数料が高い
毎月分配金を出す投資信託はだいたいですが、年2%程度の信託報酬がかかります。
利益が出ていようが出ていまいが、信託報酬は毎年かかります。
さらに購入時手数料に4%弱かかる場合もあります。
投資信託を販売する会社は信託報酬の低いインデックスファンドよりもこれらを売りたいというのが本音でしょうから、様々な売り文句を駆使します。
一方で、現在であれば日本株のインデックスであればノーロード(購入時手数料無料)、信託報酬0.2%程度のものもあります。
ブラジル株式ETFであれば0.7%弱です。
僕ならば、上で示したように結果が伴っていない投資信託を買うくらいならこれらを選びます。
まとめ
今までは単に胡散臭いという理由だけで毎月分配型投資信託に見向きもしませんでしたが、改めて調べてみて、やはり買う理由が見当たらないという結論に至りました。
毎月分配型の投資信託は安定した利回りが得られると人気がありますが、その運用の中身、リスクを理解できないのであれば購入されるのは思いとどまられることをおすすめします。
僕は投資信託は、コンセプトがシンプルで、自分が何に投資しているかが明確に理解できるものを選ぶべきだと思います。
おいしい話には必ず裏があります。