リニア不正事件を受けて投資方針の見直し

 2017年12月18日にリニア新幹線の工事の建設に対する大手ゼネコンの受注調整があったとのニュースが報じられました。このニュースを目にした瞬間に僕は保有していた大成建設と鹿島の株を売却しました。今日はこの事件とそれを受けてこれからの投資方針について考えたことを書きたいと思います。

リニア不正受注事件のあらましと現在の状況

 リニア新幹線は岐阜県、山梨県、長野県といった、山間部にトンネルを掘って東京まで繋げるという超大規模かつ難易度の高い工事を伴いますので、素人の感覚でも普通の建設会社で請負えるものではないと分ります。工事費用の総額は約10兆円規模と言われ、工事区間等で契約が分かれており、そのほとんどを請け負うのが所謂スーパーゼネコンと呼ばれる建設会社である「大林組」「清水建設」「鹿島」「大成建設」の4社です。実際の契約状況について毎日新聞さんの記事をお借りします。

 上のそれぞれの契約に対し、競争入札によって業者選定がされるのですが、実際はこの4社が事前にどこの会社がどの契約を受注するのかを事前に調整していた疑いがあるというのが今回の不正事件のきっかけです。ようは談合疑惑です。

 日本には独占禁止法があり、談合やカルテルによる不当な取引制限を禁止しています。これに違反すると、刑事罰や行政処分の対象となり、莫大な課徴金を科せられるケースもあります。最近では2016年に自動車等に使うコンデンサ価格についてカルテルがあったとして、ニチコンや日本ケミカルなどに総額67億もの追徴金の納付命令が出ました。

 この記事を書いている12月23日現在、この事件がどのように収束していくのか全く見えていませんが、僕が今一番気にしているのは、「大林組」がリーニエンシー制度適用を背景に公正取引委員会に独禁法違反を自主申告した、という情報です。

リーニエンシー制度(課徴金減免制度)とは

 リーニエンシー制度とは米国が先駆けて導入したシステムで、談合やカルテルがあった場合、それを他社より先に申告すれば、最初の1社は100%追徴金を逃れられるというもので、簡単にいうと密告制度です。
「大林組」がこれを使うため自主申告しということは、談合は疑惑ではなく事実だと認めたこととなり、また他の3社は追随して申告したとしても、50%の課徴金納付を避けられません。これだけ大規模な工事で価格調整があったとしたら相当な金額の追徴課税が出たとしても不思議ではありません。

株価への影響

 大成建設の今週の株価は下図のとおり、1週間で約10%下げています。僕は12/18に売りましたが、やはり翌日以降も下がっています。

 ここ2年の大成建設と鹿島の株価推移も載せておきます。きれいな右肩上がりで、これからも東京五輪や都市開発など需要が目白押しなので更なる成長が期待できると考え、両者とも長期保有したいと思っていました。
 でもそれ以上に、コンプライアンスに関わる不祥事は怖いです。リニア計画の見直しなどに発展すれば企業業績に直撃します。

・大成建設

・鹿島

僕の投資方針

 上の株価推移を見ると、いかにも押し目買いのチャンスの形に見えますが、上に書いた通りコンプライアンスに関わる出来事に起因しているため、うかつに手をだすのは危険です。その上で僕の投資方針です。僕は1.をとります。

1.しばらく様子を見る
 とにかくこの不正事件の決着を見守りたいと思います。再投資するのはそれからでも遅くありません。非常に大規模な事業なので、国家レベルの黒い力が動いているでしょうし、発注側のJR東海も事業を止める訳にいかない事情もあり、落とし所を見つけるまでにそれほど時間はかからないのではないかと思っています。ただ民意(メディアがどう煽るか)と警察側の動きには注意したいです。ゼネコンの談合は根が深いですから。

2.連れ下げられた建設系株を買う
 今週はリニア不正事件を受けて建設系の株が総じて売られました。リニアに関係あろうとなかろうと、業種レベルで影響を受けるのが日本の株式市場の特徴です。
目先の工事が目白押しで売上げ予測が下振れる懸念の少ない建設業界は非常に魅力的な投資先だと思っています。このタイミングで買うなら連れ安となったことで割安性が増した銘柄を探すのがよいかと思います。

3.スーパーゼネコンを買うならば大林組
 逆張りの衝動をどうしても抑えきれないならば、大林組と思います。
理由は上に書いた通り、リーニエンシー制度で追徴金が100%免除されるからです。ただ、他3社を裏切る形になっており、これだけの大規模な問題で一人だけ難を逃れることを周りのいろんな力が許さないだろうと思います。
恐らくですが、大林組も自主申告は本意ではなかったのではないかと思いますので、どうにか痛み分けみたいな形を模索しているんじゃないかなと思ったりしています。

まとめ

 今日はリニア不正事件を受けて僕の投資方針の見直しについて書きました。
東京五輪の恩恵を直接的に受けるスーパーゼネコン株は保有したいので、上に書いたとおり事件の決着をみた段階で再購入を考えたいと思います。
 リニア開発事業は止める訳にはいかないと思いますし、一時的に止めたところで結局スーパーゼネコン以外に請け負える企業はいないですので、落ち着けば押し目と呼んでよいタイミングは来ると思います。