投資初心者がうかつに手を出してはいけない銘柄|石川製作所

 ここ数ヶ月、北朝鮮のミサイル発射などきな臭いニュースが続く中で、ヤフーの経済市況ニュースに連日のように顔を出す銘柄があります。石川製作所です。

 パンダ銘柄という謎と遭遇した際に東天紅について記事を書きましたが、この会社は防衛関連銘柄ということで市場参加者の注目を集めているようです。今回も念のため前置きしますが、本記事に石川製作所そのものを貶めるような意図は全くありません。

 石川製作所は防衛関連銘柄の主力株と言われていますが、今日は防衛関連銘柄について考えてみたいと思います。

防衛関連銘柄とは

 防衛関連銘柄とは、所謂軍需産業に関係する会社のことを指します。簡単に言うと、お客さまが自衛隊もしく自衛隊をお得意様とする会社の下請けだったりする会社です。

 自衛隊は国防のため、戦闘機や潜水艦、ミサイルといった分かり易いものから、レーダや電波妨害装置など、普段僕らが目にすることはない様々な装備品を持っています。
これら自衛隊に納入する製品の設計、製造からアフターフォローに携わる会社が防衛関連銘柄です。

防衛関連銘柄と日経平均の関係

 防衛関連銘柄と日経平均には面白い関係があります。最近では北朝鮮問題が目立ちますが、世界情勢に戦争の連想させるような事案が発生すると日経平均は基本、下がります。
例えば今年は北がミサイルを発射した翌日は、安全資産とされる円が買われ円高となり、日本株は大きく売られ、日経平均が下がるケースが多々見られました。
 しかしこの時、石川製作所をはじめ、防衛関連銘柄とされる企業の株価は軒並み上昇しました。日経平均(=大半の日本企業の株価)が変動する要因はこれだけではありませんが、この関係性は知っておいて損はないと思います。

防衛予算と主要取引会社

日本の防衛予算は約5兆円です。ここ数年増加傾向ですが、大きくは横ばいです。

 この5兆円には自衛隊の方々の給料等も含まれるため、防衛装備品の開発や購入に充てられる金額はもっと少ないはずです。とはいえ市場は兆円規模ということです。

 一方で、防衛省のHPから主要防衛企業の防需依存度というデータを見つけました。少し古いですが、まぁ現在も大きく傾向は変わっていないでしょう。

 ここで2つ気付きがあります。1つは上位企業のほとんどが僕らが知っている有名企業達で、一見防衛とは無関係のような会社ということです。三菱重工はなんとなく戦車とかのイメージがありますが、NECとかは全く防衛産業のイメージがないと思います。
 2つめは右の欄の防需依存度です。ほとんどの会社が10%未満です。これが防衛関連銘柄というものに僕が感じた違和感の正体だと思いました。
 本来防衛関連の主力株と言えば上の表の会社がでてくるはずですが、防需依存度が少ないため、その企業全体へ与える影響が限定的だと市場がみているということです。上記の会社は北がミサイル撃った撃たないで大きく株価は動いていません。
 なので、市場は特に防衛産業への依存度の高い会社へと物色の矛先を向けているのだと思います。

 ちなみに同じHPに米国の企業のデータもありましたので参考までに載せておきます。

 ちょっと表がズレちゃってますが、米国ではかなり軍需産業専門としている会社も多いようです。JALやANAの民間航空機の機体ほぼ全てを製造しているボーイングが2位というのは意外に思われる方も多いかと思います。

 

石川製作所とは

防衛関連銘柄の主力株と言われる石川製作所についても少し調べました。会社四季報には以下のように紹介されていました。
・段ボール製函印刷機主体の機械メーカー。繊維機械で出発し防衛機器も。

 企業HPも確認しましたが、主要製品群の中に防衛製品と思われるものはありませんでした。もしかすると防衛関連製品は扱っていても企業HPとかには出さないかもしれません。もう少しネット情報を調べると、機雷を製造しているとの情報もでてきました。

 石川製作所の企業HPで確認できる決算情報等によると、売上高は約10億円ということで、機雷他の防衛製品が占める割合は分かりませんが、その売り上げ額は上の三菱重工はじめ主要防衛取引企業と比較するようなものではありません。

 それでもyahoo経済ニュースで防衛関連銘柄主力として取り上げられ、実際株価は以下のようになっています。

 この1年、いや半年で5倍くらいでしょうか。すごい上がりようです。売上げが倍増した訳でもありませんが、北朝鮮がミサイル撃つ度ごとに株価があがっていきました。防衛関連の売り上げがあがるという思惑に基づくものと思われます。

 ここでちょっと鬱陶しいことを添えると、防衛費は国家予算なので、年末までに予算案への入れ込みが必要であり、また予算を確保するためには財務説明など様々な手続きが必要ですので、1年以上前から仕込んでいるのが通常です。たとえ北がミサイル撃ったからといって、防衛関連銘柄が恩恵を受けるのは、補正予算という特別枠を除いて、どんなに早くても次年度以降です。しかも石川製作所の扱っているとされている機雷は海に撒くもので、ミサイル対処とは遠い存在です。

 ええ、お門違いな指摘であることはもう理解しています。ようは 市場が防衛関連株だと「認定」したかどうかです。上記のような議論とは別次元で進むことなんだとようやく分かってきました。そして石川製作所はその売り上げ規模も防衛依存度もあいまいですが、この認定を得体の知れない誰かから受けたのです。

防衛銘柄に思う日本の株式市場

 防衛関連銘柄について考えて、パンダ銘柄と同じく株とは連想ゲームで、本当に動くんだなとつくづく実感しました。

 北朝鮮が戦争の匂いをほのめかす度に株価が上がる、投資家の方々からすると北朝鮮様様でしょうか。今週末も当たらない程度に一発でかいのお願いしますよ金兄さんくらいの感覚だとしか思えません。

まとめ

 今日は防衛関連銘柄について僕の思ったことを書きました。これは投資ではなく投機にしか思えません。もっと言えばギャンブルです。これは石川製作所に限った話ではなく、その他の防衛関連銘柄とされた銘柄全般にいえることです。
 もちろん長期的な視点で投資されている方もいらっしゃると思いますが、僕のようなど素人がちょっと考えてみただけでも株価が5倍になる根拠が見当たりません。
 今後、北朝鮮との緊張が高まって更に株価が上がったり、決算が予想外だといって失望売りが出たりなどと、もっともらしい理由をつけてニュースに出たりするのかもしれませんが、本質はただ、ギャンブラー達が遊んでいるというだけのことだと思います。これらの銘柄に迂闊に手をだすと火傷する可能性が高いので投資初心者にはおすすめできません(僕もど素人ですが)。

 ただ、これらテーマ株というものはこれからの未来を予想する楽しさがあるのは事実と思います。防衛関連銘柄であれば、例えば僕なら、これからの防衛は宇宙、サイバー、電磁波、レーザー、こういった技術を持つベンチャー企業に、長い目で、投資するのもありかなぁと思ったりします。まぁ自分では調べれないので、中小型株は自分で個別銘柄探すのは諦めて、僕が国内株系の投資信託で唯一残しているひふみ投信さんにお任せしようと思います。