インバウンド関連株|ホテル業界で注目の銘柄は

 インバウンドとは外国人の方々が日本を旅行で訪れて消費してくれる(お金を使ってくれる)ことで、訪日外国人の数は毎年増えています。その恩恵を受ける銘柄として今日はホテル関連銘柄について深堀りしてみたいと思います。

 インバウンドと聞いて最初に思い浮かぶのは中国人の爆買いと呼ばれた現象です。ただ、中国人の爆買いは2015年頃をピークにしだいに翳りが見え始め、インバウンド株と呼ばれる銘柄への注目も次第に小さくなっていっているように思います。
 とはいえ、後述するように訪日外国人の数は毎年確実に増加しており、その恩恵を受ける銘柄は確実に存在します。その中でも僕はホテル業界に注目しています。

インバウンドの市場状況

 まずはインバウンドそのものの状況を確認したいと思います。ここでは観光庁と国土交通省のデータを参照します。

外国人旅行者数と消費の推移

 日本への外国人旅行者数は下記のとおり増加の一途です。下のデータは2016年度までのものですが、日本政府観光局(JNTO)の速報値によると2017年度も前年比20%弱の伸び(29百万人弱)となりそうです。政府はオリンピックのある2020年には4千万人の訪日外国人客の目標を掲げています。そういう意味ではインバウンド銘柄は国策銘柄と見ることもできます。

 次に外国人旅行者の消費の推移です。こちらも旅行者数とともに増加しており、4兆円規模の市場となっています。中国人の爆買いが減っているとはいえ、インバウンド市場自体は拡大していることが分かります。

訪日外国人の消費の内訳

 次に気になる外国人の消費行動ですが、下の図のとおり、大きくは「宿泊費」「飲食費」「交通費」「娯楽サービス費」「買物代」の5つに分類することができます。近年の外国人の訪日目的が「もの消費」から「こと消費」に変わってきているとの指摘があり、たしかに「買物代」は下落していますが、その他は伸びています。

 このような状況を整理した上でインバウンド銘柄を探すことを考えた時、僕は「宿泊費」に注目しました。「飲食費」や「娯楽サービス費」「買物代」はその恩恵を受ける銘柄が広すぎて絞り込めないのに対し、「宿泊費」は単純にホテル業界に絞り込めるためです。

ホテル業界の状況と訪日外国人の影響

 ホテル業界にインバウンドの恩恵がありそうだといってもその根拠が必要だと思い、宿泊者数の推移と外国人の利用率について調べてみました。

宿泊者数の推移

 以下の図のとおり、宿泊者数自体は概ね横ばいか微増という風に見えます。特に日本人旅行者の宿泊数は完全な横ばいで、これは人口減少の日本にあって今後も減ることはあっても増えることはないでしょう。一方で外国人宿泊客分だけ伸びていると見ることができます。比率は少なく見えますが、2016年では宿泊客の7人に1人は外国人という状況になっています。訪日外国人が増えている以上、ここは更に拡大していきます。

宿泊者数に対する外国人比率

 次に訪日外国人がどのような宿泊施設に滞在しているかということですが、下の図のとおり、圧倒的にシティホテルであると分ります。伸びという意味では他の施設も同じくらいです。シティホテルに関しては3人に1人は外国人宿泊客というのが、日本の現状です。

僕が注目するホテル関連銘柄

 前置きが長くなりましたが、以下が僕の注目しているホテル関連銘柄です。

ロイヤルホールディングス(8179)

 ロイヤルホールディングスは、3年連続顧客満足度第1位を獲得している「リッチモンドホテル」を運営している会社です。コスパが良く僕も出張の際よく使っていました。同社は飲食店の「ロイヤルホスト」天丼の「てんや」、英国風barの「Hub」の運営等も手がけています。
 ロイヤルホールディングの事業別利益を見ると、ホテルの利益が伸びているのがよくわかります。近年は外食を抜いていますが、実は売上高は外食の半分です。それだけホテル事業の利益率が良くなっているということです。

 

 売上高、利益率とも右肩上がりですが、PERが30倍を超えており、割安とは呼べない状態になっています。すごく買いたいけど、今の株価(2900円くらい)では積極的に買いには行きづらいかなというのが正直な印象です。

共立メンテナンス(9616)

 共立メンテナンスは「ドーミーイン」を運営しています。同社は他に寮の運営事業等もしていますが、ホテル事業が柱ですので、ホテル関連銘柄として有名です。こちらもロイヤルホールディングスと同じく売上、利益とも右肩上がりで、ホテル事業がそれを牽引しています。
 PERが25倍程度ですが、こちらも2017年後半から大きく株価を上げ2018年3月現在で5000円を超えており、こちらも今買うには少し躊躇してしまいます。

ユニゾホールディングス(3258)

 ホテルユニゾを運営しております。上記の2社に比べPERが10倍以下、PBRは1倍以下と指標でみるとかなり割安です。同社は75%が不動産関連事業、25%がホテル事業という割合で、ホテル事業の利益は着実に伸びています。
 売上、営業利益とも右肩上がり、さらに割安というところに惹かれますが、僕はどうしても不動産事業というのを敬遠してしまうため、1口だけためしに買おうかな、どうしようかな、という感じです。

候補から外した企業|東横イン/APA/スーパーホテル

 ホテル関連銘柄として本当に買いたいのは、「東横イン」「APAホテル」「スーパーホテル」あたりなんですが、残念ながらこれらは上場していません。
 また、リーガロイヤルホテルの「ロイヤルホテル(9713)」や「帝国ホテル(9708)」、「星野リゾート投資法人(32871)などのリゾート系ホテル銘柄は対象外と考えています。これら高級路線の差別化はニーズはあると想いますが、海外旅行が一般的になっている中、伸びているのはアジアからの訪日客であり、高級路線がインパウンドの主力とはなり得ないように思うのと、個人的にバブルの匂いがしてなんかイヤだからです。なんかイヤと思う銘柄に投資して損をしたら自分が許せません。

まとめ

 今日はインバウンド銘柄としてホテル業界について少し掘り下げてみました。間違いなく伸びている業種だと思います。また、日本は観光で盛り上げていかなければならないと個人的に思うことからも応援したい銘柄も多数あります。ただ、ちょっと買い時は見定めた方がよいかなと考えています。

おまけ

 僕は2年前から東京に転勤してきましたが、大阪勤務時代は1年で数十回は関東に宿泊出張をしていて、年々ホテルの予約が取りづらくなった印象があります。また都内のホテルは変動相場が基本ですので、繁忙期はビジネスホテルでさえ一泊素泊まり1万円が当たり前になってきており、旅費規程に入らず何度か自腹を切りました(特に木曜日は最悪!)。ホテル業界に注目したのは、業界が売り手市場になっているという実感があるからです。