働き方改革から投資のヒントを考えてみた

 今日は僕がこれから投資先として期待できる業種、銘柄を考えるということを目的に、国が政策として掲げている働き方改革について改めて考えてみたいと思います。国がやると言っている以上、国策銘柄とでも呼ぶのでしょうか、そこに恩恵を受ける企業は必ずあるからです。

 思考過程として、まずはじめに国が考える働き方改革を調べ、その後自分の置かれている会社の環境等の実感を整理したいと思います。マクロな視点とミクロな視点の両面から見た上で、自分で納得のいく投資先を探すためです。

 今日はこのマクロ視点側として、国の考える働き方改革について考察したいと思います。

 働き方改革と言うと、長時間労働の抑制、ワークライフバランスの向上、非正規社員の低減など、目指すところはなんとなくイメージがつきます。ただ、国の施作としてどこまで検討されているか僕は知りませんでした。

働き方改革実行計画

 ご存知の方も多いと思いますが、働き方改革実行計画と呼ばれる文書があります。今年の3月に働き方改革実現会議という政策会議の最終アウトプットとして会議決定されたものです。同会議は2016年の9月から2017年の3月にかけて10回に渡って実施されたものです。細部については下記の首相官邸のHPにのっています。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/

 これから働き方改革についてどのような具体的施作が動くのかを考えるためのインプットとして、この働き方改革実行計画という資料がベストだと思いました。79頁もあるため、読むのに少し気合いがいりましたが、同資料を僕なりにポイントを絞って要約します。下の1〜13のタイトルは資料そのままのタイトルですが、内容は引用するととても書ききれないため、僕の解釈を多分に含みますのでご注意ください。

1.働く人の視点に立った働き方改革の意義

 この章は経済社会の現状から働き方改革の進め方の基本方針のようなものが記載されています。僕には、少子高齢化が進み労働力が少なくなるのは確実なんだから、皆さん死ぬまで働きましょう。そのためには皆さんが気持ち良く、働くということを続けられる環境が必要ですよね。それこそが一億総活躍の国創りであり、日本経済の底上げに繋がるんです。
ということが書いてあったと理解しました。

投資へのヒントという視点に絞って、気になった記述の抜粋です。
・有効求人倍率が史上初めて47全ての都道府県で1倍を超えた
・少子高齢化、生産年齢人口減少すなわち人口問題という構造的な問題
・生産性向上の低迷、革新的技術への投資不足
・「正規」、「非正規」の賃金格差の解消
・罰則付き時間外労働の上限規制

 この中で特に気になったのは、生産性向上です。言い換えると国民1人あたりのGDPを増やすということを意味します。たとえば単純作業はロボットやAIによる自動化を進め、今まで数人があたっていた作業を、1人の人がロボットを管理して同じアウトプットを出すというようなことが考えられます。今更言うようなことでもないですが。。

2.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

 全雇用者の4割を占める非正規雇用労働者と正規雇用労働者の格差を無くしましょうということが書かれています。両者とも明確な基準を持って能力に対して適正な待遇が得られるような制度や法律を整備していきましょう、そして最終的には非正規雇用という形態を無くしましょうという趣旨のようです。
 これは非常に難しい問題だと思います。
 そもそも不景気が続くの中で、コスト低減し利益を確保しなければ企業が立ち行かない状況の中で、経済社会から求められて出来上がった雇用の形であるということもありますが、それ以上に能力を適正に評価する方法を決めるのが難しいと思います。
 特に日本社会においては、人柄であったり空気を読む力や仕事をうまく回すためその会社に適した進め方、ノウハウを知っているかということが、実務において資格など以上に重要だったりしますが、これらの能力は定量化しにくいものです。
 今後企業は給料とそれに対応する能力の明確化を求められるようになるのではないかと予想しますが、そもそも正規雇用者に求める能力と非正規雇用者に求める能力を分けて規定し、非正規雇用者への門戸を限定的にする、という方向に向かいかねない気がします。これだと今と何も変わりません。
 単純作業であればこの方法が当てはめやすいですが、そもそもそういう作業はロボットなりにさせて人がやらないようにしていきましょう、という方向性なはずなので、どのような形でこの方針を具体的施作に落とし込んでいくのかは注目したいと思います。僕には現状皆が納得するであろう答えは思いつきません。

3.賃金引上げと労働生産性向上

 年率3%程度を目処に賃上げを目指しましょう。そのために特に中小企業の取引条件の改善を図ることが重要であり、下請法とかでしっかり監視していきます。また、賃上げに積極的な会社には税制面で優遇していく制度の整備を進めます。
 ということが書かれています。
 今もですが、大企業は特にこの下請法を気にしなければなりません。今はまだ大きなニュースにはなった事例は少ないですが、今後は今以上に大ダメージを与える事例が出てくると思います。昔ながらのやり方が実は下請法に違反していた、なんてケースも増えそうです。

4.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正

 仕事と子育てや介護を無理なく両立させたり、女性や高齢者が働きやすい環境を整備するためにはワークライフバランスを改善させる必要があり、このためには長時間労働を是正しなければならず、罰則付き時間外労働の限度を具体的に定める法改正を進めていく。
 労働時間の上限規制は2019年から適用していくとのことで、企業は2年の猶予の間に具体的対策を求められます。 
 何のひねりもありませんが、人材派遣業界は有望に思います。

5.柔軟な働き方がしやすい環境整備

 子育てや介護と仕事の両立を目指し、雇用型テレワークの導入を推進するとあります。テレワークとは簡単に言えば在宅勤務です。特に大企業ではクラウド化導入が進み、家でも会社と同じPC環境が構築できるようになってきています。テレワークが日本に根付くかどうかは分かりませんが、クラウドサービスは今後も導入が進むと思います。ただこの業界は注目されているだけあって競争が厳しいです。

6.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備

 育児等で離職した女性の復職、再就職を支援するために、教育訓練給付の拡充などの人材投資強化し、安倍内閣の最重要課題の1つである「女性が輝く社会」を実現する。とあります。また配偶者控除も現行の103万円から150万円へ引き上げるそうです。
 

7.病気の治療と仕事の両立

 病気の治療をしながら働く人は労働人口の3人に1人といわれ、これらの方々が働きやすい環境を作るために、主治医と会社の連携を支援する両立支援コーディネーターによるトライアングル型のサポート体制を構築する。とあります。
 あまり聞きなれない両立支援コーディネーターですが、20年度までに2000人育成を目指すとのこと、これらの方々に関連する業界(育成とか紹介とか)が注目されるかもしれません。

8.子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労

 待機児童解消に向け、2015年度末の31.4万人から2017年度末には53万人へと枠を拡大するための整備を進め、2018年度以降も新たなプランを策定する。また保育士の処遇改善に取り組む。育休給付も最大2年に延長し、介護職員の処遇改善に努める。などとあります。

9.雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援

 単線型の日本のキャリアパスを変え、転職や再就職が不利にならないような労働市場や企業慣行を確立し、年功ではなく能力で評価するシステム構築を目指していく。とあります。

10.誰にでもチャンスのある教育環境の整備

 子供達が家庭の経済状況に関わらず、子供達の進学を後押しするように高等教育の経済負担軽減政策を進める。返還不要・給付型の奨学金制度を新たに創設する。幼児教育についても無償化の範囲を広げる。というようなことでした。

11.高齢者の就業促進

 「エイジレス社会」の実現に向けて65歳以降の継続雇用延長や定年延長する企業を支援し、継続雇用年齢等を引き上げていくための環境整備を行う。とあります。
 エイジレス社会ですか、、こうやって年金を出す時期を遅めて行くのでしょう。たしかに破綻している年金システムに対する対処はこれしか方法は無い気がします。
 

12.外国人材の受入れ

 優秀な外国人材を確保するため、永住許可申請に要する在留期間を世界最速級の1年とする日本版グリーンカードを創設する。他方、専門的・技術的分野でない外国人材の受け入れについては、国民的なコンセンサス形成のあり方など、調査検討を政府横断的に進める。とあります。
 僕には、外国人を受け入れる気はないように読めました。

13.10年先の未来を見据えたロードマップ

 それぞれの項目ごとに施作を具体的に期限を区切って定め、評価を見直しつつ進める。とあります。

働き方改革実行計画に対する所感

 僕は働き方改革自体は総論賛成派です。所感を2つだけ。

日本が目指すのは社会主義なの?

 同一労働同一賃金、格差解消に代表されるようなある意味社会主義的な思想と、能力によって評価がされる成果主義の、ある意味矛盾したものの両方を求めているところに、具体施作に落とす際の難しさを感じました。

1億総活躍とは皆仲良く死ぬまで働きましょうということ

 この資料のコンセプトは日本人皆仲良く死ぬまで働きましょう。ということだと思いました。少子高齢化による労働力減少は今更どうにもならないからです。米国はこの対策に外国人受け入れを進めています(トランプさんでいろいろ揉めてますが)。本資料にも外国人受け入れに言及がありましたが、別紙をみて、(少なくとも目先)積極的に考えてはいない項目だと感じました。
 外国人受け入れのロードマップを引用します。大事なのは中身ではなく、このスドンと引いた線です。僕が仕事でこういう資料の作り方をする時は、やる気がないか、具体策が見いだせない時です。

 対比として、罰則付き時間外労働規制のロードマップは以下のとおり綿密な線が引かれています。これは、本気でやるという意気込みが伝わってきます。

投資へのヒント

 働き方改革実行計画を読んで思った投資へのヒントです。
 2.からロボット、FA、AIに関する業界
 3.から中小企業の業績が下支えされる可能性
 4.から人材派遣、転職業界
 5.からクラウド関連
 6.から教育関連
 7.から両立支援コーディネーター関連
 8.から保育、福祉介護関連
 9.から転職関連、コンサル関連
 くらいでしょうか。何を今更、、って感じのものばっかりです。
 読んでくれて人も時間返せって感じですよね。僕は79頁読んだんで許して下さい。
 ただ、これらが国策に繋がっているということは頭に入れておいて損はないと思います。

まとめ

 今日は働き方改革実行計画から、これからの投資のヒントを探そうと思いましたが、それとは別の何かもやもやしたものを感じました。
 次回は自分の置かれているミクロな視点から働き方改革をみて、自分の投資方針にフィードバックしたいと思います。